第5話 もし『弟』になれって言われたらどうしますか?
今夜は野営して、三人は翌朝入るらしい。
ちょっと変なのは、三人とも相当実力がありそう。
でも、どういう訳か、初心者向けの遺跡なんかに入るんだ。
でもすぐにそれは分かった。
「〈ペヨーテ・テンタクル〉だって!? 前に一度戦ったことあるけど、あれは攻撃がとんでもない速さなんだ。もっとちゃんと準備しないと!」
夜も深まって、みんな火を囲んで夕食っていうときにそんな話をされた。
「それはわかってる。でもよぉ、ここから北の〈ジェードロッジ〉で病気の子供がいてよ。あの頭についている花が、どうしてもいるんだ」
「確かに、あの花は万能薬の原料にはなる話だけど……」
「でも助かったぜ。フィル、お前のような遺跡やら、モンスターにくわしい奴がいて」
「たまたまだよ。戦ったことがあるってだけ」
エリオットたちにさんざん、あっちこっちふりまわされたからね。
「ケンソンすんなって! お前のガンスミスの腕はたいしたもんだぜ! オレの銃剣、【ペイルライダー】もこのとおり!」
ガンスミスになった覚えはないんだけど。
でも今日は銃剣なんてめずらしいものをいじれてこっちも楽しかった。
うれしそうにかかげてくれるとこっちも気持ちがいい。
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【攻撃補正】――Lv15 初期値19(+2)→300(+281)
【命中補正】――Lv13 初期値18(+2)→245(+227)
【重量】――Lv12 初期値98oz→147oz(+49)
【会心補正】――Lv10 初期値0.4(+0.1)→1.4(+1.0)
【
【追加効果】――
合計Lv50もできたので、攻撃をフル調整ができた。
あとはバランスを調整して。
どうもレヴィンは、刃のすり減りからして、斬ったりするほうが得意みたいだったからね。
「ほんと、フィルの【
「え? そうかな? 前のチームじゃ、ほとんどどやらせてくれなかったけど、時間のムダ、大して増えないとかいわれて」
「その人たちがバカなんだよ。だって考えてみてよ。銃って毎日手入するものでしょ?」
「基本はそうだね」
「だったら1日10%アップだから、えっと1週間で……いくつになるんだろ?」
「だいたい1.9倍だね」
「す、すご! フィルってそんなムズかしい計算もできるんだね! こういう計算なっていうんだっけ? えっと……」
「累乗よ。 ウィン? この前ちゃぁんと教えたはずよね? またみっちり教えないとダメかしら?」
「そ、そう! それが言いたかったんだ! やだなぁ~リリー姉ぇ、ちゃんと覚えてるってば~」
ウィンって計算が苦手なんだね。
「それってやらなきゃ損。やらないのってただのバカってことじゃねぇか! すげぇじゃねぇか! フィル!」
「それほどでも……あるのかな」
あまり評価されてなかったころだから、いまいちどういう顔していいかわからない。
よろこんでいいんだよね?
「話をもどすけど、フィルくんの見立てだとやっぱりむずかしいかしら?」
「そっか、リリーさん精霊術が使えたんですよね」
「ええ」
「う~ん、あれは発動が時間がかかるけど、銃より強力……だとすれば、なんとかなるかもしれません……」
う~ん。ただ、いつの間にか同行することになっている。
まぁ別にいいんだけど。
「おうおう! なんだかよそよそしいじゃねぇか。そんなにかしこまんなよ、もっと気楽に話していいんだぜ!」
「レヴィン兄、急には無理だよ。だってフィルは……」
ウィンが勝手に僕の身の上話し始めた。
それは遺跡に来る前に話してしまったってのもあるし、まぁそれも別にいいんだけど。
ちなみにウィンウィルは二人からウィンって呼ばれている。
僕にもそう呼んでって言われたけど、本当にいいのかな?
「……ぐすっ……フィル。お前……苦労したんだなぁ……決められた『務め』で家を出て……クソみてぇな奴にこき使われて……」
「レヴィン、なにも泣かなくても……」
「レヴィン兄ぃ。キモ……」
「うるせぇ! お前らにこいつの根の強さと情熱が分かるのか!?」
「もう、やめてよぉ。暑苦しいなぁ」
まったくだ。泣くほどのことでも……ないと思う。
でもなんだかうれしいような、かなしいような。
自分のために泣いてくれる人がいるってこんな感覚なのかな。
今まで家族以外でそんな人いなかったし。
さんざんエリオットたちにこき使われて、いわば飼い殺し……。
「フィル! どうしたの! あんた泣いて」
「あれ……変だな。ごめん。なんでもないんだ。なんかうれしくて、こんなの初めてだったから」
やば、自分のせいで空気が重くなっちゃった。どうしよう。
「よし! わかった! フィル! お前、今日からオレの『弟』になれ!」
翌朝。僕らはアチェエトソ遺跡へ。
中は前にマッピングしていたから迷うことなく深部へと進めた。
え? 昨夜の『弟』になれって話?
あぁ……断ったよ。
いきなりそんなこと言われてもね。
まぁ理由はそれだけじゃないんだけど……。
『KSHAAAAAAAAAAAAAAA!』
「ウザっ!」
BANG!! BANG!! BANG――BBBSCHHAAAAA!!
「へぇ~ウィンってそういう戦い方するんだ。二丁を左右別々に、それにすごく速い。これじゃ出る幕なさそう」
「まぁな! ウィンの反応の速さにはだれもかなわねぇ! ただ……ああ~もったいねぇ。そいつら、〈バルーンポポー〉は売れんだぞ?」
うん、強い甘さとなめらかな食感が女の子に人気。
「こんなにぶちまけてよ~。つーか、すげぇトロピカルくせぇ」
「しょうがないじゃない! 向こうからくるんだから! うげぇ! 手ついたぁ~! やだぁもう! べちょべちょ~」
「もうしょうがない子ね。ほらふきなさい」
「ありがとう。リリー姉ぇ」
ウィンの手がカスタードクリームのような体液――じゃなく
うっ! やば! 鼻血でそう。
「ど、どうしたのフィル!? 急に鼻とへんなところおさえて」
「どうしたっフィル!! まさか!? どこかヤラれたのか!?」
「い、いや、へ、平気……」
「だいじょうぶかッ! かまわねぇ! アニキに見せてみろっ! さぁ! さぁ! さぁさぁ!」
「アニキじゃねぇし……つーかレヴィン、わかっててやってない?」
もしかしてこの先ずっとこんなんなの? 精神、もつかなぁ……はぁ……。
と、ともかく、今度はレヴィンたちを先頭にして進んだ。
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次回! 「触手系モンスターでよくある『トラブル』」
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