第22話 寒空の下、開拓進捗

 早朝。曇り空の中、俺は馬を走らせて東の川へと向かった。


「やあ、ニールさん。今日は架橋工事の見学ですか?」

「ああ、進捗を見つつ、何か手伝いができればと思ってな」


 流通が無く、貯えも無いので実質休業状態のパン屋だとか、冬期の為、働き口の無い農夫など、村の東で橋を架ける作業は、かなりの人員が割かれていた。


「冬の水場ですからね、できれば暖かいものがあればうれしいんですが」


 見ると、作業用の手袋は支給されているものの、作業者はみんな鼻を赤くして、白い息を吐いていた。


 とはいえ架橋作業は中ほどまで進んでいる。馬車が問題なく通れるような、しっかりとした橋を渡すため、かなり大規模な工事だが、これなら春先には完成しそうだ。


「そうだな……少し考えてみよう」


 俺はそのまま一通り作業の様子を見て、必要であれば、軽い切り傷やうち身の治療を魔法で行って、一旦村まで戻ることにした。


「……」


 帰り道のしっかりと整備された道を歩くと、少し前まで大規模な魔物集落があったとは信じがたかった。


 しかし、モニカの広範囲魔法の痕跡や、焼け落ちた巣の残骸を見ると、それが事実であるという事を物語っている。今日は雪でも降りそうな天気だ。降り出してしまえば、これらの痕跡すら見えなくなってしまう。


 それを感慨深く思いつつ、村に戻ると、エレンとメイが、何やら荷物を抱えているのと出くわした。


「エレン、メイ、これから東の作業場まで差し入れか?」


「あ、はい! 何か温まるものをと思って、シチューを炊き出ししようかと!」

「貴方の様子を見に来たのですが、現場に行ったと聞いて、メイさんと一緒に行くことにしましてね」


 各種の野菜と小麦粉が荷物の中に見える。背中に背負った袋には、木製の食器や寸胴なべがあるようだ。


「それはいい。丁度暖かいものを差し入れようと思っていたところだ」


 俺は頷いて、役割を取られたことに少しだけ悔しく感じた。


「そうだ、ニールさんも行きませんか? 材料は多めに持っていますので!」

「それはいい考えですね、荷物持ちも欲しかったところですし」


 確かに、二人だけでこの荷物を持ってあの道を歩くのは、つらいものがあるだろう。このままとんぼ返りするのは少々ばつが悪いが、差し入れの準備をする手間が省けたと思おう。うん。


「ああ、分かった。じゃあ俺も馬を降りて、こいつに荷物を運んでもらおう」


 そう言って俺は馬を降りると、メイとエレンから荷物を受け取って、馬の上に括り付けた。


「しかし、メイと随分仲良くなったんだな、エレン」


「ええ、近い年代の知り合いはそう多くありませんから、仲良くさせていただいていますの」

「エレンちゃんってすごいですね! アタシとそんなに違わないのに、すごくしっかりしてて、それに……」


 二人の楽しげな話を聞きながら、俺たちは馬を引いて歩き始めた。

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