第18話「情報収集、練習、思案」
「俺もちょっと頑張ろうかな」
わりと単純な礼音は、可憐なアメリカ少女が頑張っているを見て、自分もすこしは働こうという気になった。
年収200億に届いたと言っても、ほとんどがエヴァの祖父リチャードからの報酬だ。
何となくそれだけではよくないと彼は感じている。
それにエヴァと一緒に【アルカン】に行くなら、もうすこしレベルをあげたり知識を仕入れたりしておきたい。
もっともなるべく楽にという点を譲るつもりもないのだが、彼なりにちょっとは彼女にカッコつけたいと思うのだ。
彼は渋谷支部に寄って天ケ瀬がいないか聞く。
「彼女は今日休みですね」
と答えてくれた男性職員に頼んで【懸賞クエスト】を見せてもらう。
・【エリクサー】募集
・【ヒクイドリのかぎ爪】売ってください
・病気の治療に使うので【ソーマ】がほしい
・【マンドラゴラ】の花びらが欲しい
【ヌーカ】は取り下げられているが、以前見た他の依頼はそのままだったし、さらに新しい依頼がある。
「俺が持って来れそうなものはないな」
と礼音はつぶやく。
【ヌーカ】を持ち帰ったときと同じく、集められるものを集めて、それから【懸賞クエスト】をクリアできるか試したほうがよさそうだ。
彼はいつもの【ゲート】を通って都市リーメにやってきて、交易ギルドに顔を出す。
「都市リーメで採取できそうなアイテムについて聞きたいのですが」
と彼は男性受付に聞く。
「うーん、ある程度の法則性は確認されているけど、時期によってわりと変わるのですよね」
男性受付は困った顔で答える。
「えっ、そうなんですか?」
「ええ。ですから前回あなたが【ヌーカ】の材料を持ち帰ったことに、ギルド一同が驚きましたよ」
男性受付の返事に礼音こそ驚いた。
(現地人でもわかってないんじゃ、どうしようもないな)
とあきらめる。
もとより熱意を持っていたわけじゃないので、彼の切り替えは早かった。
「とりあえずリーメ付近の森林を散策してみます」
何かあればいいなと思って告げる。
「了解です」
礼音はいつもの場所で水と携帯食を買って森を目指す。
「レベル上げもしたいけど、どうするかなー」
とつぶやく。
彼が持つスキル「存在感なし」は敵に気づかれないためのもので、戦いに向いたものじゃない。
トレジャースネークを倒したときみたいな偶然も期待できないので、何か工夫が必要だろう。
「簡単? かわかんないが、やりやすいのは投石だけど」
当たるかどうかわからないが、接近戦をやるよりはマシだと礼音は思う。
とりあえずを拾って投げてみるものの、当たらない。
「……狙った場所に当てるのって難しいんだな」
と実感する。
石を命中させるためには、標的にある程度の大きさが必要になりそうだ。
「そしてデカいモンスターは、小石を当てたくらいじゃダメージにならないよな」
デカい生き物はたいていタフで、よほどのことがないかぎり小石一発で倒せないだろう。
モンスターを倒さずにしのぐか、モンスターを倒す方法か。
礼音としては思案のしどころだ。
「いや待てよ。俺のレベル50だったよな。……エヴァはレベルあげて、リハビリの過程を短縮したんだよな」
なら自分にも何らかのメリットが発生しているんじゃないか?
彼はそう考える。
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