第22話 クレイン視点
父上の葬儀から段々とエステルからの手紙が来なくなった。
ウィルクス公爵邸の執事ジャンからの手紙ではエステルは元気でやっているとは報告があるが、なら何故エステルから手紙がないんだ!
今度こそ、ルーファスを卒業させ、帰国したらウィルクス公爵邸でエステルと暮らそうと改装させているが、エステルからその返事もない。
ジャンには、今度こそ帰国すると手紙を書いたが、エステルの様子が見えない。
邸の執事チャーリーの報告でも、エステルは元気だと。
何故かブレンダも元気でやっていると、書いてあったが、まだいるのかと思った。
そして、他に男でも出来たのか!と不安でいっぱいになった。
手紙が全く来なくなり、落ちつかない俺にルーファスは、そろそろ国に帰るか、とやっと帰る気になってくれた。
「絶対だぞ!今度こそ真面目にしてくれ!エステルは可愛いんだから、男が寄って来る!」
それにしても、手紙が無さすぎだ!
心配になり、部下のレーヴィにエステルの様子を見る為に派遣したが、恐ろしい報告が来た。
エステルが馬車の事故に合い、その上、邸で嫌がらせを受けていると。
手紙も恐らく握り潰されている気がした。
エステルからの手紙もなく、以前からもエステルは邸の不満は何も言わなかった。
何も知らなかったとはいえ、エステルがこんな目にあっていたとは!
もう頭の中は帰国一択だった。
「ルーファス、留学は終わりだ!すぐに帰国するぞ!」
「まだ、隣国に挨拶してないぞ。クレインは側近だから、挨拶ぐらいは一緒に来ないと…ゴロつきが減ったと俺達に感謝しているし」
ルーファスが揉める前に荒くれ共を片付け、ルーファスは浮浪者の再建に力を貸し、隣国では感謝されていた。
帰国するとなると、城に挨拶は必要だ。
「すぐに挨拶しに行くぞ!」
「一人で帰ってもいいぞ」
「これ以上隣国への滞在は延ばせん!ルーファスが一緒にいれば、俺は仕事を休んだことにはならん!縛ってでも一緒に連れて帰る!」
そして、ルーファスを連れて隣国への挨拶を済まし、その間にルーファスと俺の卒業証書を部下に取りに行かせた。
「隊長、荷物はどうしますか?」
「荷物なんか後で送ればいい!エステルが最優先だ!」
「今ルーファス様の馬車を準備してますから…」
「馬車なんか要らん!早馬だけで充分だ!ルーファスは馬に縛り付けてでも連れて行くぞ!」
ルーファスが一緒にいれば、勝手に仕事を放棄したことにならんし、これ以上隣国にはいられない。
「クレイン、主君だぞ俺は」
「誰のせいで留学が延びたと思っている!」
「それは悪かったと思っている。ちゃんと協力するから、許せ」
そして、ルーファスと部下を連れて最短距離で山を駆け抜け帰国した。
エステルのいる邸についたのは朝だった。
狼煙を上げレーヴィを呼び出し、エステルと邸の様子を確認すると、エステルの嫌がらせは拍車がかかっており、あまつさえ、俺とエステルの寝室になる部屋でいかがわしいことをしていると。
「クレイン様の指示通り、まだ誰も解雇させてません。ですが、エステル様が気の毒で…」
俺が帰る前に、一人でも解雇されたら逃げられる可能性があるから、そのままにしてレーヴィにはエステルの見守りと、邸を調べてもらっていた。
「誰一人許さんぞ!全員引っ捕らえてやる!」
怒りに満ち、すぐさま部下の近衛騎士達と邸を包囲するように準備を始めた。
「クレイン、俺は街の騎士団を呼んで来るからな。近衛騎士だけじゃ、全員は護送出来ないだろう。俺が行けばすぐに動くだろうから。ウィルクス公爵のことになるし」
「頼む、急いでくれ!レーヴィは使用人が外出しないように足止めしていろ!」
ルーファスはすぐに、街の騎士団に行ってくれた。
だが、来るまで待てるわけがない!
「全員配置につけ!!」
使用人達を逃がさないように、邸の周りに部下達を配置させていると、大広間にエステルがやって来た。
どうやらダンスの練習の為に来たようだった。
可愛いエステルに声をかけようとすると、すぐにブレンダが来てエステルに暴力を振るった。
その瞬間、俺は噴火したように叫んだ。
「全員突入しろ!!」
そして、一斉に部下達は窓を突き破り突入した。
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