小説から得る人生



『人はみな平等に歳をとるが、しだいに人生がおもしろくなる人と、不平不満だけが募る人がいる。両者の違いはいったい何か』


 作家曽野綾子氏の文章です。


 なんだか、今の気分にどんぴしゃで、だから小説を読むのやめられないんです。

 こういう言葉に出会えてしまう。


 ほんと、そうですね、曽野綾子さん。


 多くの人に、人生がおもしろくなる人になってほしいと、私は思う。

 じゃないと、不平不満で爆発されると、もう周囲は大迷惑で……。


 あの、大騒ぎだったアオリ運転男もさることながら、普通の人でも普通なりに、2つのコースが用意されていると思います。


 誰もが平等に歳をとっていくけど、取り方は平等じゃない……。


 学生時代はあんなに可愛く、男性にもモテて、いわゆる勝ち組の結婚をした友人が、今では不平不満ばかり。


 学生時代から不平不満ばかり言っていた青年は、今、会うと、なんとも落ちぶれて嫌な男になって不満をぶつけてくる。


 そんな古い友人に出会うと悲しくなってしまう。

 ついでに、疲れてしまう。


 いつか、人は生きて来た年数と、これから先の年数が逆転することがあって、逆転した年月は、あっという間にすぎていく。


 それは、30代よりも、40代よりも、年齢に比例して時は早くすぎ、50代、60代、そして、70代、80代になれば、加速度的に早くなっていく。

 だからこそ、不平不満ばかりの愚痴を聞いていることが、面倒にもなります。


 映画『深夜食堂』という映画をご存知でしょうか。


 もともとはビッグコミックに連載された安倍夜郎氏の漫画で、のちにテレビドラマ化しました。

 映画劇場版は2015年。『続・深夜劇場』は2016年公開。


 どこか懐かしい雰囲気の新宿路地裏、小さな食堂を営むマスター。

 本名も経歴も素性もいっさいが不明。

 しかし、毎晩のように常連客が訪れて、小さな店内はいつも満員です。


 マスターの料理は、昭和の味がする懐かしいものです。


 その料理を食べに、行き場を失ったワケ有りの人たちが集まってきます。

 私がカクヨムで出会った多くの優しい人たちとの交流に似た、ほっこりとした優しさに満ちた空間。


 店の営業時間は午前0時から朝7時っていう、かなり興味深い時間帯で、

 普通の人は、寝ています。

 マスターは料理できるものなら、どんなものでもつくってくれます。


 マスターが作る土鍋のとろろご飯。むちゃくちゃ美味しそうです。


『深夜食堂』に多くの人が集まるのは、そして、このドラマにファンが多いのは、寡黙なマスターの心癒す料理と、それを作るマスターの優しさなんだろう。


 大人の男です。

 けっして、人の悪口は言わない。

 けっして、人を陥れたりはしない。

 ぜんぶ受け止めて、黙って、そこにいてくれます。


 マスターの振る舞いをみていると、彼の過去が透けてみえます。

 離婚したのかもしれない。あるいは、さらに悲しい過去があったのかもしれない。


 いろいろあっての、その上の人に対する優しさ。


 マスターは、大仰に自分の正しさを振り回すわけじゃない。

 ただ、近くによって来た人に、平等に優しい。


 こうしたマスターは尊い!

 そんな人に私はなりたい、なんて、深夜のこの時間には思っています。


 おやすみなさいませ♡

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