とりあえずの武器

 武器ギルドに来るとバルリングさんを探して工房を歩く。仕事があるならするけど、まずは武器をとりあえず探したい。朝一なので工房を見て回っているようだった。道具とかも見ている後ろ姿を発見。


「バルリングさん、おはよう」

「おはよう、ランス。炭ならあるぞ」

「それはあとでやるから、刀は買ったよ、ありがとう。今、自分のとりあえずの武器を探しているんだ。魔力に耐えられる武器を。例えるなら、ドラゴンの魔力で強化しても消えない武器がいい」

「どういうことだ?」


 太い腕を組んで、話を聞いてくれるようだ。


「普通の武器は魔力を通さないようにして、使っていたんだけど。魔力を通すと手の中から消えちゃうんだよ」

「なんだって?武器が消えるって、手を離したとかじゃなくてか?」

「うん、そう」

「聞いただけじゃわからん。ヒャエラも呼んでくるから、待ってろ」


 失敗した武器がいっぱいある工房の隅に移動して、うまくいってない武器を眺めている。鉄は山積み。ミスリルは別の箱。アダマンタイトの箱もあるけど、入ってない。あと1つあって、オリハルコン使用の武器用になっている。これも入っていない。オリハルコンは柔らかい金属なので、武器に向いてないんだよね。最初に戻って、鉄の武器を見ている。


「それで武器を探しているんだってね?」

「そうだよ。強化の出来る武器がいいかなって」

「どんな武器がいいんだい?何製がいいとかがあるだろう?」

「鉄はすぐに消えるから、ミスリル以上」


 ヒャエラさんは腕組みするとそこの鉄のでやって見ろというので、適当に手に取ると強化すると念じながら、魔力を武器に流していく。


 武器は魔力でうっすら光り、その光は強くなって武器の周りを漂い始める。モヤみたいになって武器を覆っているのだ。ある瞬間に光はなくなる。


「どうなったんだ」

「なくなった」


 漂っていた魔力の何かは霧散していって、手には何も残ってはいない。


「本当に消えるんだな」

「だから困ってるんだ」

「普通の武器だと難しい。里には報告しておくが、里でも武器を作れるかどうか。古代の武器か、探すにしても買うにしても時間も金もかかる。どうしたもんかね」

「とりあえずでいいんだけど」

「そのとりあえずがないから考えてんだ。ちょっと黙ってな」


 ヒャエラさんとバルリングさんが話し合っている。


「こんな高魔力は見たことがねえぞ。鉄が消えるなら、他のも同じようになるんじゃねえのか?魔力伝導とかそういう問題じゃねえ」

「それはわかるんだよ。だからって、これに耐えられる武器があるかどうかだ。古代の武器なんてうちのギルドにないしね。それに代わりになりそうな武器なんかあるはずない。他の支部に声をかけてみるしかないか」

「それはいいんだが、試せるのは試してみないか?」

「何か試せそうな武器なんかあった?」

「持ってくるから、何人か連れていこう」


 ヒャエラさんはピンときてない。バルリングさんは何人かと工房から出て行った。工房の中は金属の音が響いている。


「何を持ってくるんだろうね」

「何かあるの?」

「それがわからないから待ってるんだよ」

「それもそうだね」



 呪って描かれた木箱がいくつか運ばれてきてた。呪われてる武器がギルドにあったの?


「ここにあるのは呪われた武器だ。曰く付きってヤツだ。商業ギルドで買ったヤツも曰く付きだけど、買ったんだろう?誰も取り扱いが出来なくて困った、そういう武器も含まれている。ただ、本当にヤバいのは里の封印庫だ。こっちは瘴気やらが出てない、保管していても問題ない武器だな」

「そうなんだ」


 すぐに死なないなら、開けても大丈夫か。近くに置かれた箱から開けてみる。槍の先だね。禍々しさとかは感じられない。何が悪いんだろう?


「お前、それ、は」

「鑑定だけど?」

「いや、それは高レベル鑑定スキルじゃねえのか?」

「そう?いろんなの見てるからじゃないかな」


 いろんなモノを鑑定してきたのは確かだからね。目の前にあるのは槍の穂で昔の人が使っていた槍らしい。


「持ち主しか使えないようにしているね。昔の槍使いが使っていたみたいだよ」

「使用者限定の魔法陣が組み込まれているのか。それなら、商業ギルドに相談して、解除してから使えるようにすれば売り出せる。でかしたランス!」


 バルリングさんは呪の札を剥がして、使用者限定品と木箱に直接描いていた。


「直接描くんじゃないよ。次使う時に削らないといけないだろうに」

「槍にするんなら、この箱じゃ売れねえよ。穂だけ売らないだろうが」

「そうかもしれないけど、直接描くんじゃないよ。木箱も特製なんだからね」


 バルリングさんはヒャエラさんに怒られていた。


 次の箱は何かな?箱を開けるとウォーハンマーだ。これはなんだろうね?魔力を吸収している。鑑定では吸魔のウォーハンマーと出ている。吸魔する魔法陣が組み込まれているのか、そういう構造なのか気になる。魔法に強い構造なら、それを真似してみたい。


「魔法陣展開」


 浮かび上がった魔法陣は壊れていた。魔力を吸収している状態だったけど、どうも壊れて効果が変わっているようだ。正常な魔法陣を見ればわかるのかもしれない。この魔法陣は初めて見る。


「これはなんだ?」

「里から貰った古代の魔法陣の中にはなかった。今は魔力を吸収しているけど、正常になったらどんな効果があるのかわからない。壊れている箇所を直せる気がしないんだよね。何個か種類があって、どれが描かれていたのかわからない。武器とかは型があるはずなんだけど、それもわからない」

「古代の付与魔法陣破損だな。魔力吸収中と。その調子で頼むぞランス」

「とりあえずの武器が見つかればいいんだけど」


 魔法陣が壊れていたり、本当に呪いがかかっていたり。呪い自体は殺すほどじゃなくて、弱っていくぐらいだけどね。


「こいつは呪いじゃないと思うんだが、直接触ると倒れる。そういうヤバい剣だ。近づきすぎるなよ」


 それは恐ろしい剣だね。蓋を開けるとミスリルの剣にオリハルコンが引かれていた。溝を掘って、そこにオリハルコンを流し込んで線にしている。なんのためのオリハルコン?


 鑑定をしてみるけど、超吸魔の剣としかわからない。


「魔法陣展開」


 あれ?浮き出てこない。魔力が吸収されている。剣が魔力を吸収している。別のは出来たのに。これは吸収量が多いのかな?手を近づけると魔力が吸われている。吸わせるとどうなるのかな?


「おい、ランス。そんなに手を近づけているが、大丈夫なのか?」

「魔法陣を展開する魔法が吸収されるから、魔力を吸わせているんだ。どんなことが起こるのかなって」

「爆発したりしねえよな?」

「その時は諦めて」


 いつもは大胆なドワーフたちも下がっていった。どれほどの量を吸収しているんだろうか?どんどん吸収するので、魔力量を上げるがあっさりと吸収してしまう。どれだけ吸収するんだよ。



 吸収していく量が、減って吸収がおさまると剣自体が光っておさまる。もう1度鑑定をかけてみると、魔力強化(超)と表示。鑑定は古代の剣。使用者は膨大な魔力が必要で、教えて貰った他の魔法陣の効果も入っている。


「魔法陣展開」


 本当だ。6つ目の魔法陣が入っている。せっかくなので紙を貰って、書き写す。バルリングさんに紙を持って来て貰ってね。


「その剣はなんだったんだ?」

「ええとね、魔力強化超っていうのが効果としてある。だから、里から教わった5つも入っているから、残りがその魔力強化の魔法陣になるってこと。使うには膨大な魔力を必要とする。たぶん、触った人は急性魔力欠乏で意識がなくなったんじゃないのかな?」

「そんなにすごいのか?」

「感覚だけど、半分ぐらいは持って行かれた」


 バルリングさんはちょっと下がった。


「今は触っても大丈夫だと思うけど。魔力を吸収してない状態だと、他の人は触らない方がいいよ?とりあえずの武器としては十分だね。これ頂戴」

「そうか、里には報告させてもらうが、これがな。魔力がなくても人は死なないが、気分はよくないからな」

「そうだね。あれはあまり体験したくないよね。死なないけど」

「謎は解けた。それが終わったら次のも鑑定してくれ」


 あれ?とりあえずの武器は手に入ったんだけどな。魔法陣の書き写しが終わって、また鑑定が始まった。魔法陣が破損している物、使用者限定もいくつかあった。本当に呪われているのは1つだけ。解術は簡単なんだけど、それはしない。


「いや、倉庫の肥やしがはけるならこれほどいいことはない。助かったぞランス。ヒャエラ、この武器はタダでいいよな?」

「しかし」

「なら、鑑定料は払うのか?これから入り用だぞ?使用者限定解除が多いからな。逆に武器で手を打ってもらった方がこっちは助かるんじゃないか?それにランスのとりあえずの武器は、相当量の魔力を保有して、初めて扱える。普通の人には売れないぞ?ランスに使える武器が見つかったってことでいいだろう?両得だ」

「うーん、鑑定料ははじき出せない。うーん」


 ヒャエラさんは唸り始めた。


「それに魔法陣の修復までは鑑定師には無理だ。付与師のスキルがあったからこそ出来た。鞘もつけて、手打ちといかねえか?ランスはそれでいいか?」

「いいよ」

「ほら、本人もそういってる。ランスから取り上げても売れる先はランスしかないぞ?ランスの鑑定のことは理解しているんだろう?それなら返事は決まったな?」

「ええい、それでいいよ。里への報告書はバルリングが作りな。先に報告と許可だけ取っておくよ。鞘を作りながら待ってな」


 バルリングさんは報告書といいながら肩を落とした。ヒャエラさんは工房から出て行く。バルリングさんは報告書を作りに行った。俺は剣の鞘を作るため、場所を移動する。


 アードリアンさんを見つけてお願いしてみる。


「鞘作って」

「鞘をか?自分で作ってみたらどうだ?」

「まだ精錬してないよ」

「ならしゃーない。作ってやるよ」


 剣を受け取ると木材に線を引いて、木を切り出す。切った2枚の木を削り始めた。剣の厚さに合わせて削っているようだ。時々木と剣を合わせている。


「作って置いてやるから、自分の仕事しな」

「よろしくね」


 炭切りに倉庫へと。ちゃんと炭の在庫は揃っていた。いつも通りに炭切りを始める。忙しいぞ。



 炭切りが終わってクリーンをかける。倉庫から出るといつもの工房だった。箱に入った武器が並んでいたからおかしいんだけどね。熱そうな火で剣を打っている様子の見学する。もうすぐ打てると思うと嬉しい。やっとだね。


「おーい、鞘が出来たぞ」

「おお早い、ちゃんと鞘に入ってる」

「突貫だから、膠が乾くまでは貼り合わせの鞘が割れるかもしれないから気をつけろ。皮も張ったし、金属の鞘先と吊す箇所もつけてある。そうそうずれないとは思うが、1週間ぐらいは気をつけるんだぞ」

「うん、ありがとう。気をつけるよ」


 剣のつけるベルトをしていない。工房から出て、販売所へ入るとベルトを探す。どこかな?剣を持って、ヨルムも持ってると動きにくいんだけど。


「何かお探しですか?」

「剣を吊すベルトってある?探してるんだけど」

「こちらですよ」


 店員さんに案内されて、ベルトがあったのは剣が展示されているすぐ横だった。見逃しちゃったかも。


「どのベルトがよろしいですか?」

「普通の茶色のがいい」

「ではこちらですね。長さの調節をいたしましょう。大きめに作られていますので、合うようにします」

「お願いします」


 ヨルムを降ろして、長さをしっかりと測って貰う。ちょちょっと何かして戻ってきたら、すぐに腰に巻いてくれた。ベルトはちょうどいい。剣が少し長い。地面をこすらないように角度をつけているからいいか。精算をしてから、工房に戻る。


 バルリングさんは報告書のためか、工房にはいない。代わりにヒャエラさんがいた。


「もう鞘も出来たのか。よかったな。里の許可は取ったから、それはお前のもんだ。いろいろ調べたいことはあるが、ギルドではしない。どの程度の威力かわからないからな」

「そうなんだ。わかった。明日は休んでもいい?」

「精錬の日まではいつ休んできてもいいぞ」

「そうなんだ。わかった。商業ギルドに連絡しないとね。容器を作らないといけない」

「受付に行ったらしてくれるぞ」


 受付にお願いしてみるとあっさり了承してくれた。お願い出来たので、帰る時間まで工房の見学をしていた。

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