白粉の代わりを作る5
とりあえず、良さそうな配合があったので配合割合を試していると夕食が出来たと言われたので作業をやめる。配合も決まったので、あとは使用感やどれくらい持つかを試してもらいたい。夕食の席に着くとエロイーズ父が珍しく座っている。
「ランス君、禁書庫への通行許可証だ。出来るなら祝福後にいって欲しい。呪われた本やスキルがないと対処が出来ないような本も所蔵されているので、そこで死んだとしても責任は取れない」
「それじゃあ、祝福後に行く」
1通の封筒を受け取る。それは楽しみな場所だな。何年か待たないといけないね。安全に楽しむにはしょうがないか。
「そういえばランス、商業ギルドからの材料はたくさんあったけど、どうしたんだ?」
「結構捨てた。使う前に色が変わるとダメだから、変色してしまったものは使う候補から外した。あとはそうだね、試作の配合は決まったから誰かに試してもらって、使い勝手の改良が済めば完成かな。基材の調節ぐらい。配合は決まった」
「ほぼ完成じゃないか。使ってやるから出せ」
「夕食があるから配合まで決めたけど、試作品1号は終わってから作る予定だよ。入れ物も仮のものしか用意できない。出来たら持っていってもらうから、部屋に来ないでよ。量るのをしくじったら完成出来ないよ?」
鋭い視線を感じて、静かに素早く夕食を終わらせると部屋に戻る。メイドさんも夕食を取るので少し外している。さも当然のように部屋に入ってくる。
「さあ、早く作ってくれ。疲労感が抜けなくてな、仕事のやりすぎってこともない。最近は運動の相手がいないからつまらん」
何を言っているんだ。どうしてイスに座っているんだ。配合を決めるときは鑑定を使ったので、エロイーズの前ですることは出来ない。秤を使っていないのでどうやって配合をすればいいんだ。困ったところにドアが開いた。
「抜け駆けはよくないわよ、エロイーズ。私も欲しいんだけど、もうできたわけじゃないみたいね」
「お母様、ここは邪魔をしないように出来上がるのを待っていましょう」
「そうね」
2人でうなずき合うのをため息をつきながら見て、作れないのだから作る気も作る必要もない。せっせと片付けを始める。
「片付けをしなくともメイド達がやってくれる。さっさと作ってくれ」
「協力をしてくれない人に試供品を渡すわけないでしょ。販売まで待っていて。今日はもう作らない。もう寝るから出て行って」
「楽しみに来たのに見せてももらえないのか?その辺りにあるものを持っていってもいいのか?」
「構わないよ。そのかわり、試供品が出来ないから販売も遅くなるけど、いいんだよね?白粉ほど白くはないから、白粉を使っていればいいよ」
エロイーズは立ち上がって怒りの表情で見下ろしている。ある程度片付けたらメイドさんが夕食から戻ってきた。
「お嬢様、奥様どうされたのですか?」
「出来た化粧品を渡さないというんだ。どれか知っているか?」
「存じ上げません。夕食の席でお話のほぼ完成形の品はランス様がおひとりで作られておりました。その間、外で見張りをしておりました。こういう作り出す作業というのは、ギルド内、もしくは師弟間で誓約を持って行われるようなことを聞きました。秘密が必ず遵守されるよう取り計らうのも当然かと存じます。奥様とお嬢様は秘密を漏らしたものとして、家名を貶めるような行為をされませんが、もし漏れたときは疑われ、非難されるのはグレンフェル家になります。それを加味された上で、こちらに残られるのはご自由でございます。1番に非難にさらされるのは旦那様になりますけれども」
メイドさんの言葉にエロイーズ母は完成を楽しみしていますと部屋を出て行った。
「お父様にご迷惑になるような行為は。うーん。困った。困る。早く欲しい。欲しいんだランス」
「部屋の前で待つなら1番に渡せるけど、中にいるなら作らない」
「作らないのはお母様に何を言われるかわからない。お母様が敵に回すと。ああ。考えただけでもお、恐ろしい」
何か怯えた様子で、部屋の前で待つから早く作ってくれと出て行った。メイドさんもお部屋の外におりますので何かありましたらと一緒に出て行った。1人になったところで、夕食前の配合を確かめて基材を作り、粉同士を先に調合してから混ぜた。容器はシャローザに渡したものと同じものを作って3つの容器に入れる。時間はそんなにかかっていないけど、量るのを鑑定を使ってやっているので、普通の秤を入手しておかないといけない。薬師で明日の朝に買っておこう。
ドアを開けるとメイドさんとエロイーズがいる。エロイーズに奪われるように渡す。
「仮の容器だというのに、こんな贅沢なものを使うのか。はあぁ、素晴らしい出来だな。この容器だけでもいいぐらいだ」
「別のものに移したら返して」
「いいじゃないか、けちくさいことを言うな」
「贅沢って自分が言ったんじゃないか」
「もらっていく」
嬉しいのか、飛び跳ねながら戻っていくところを見ると返せとは言わないでおこうと思った。メイドさんに2つ渡す。
「1つはエロイーズのお母さんに。1つは僕のお世話を1番してくれている人にお願いするね。僕は寝るから、よろしく」
「ふぇ」
えともへとも聞こえそうな声が聞こえて、ドアを閉める。あと、シャローザの分を作って、明日にでも渡せればいいか。頑張って作れたし、夜はあんまり動きたくないからね。
朝一で薬師ギルドによって秤を購入。天秤ばかりと言う。普通はこれなので秤と言えばこれが出てきた。普通じゃないのがあるのかというと、魔力ばかりとか言うものもあるから重さの量るのだと説明した。
「見つけました」
横に馬車が止められて、シャローザが降りてくる。昨日渡した試作品を使っているようで、自然な感じで白さがうまく出ていると思う。なんかキラキラしてる?
「おはようシャローザ」
「出かけるのなら場所を伝えてから行ってください。闇雲に探すところでした。見つかってよかったです」
「そうだね、気がつかなかった。試作品1号が出来たからきちんと量っておこうと思ってね。割合とどのくらい混ぜるかとか」
「え、ええ?もう出来たのですか。そ、それで、どんな感じになるのですか?是非見てみたいものです。是非、お願いします」
後ろを歩くメイドさんを振り返る。
「使ってもらっているよ。違和感とかある?」
「いいえ、ありません。使い方も変わらずに使用いただけます。こちらの方が肌にのばしやすく感じるので、使いやすいように感じます。1つ、お願いしたいことがあるとすれば、肌によいだけの物もあればいいかと提案します」
「肌によいだけの。それを作るのか。それって、今みたいな感じでいいの?肌につけるときに便利そうだけど」
「個人の意見となりますが、出来れば薄く塗れるような、寝るときに使えればいいのかなと思います。今のものは布、枕につきやすいと思いますので」
なるほどと納得して、布につきにくいというのがいいのか。どうすればいいのかな。そうだな、出来ればもっとぬるっとしたところをなくせれば、いけるかもしれない。そう考えると帰って寝るときつけるものを作らないと。
「こういうことが好きなのですね。とても楽しそうですよ」
「新しいことや作り出すことは楽しいよ。やっぱり、そういうのってワクワクするからね」
「薄いポーションを塗ったのじゃダメなのかな?」
「ポーションはいざというときに使うものです。いつも使うようなものとしては、高価すぎるのではないでしょうか。いいのか悪いのかわかりませんが、そんなに使ってもいいのですか?使うのはケガなどが普通なのかと思います」
ポーションって、そうか自分で作れるから考えなかったけど、高いんだよね。基材に混ぜた肌にいい成分を、水っぽくていいのかな?それだと安く仕上がりそう。
「試作品1号で使っていた、肌に良さそうなものを更に混ぜて水っぽい感じで作ってみようかな。どうかな?」
「どんな感じなのか、想像がつかないのでランス様、作って見せてください。そうしていただいたら、私たちも意見を言えると思います」
「それもそうだね。帰ってから作ってみよう」
貴族門を通過しようとしたところ、門兵が隊長が呼んでいるというので行くことにした。試作品1号に何か問題があったのかな?
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読んでくれてありがとうございます。
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