刃と紙飛行機と死 (3) (300字小説)

キッチンから包丁を取り出す。それは昨日研いだからか、光を反射していた。

僕はそれを首元に当てる。これって奥から手前に引けば死ねるんだよなと思いつつ。

よし。僕は彼女に会いに行くんだ。

「ピーンポーン」

刃を首に当てた時、インターホンが突然鳴った。無視するわけにもいかず出てみるとそこには一人の女の子がいた。

「あの、紙飛行機がベランダに入ってしまって……。取らせてもらってもいいですか?」

断る理由もなく、僕は女の子を部屋に入れた。彼女はベランダにまっすぐ向かった。同じ部屋の間取りに住んでいるのだろう。

女の子が出ていった僕の部屋を見て思った。

これじゃ死ねないな……。

僕は彼女との思い出がたくさん詰まった部屋を片付け始めた。

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