夏祭り(300字小説)

「ちょっと待ってよー」

彼女が僕の浴衣の腕の袖をきゅっと掴みながら言ってきた。

「……ほら、はぐれないようにな」

僕は彼女の袖を掴んでる方とは逆の手を取り、握った。彼女は驚きの顔を浮かべながら僕を見てくる。その顔が可愛くて僕は顔をそらしてしまった。その時、僕の鼻が醤油の匂いをとらえた。この匂いは……。

「「イカ焼きの匂い?」」

僕は彼女と声を合わせて言っていた。一緒に見た目線の先には屋台の炭火の上で丸々一匹焼かれてたイカがあった。

「……イカ食うか?」

「……うん! 食べよっ!」

僕はさっき繋いだ手をさらにぎゅっと強く握って屋台へと歩みを進めた。歩き始めた時、彼女が照れて僕の背中に顔を埋めてきたことは秘密……。

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