【激辛エロティックホームドラマ】いやたい水着

しょうたれ母子・その２

９月24日の午後１時過ぎのことであった。

茂西の家から家出したさおり母子４人は、高松の屋島山頂にいた。

母子４人は、展望台から遠くに見える高松市中心部の街並みをながめていた。

ふみことまりよは、なおとのそばに寄り添っていた。

さおりは、つらそうな表情でなおとに言うた。

｢なおと。｣

｢かあさん。｣

｢かあさんね…撫養（むや・徳島県鳴門市）で暮らしているじいじとばあばのもとへ行こうかと思っているのよ。｣

｢撫養で暮らしているじいじとばあばの家へ行く…｣

｢頼れる場所は、他にないのよ…｣

ねくらな表情を浮かべているさおりに怒りを抱えているなおとは、ふみことまりよを連れてテラスへ行った。

さおりは、ぼんやりとした表情で３人の子供たちを見つめながらつぶやいた。

撫養の実家へ帰りたい…

けれど、帰ることができない…

実家は、幸せいっぱいに包まれている。

一番上の兄夫婦（55歳と58歳の妻）の長男（29歳）は、ちいちゃい時からの幼なじみのコ（30歳）にプロポーズして結婚を決めた。

次男（27歳）も、職場恋愛でつき合っていた彼女（28歳）と結婚…結婚後は職場をやめて実家の工場を手伝う…

長女（34歳）も、100回目のお見合いで大事にしてくださる人とめぐり会えた。

両親は『初孫が生まれてくるのが楽しみ…』と言うて目を細めて喜んでいる。

ほやけん、両親はなおととふみことまりよは孫とは思っていない…

アタシがしょうたれな性格だから、３人の子供たちは父親のいない子どもになった。

やっぱり…

撫養の実家へ帰るのやめよう…

ところ変わって、灘町の家にて…

この時、出稼ぎ中だった次男比呂彦（ひろひこ・45歳）が急に帰宅した。

10日前に、ジブチ沖の海域で比呂彦たちが乗っていた特大トロール漁船が巡回中の沖合いに停泊していたアメリカ軍の艦船数隻に取り囲まれた。

この時、トロール漁船がアメリカ軍によるリンケンを受けた。

リンケンを受けた理由は、トロール漁船に国際テロ組織に属している男数人がひそんでいると言うことであった。

比呂彦たち乗組員は、トロール漁船をアメリカ軍に没収されたあと艦船内で取り調べなどを受けていた。

その結果、テロ組織に属しているうたがいがあった男性乗組員はまっとうな人だった。

比呂彦たち乗組員は、今回の問題が収束するまでの間一時帰休となった。

比呂彦は、９月23日の午後にドバイ国際空港から飛行機に乗って帰国の途についた。

ドバイ国際空港から台湾経由で日本に帰国した。

この日の朝９時過ぎに、福岡空港に到着した。

その後、日本エアコミューター機に乗って松山空港に帰って来た。

松山空港から灘町の家までは、タクシーで移動した。

帰宅した比呂彦は、ものすごくつらそうな表情でかなえに言うた。

｢ああ、ホンマにまいったわ…トロールなんかもうイヤや!!｣

｢比呂彦、たいへんだったわね。｣

｢ああ、トロールなんぞやめたるわ!!｣

帰宅した比呂彦は、大広間のテーブルのそばに敷いているざぶとんにこしかけたあと、怒った声で言うた。

｢よぉーい!!酒もてこいや!!｣

台所にいたあやみは、山丹正宗のラベルが貼っている茶色の一升瓶と砥部焼の湯呑み茶碗を持ってきた。

あやみは、なにも言わずに酒を置いたあと台所へ戻った。

比呂彦は、疲れた表情で山丹正宗（日本酒）を砥部焼の湯呑み茶碗についだ。

かなえは、比呂彦に今後のことについてたずねた。

｢比呂彦。｣

｢なんぞぉ～｣

｢トロールをやめたあとは、どうするのよ？｣

比呂彦は、湯呑み茶碗に入っている酒を一気にのみほしてからかなえに言うた。

｢その前に、オレが出稼ぎ中の時に送金した分は、全部貯蓄に入っていたかなぁ～｣

｢大丈夫よ…全額貯蓄されているよ。｣

｢それ聞いて、安心した…この際だから、違う場所に移って農業を再開しようと思う…貯蓄されている分で、新しい田畑と農機具と特大サイズの家が買える…リフォーム代も、十分にある…佐多彦（さだひこ・三男）と直彦（四男）が貯蓄分が全部あるから…それで再開することにした。｣

｢そうね…比呂彦と佐多彦と直彦のおかげで、農業を再開することができる…心細いことはなくなったわ…｣

比呂彦は、酒を湯呑み茶碗につぎながらかなえに言うた。

｢来年から、またがんばって米と野菜を作って行こう…｣

｢そうね…｣

比呂彦は、お酒をのんでからかなえに言うた。

｢せや、紀世彦のことでなんぞ聞いてへん？｣

｢紀世彦は、11月１日付けで今治の支店に転勤になったって…｣

｢ほんなら、別名（べつみょう）で暮らしている知人に電話して頼んでみる…その近くに移ろうかと思っていたからちょうどええわ。｣

今後の見通しがついた一家は、新生活を始める準備に入ることができた。

しかし、その矢先によくない知らせが家に入ったようだ。

時は、夜７時頃であった。

家の大広間のテーブルの上には、あやみが作ったとびきりの料理が並んでいた。

食卓には、はじめ夫婦と比呂彦とあやみがいた。

紀世彦は、まだ帰宅していなかった。

かなえは、ものすごくソワソワした表情で柱にかかっているシチズンの天気予報時計を見つめていた。

時計のはりは、夜７時を２分回っていた。

10時間後の予報は曇りを示す赤いランプが点滅していた。

｢遅いわねぇ…紀世彦はなにしよんかしら…｣

比呂彦は、つらそうな声でかなえに言うた。

｢かあさん、もうええけん食べよや～｣

かなえは、ものすごくつらそうな声で比呂彦に言うた。

｢そうは行かないわよ…とーさんとかあさんは紀世彦がいないとごはんが食べられんのよ…もう少し待ってよぅ～｣

遅いわねぇ…

紀世彦は、今ごろどこにいるのかしら…

ごはん冷めてしまうわよ…

その時であった。

（ジリリリリリリリリン!!ジリリリリリリリ!!）

黒のダイヤル式の電話機がけたたましいベルを鳴らした。

あやみが電話に出た。

受話器を手にしたあやみは、あわてた声で言うた。

｢茂西でございます…紀世彦さん!!なにしているのよ!?みんなが晩ごはん食べたいといよるのよ!!早く帰ってきて…えっ？…茂西はうちですが…｣

電話は、紀世彦の職場の人からであった。

｢ああ、いよぎんの本店の人ですね…ああ、すみませーん…ちょっと気持ちがあせっていて…ああ、いつも義兄に親切にしていただいてありがとうございます…えっ？義兄はまだ帰られていませんけど…もしもし、どうかなさいましたか？｣

次の瞬間、あやみの顔が青ざめた。

｢ええ!?義兄がスマホと手提げを職場に置いて帰ったって!?…もしもし、一体なにがあったのですか!?…もしもし!!｣

受話器の向こう側で、ものすごく恐ろしい怒号が響いた。

紀世彦は、職場でなんらかのもめごとを起こしたようだ。

考えられる事案は、銀行の帳簿に大穴をあけた…または、職場内で女子行員にセクハラをした…

…などがあるけど、この時点ではまだ明らかにされていない…

職場の人は、あやみに『オドレの義兄が犯したあやまちはオドレらが始末せえ!!』と怒鳴っただけで、くわしい事象は話さなかった。

せっかく一家がやり直す機会を得たのに、紀世彦のせいでなにもかもがパーになった。

うちらは、どうすればいいのか分からない…