第15話 負けたくない『理由』
――天空の大地 『焔の魔王』陣営
私の配下最強であるドラコーンの『灰燼の咆哮』からの『
相手戦力にドラコーンの攻撃と同程度の遠距離技を持つ魔物が存在しているのは、予想の範疇であったので、そこまで驚きはしないけども、先手を読まれていたのか、見てから反応されたのかによって怖さが変わってきますね。
「防がれてしまったか」
「この一手は互いに牽制のようなものです。行きましょう」
上空を見渡していけばソウイチの魔物たちが相変わらず滅茶苦茶とも言えるような力で制圧していくのを感じられます。
きっとこの戦争も私や『水の魔王』ではなく、ソウイチのほうが注目されるような一戦になるんでしょう。ルーキーなのに多くの他魔王に喧嘩を売るような形になった『海賊の魔王』との一戦。敵対する者を完膚なきまでに叩き潰す圧倒的戦力は、他魔王の多くを黙らせてしまうほどです。
同盟である私ですら謎に包まれたソウイチの戦力ですし、今回出てきている魔物たちも、ドラコーンが自分よりも強いと認めるような魔物ばかりなのです。秘密は詳しくは聞きませんが、正直羨ましくもあります。
この一戦がソウイチのおかげと言われようが、私は『水の魔王』に負けるわけには行きません。
今は学ぶ立場ですが、いつかソウイチをも超える魔王になるために。
「完全な私怨ではありますが、何としてでも勝たせてもらいます」
師匠が勇者に敗れてしまった後、私は師匠と親交が深かったと言う彼女に連絡をとり、何度か言葉を交わさせてもらいました。
当時の私は深いショックで、少し正常ではなかったかもしれませんが、そんな私でも『水の魔王』としての幾つもの発言は納得することが出来ませんでした。
「変なプライドを持つから破滅した」「いくら仲が良かろうと勇者相手に助けるのは話が違う」「魔王界ってのも弱肉強食」、間違ったことは言っていないかもしれませんが、長い親交のあった師匠への言葉を、そんな風にまとめられては師匠の顔が立ちません。
「魔王界が弱肉強食だと言うのならば、私が貴方を踏み越えて……さらに証明してみせましょう」
そして何より、私が許容できなかった言葉が「ミルドレッドもラムザも貴方みたいなルーキーを弟子にとってから変わってしまったわ。私から言わせれば失敗だと言わざるを得ないわね」……と、師匠が私に施してくださった全てを否定するような言葉を言われてから、私はおかしくなってしまったかもしれません。
『水の魔王』貴方を踏み越えて、さらに師匠のやったことが間違いでなかったことを証明し、さらには存在の在り方が変わり、人間たちにも舐められるような魔王界を、私が最強の魔王になることで変えて見せます。
かつて師匠が誇り高く、何者にも下に見られることが無かった存在であったように、さらにその先を目指して…。
◇
――天空の大地 中央付近上空
――ドゴォォォォンッ!
ついに『焔』と『水』の魔物たちによる地上戦が始まった。
耐久性とバランスの良い能力で戦う『水』の魔物に対して、攻撃性能と物理攻撃で攻め立てる『焔』の戦いだ。
上空はほとんど制圧し終えた感じだ。『翼騎士』も同盟の魔王戦争に全戦力を投入はしていないようで、追加戦力は投入されなかったので、数は多かったが最初に配置されていた魔物たちを、ほとんど倒し終えることが出来たので、残りは地上戦って感じだな。
そして『水の魔王』の能力が少しだけ見えてくる。
戦場を見渡せば、様々な場所で環境の変化が起きている。『霧』に『雲』、そこからの『雨』といったように水の粒の大きさを自在に変化させて気候を操っている。
環境の恩恵を自在に『水』の魔物たちへと与えるために動いているようだな。
しかし『焔』の魔物の圧倒的火力も負けておらず、戦場は凄まじい湿度と気温になっている。しかし『雨』という状態は確実に『水』の魔物の方に恩恵を与えている。
『焔』の火にも影響を与える『雨』を降らせるなんて、さすがは四大元素の力を持ち、長年魔王をやっていることはあるってことだ。
「ますたー。正直『水』のほうが強い」
メルが地上にいる魔物たちを客観的に見て指摘してくれている。
さすがにルーキーであるアイシャがミルドレッドやラムザさんと同じような力を持つような魔王に対して戦力で上回れることは無理だろう。
真名を授けれる数は魔王の魔名によって限度が違うけれど、ガチャだったり、配合だったりの回数には圧倒的な差があるだろうし、貯蓄しているDEにも差があるだろう。
そんなのは戦争前から分かり切っている中でも、アイシャが挑むんだからある程度の勝算はあるだろうし、作戦もあると言っていたらから、ある程度は援護しつつやっていかないとな。
上空から見ていてると、凄く活躍が目立っている『水』の魔物が1体いる。
『水』の軍勢中央に陣取っている巨大な貝だ。その貝は隙間から霧のようなものを出し続けている。それが『焔』の軍勢に幻覚を見せているのか、一部の魔物が大混乱に陥っている。
あの貝の中にどんな奴が潜んでいるのかは分からないけど、かなり厄介能力をもった魔物だ。
「ちょっとだけ硬そう」
「あの大きさになると『
「『
「それもそうか」
メルの説明だとあの貝は『蜃気楼』を作り出すことの出来る魔物だそうで、戦場に数体程配置されており、あの魔物が『焔』の勢いを完全に食い止めている様だ。どうやってあそこまで移動してきたと言うと、人魚らしき魔物たちが時空間魔法で転送した結果のようだ。
時空間魔法はランクが低くてもあるだけでかなり戦術の幅が広がるからな。あの貝魔物の致命的な弱点を上手く補っている。
「あの魔物が作り出す『蜃気楼』と『水の魔王』が自在に作り出せる天候の変化を活かした戦術……どんな戦場でも自分たちのペースにもっていけるような安定感がありそうだ」
「『焔』は厳しいかも」
アイシャの魔王として能力に自軍の魔物を全復活させるというイカれた技があるけれど、それをどのタイミングで使うかによって戦局は大きく変わるだろうが、『水の魔王』の力が天候を操るだけとも思えない。
貝の作り出す蜃気楼に飲まれてしまい、完全に統制を失っているアイシャの魔物たち、自慢の火力をばら撒いて上手く対処している魔物もいるけれど、囲まれて仕留められたり、遠距離から狙い撃ちにされてしまったりと、前線のラインがどんどん押されている。
――ドゴォォォォンッ!
そんな前線に降り注ぐのは「炎岩砲亀ガンダルイーダ」率いる部隊から放たれる砲弾の嵐だ。
アイシャの復活能力を信じての無差別に降り注ぐ炎岩の雨にはさすがに『水』の魔物たちも予想外という感じに見える。
――ドゴォォォォン!
しかし貝の魔物には炎岩の雨も効いていないようだ。とんでもない硬さだな。それでも周囲の魔物たちはいくら耐久力があると言っても、さすがに防ぎ切れていないようだ。
「ますたー。ここにいるとシンラが大変」
「そうだな。少し離れよう」
何事も無く躱しながら飛んでいてくれるシンラだが、ずっと居座るのは酷な話だったな。
俺はシンラにアイシャのダンジョン側に戻りつつ離れる指示をだした。
戦場はどんどん激しさを増していく。
たくさん見せてもらおう……属性系統の魔王たちの戦い方ってのを。
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