第48話 やっぱり断罪されるのですか?

急に苦しみだし倒れたリリー。


私は慌ててリリーの元に駆け寄る。



周りからは悲鳴が聞こえ、人も集まってきていた。


リリーを抱き起すと、口から泡を吹いている。


これって、もしかして毒?


とにかく治癒魔法をかけないと!


私はリリーに手をかざすと“治れ、治れ”と何度も念じる。


お願い!リリー、目を覚まして!



無意識に魔力を込める力が強くなる。


リリー、何でこんなことになったの?


一体何が起こっているの?



私は必死に治癒魔法をかけながら考える。


そう言えばこの時期って、漫画の世界ではエイリーンがリリーを毒殺しようとして、断罪される頃だ!



もしかして…


そう思った時!



「リリー」


「エイリーン」



カルロ様とフェルナンド殿下がやって来た。



「エイリーン、一体何があったんだ?」


カルロ様の問いに私は治癒魔法をかけながら答える。




「わからないの!お茶を飲んだら急に苦しみだして…」


隣ではフェルナンド殿下が必死にリリーに声をかけていた。


「とにかくリリーは医務室へと連れて行く!兄上、後は頼む」


そう言うとフェルナンド殿下はリリーを抱きかかえ、医務室へと向かった。



次の瞬間、私は体を起こしていることが出来ず、倒れそうになったところをカルロ様に受け止められた。


どうやら治癒魔法でかなりの魔力を使ってしまったらしい。



「エイリーン、大丈夫かい?」


「ええ、大丈夫よ。それよりリリーが飲んだお茶が怪しいわ。もしかしたら毒が入っていたのかもしれないわ」



そう、お茶を飲んだ瞬間、リリーは苦しみだした。漫画では未遂に終わったが、ストーリー通りなら毒が入っていた可能性が高い。


でも一体誰が…



カルロ様が近くにいた護衛騎士にお茶を調べるように依頼をした。毒の種類がわかれば、解毒薬をリリーに飲ませることが出来る。



「でも、もしお茶に毒が入っていたのなら、一体だれが入れたのかしら?」


私の問いに、思いがけない人物から思いがけない言葉が…


「エイリーン、もうそんな演技はやめて!あなたがメイドに指示してリリーに毒を持ったのでしょう?」


そう言ったのはマリアだ。


えっ、マリア、一体何を言っているの?


周りもざわめき始めた。



「エイリーン、あなた最近私に愚痴っていたわよね。“最近フェルナンド殿下を王太子に推す声が出てきている。聖女でもあるリリーと婚約したし、もしかしたらフェルナンド殿下が王太子になるかもしれない”って。あなたフェルナンド殿下が王太子になるのを阻止するために、リリーに毒を盛ったのではなくって?」



マリア、本当に何を言っているの?私そんなこと言っていないわ!



「ベネフィーラ嬢、それはちょっと聞き捨てならないね。エイリーンは僕と結婚できるなら、王妃には興味がないとずっと言っているんだよ。そのエイリーンが、ニッチェル嬢を手にかけるとは思えないな」



カルロ様が反撃をする。



「カルロ殿下にはそう言ったかもしれませんが、エイリーンの本心はそうではないのですよ。それに今日お茶を持ってきたのはエイリーンです。その点を見ても、エイリーンがリリーに毒を盛ったと考えるのが普通では?そうだわ、今日お茶を入れたメイドに真実を聞いてみましょう」



マリアはそう言うと、ステラを呼び出した。呼ばれたステラは震えている。



「申し訳ございません。エイリーンお嬢様にニッチェル様のお茶に毒を入れる様指示され、


毒を盛りました。本当に申し訳ございません」



ステラは泣きながら頭を下げる。ステラまで、一体何を言っているの?



「ほら、メイドもこう言っているわよ。そうだわ。きっとリリーに使った毒を、エイリーンは持っているはずよ。きっとカバンの中に入っているわ」



カバンに毒?そんなもの入っている訳ないわ。なのに、なぜマリアはそんなことを言うの?


「エイリーン、悪いがカバンを見せてもらってもいいかい?」


カルロ様は私に許可を取ると、カバンの中を確認する。すると、見覚えのない小瓶が出てきた。


「ほら、やっぱりエイリーンのカバンに毒が入っていたわ」



マリアが得意そうにそう言った。もう何が何だかわからない。ただ一つ言えるのは、私は今漫画と同じように、断罪されようとしていると言う事だけだ。



私、このまま罪を着せられ、死ぬのかしら。


魔力を使いすぎたせいで、頭がボーっとする。



周りからは


「エイリーン様がリリー嬢を。信じられないわ」


「まさかエイリーン様があんなことするなんて。怖いわね~」


なんて言葉も聞こえる。


私も何か反論しないと…


そう思っているが言葉が出てこない!


どうして?どうしてマリアはそんなことを言うの?私たち友達じゃなかったの?



ほとんど働かない頭の中に浮かぶのは、そんな言葉ばかり…



そんな中、カルロ様が反論する。



「エイリーンがそんなことをするはずがない。エイリーンにはずっと護衛騎士を付けていたんだ。おい、護衛騎士たち、今日エイリーンは何か不審な動きをしていたか?」



カルロ様の言葉と共に、どこからともなく現れる護衛騎士たち。まさか学院内に護衛騎士が付けられているなんて知らなかったわ。



「殿下、報告いたします。エイリーン嬢は特に不審な動きは見られませんでした」


騎士たちの報告に、満足そうなカルロ様。


「ほら見ろ、エイリーンは犯人じゃない!」



「そんなの、家にいるうちにメイドに指示を出しておけば、学院内で怪しい動きをする必要はありませんわ。それにメイドの証言や物的証拠も出てきております。それでもエイリーンをかばうのですか?このままでは殿下もただでは済まなくなりますよ」



マリアがカルロ様まで脅しに入った。悔しそうに唇をかむカルロ様。


このままではカルロ様まで悪者になってしまうわ。何とかしなくては…



でもどうすればいいのかしら?


絶体絶命の大ピンチ!


「もう言い逃れは出来ないわね、エイリーン。護衛騎士たち、エイリーンを連れて行って」



マリアの言葉に、騎士たちが私を連れて行こうと近づいて来る。


「おい、勝手なことをするな!エイリーンは渡さない!」


カルロ様が必死に騎士から私をかばう。



この場合、身分が上のカルロ様の言うことを聞くのが暗黙のルール、護衛騎士たちは私を捕らえることが出来ない。



でもこのままではまずいわ!


そう思った時




「黙って聞いていれば、随分好き勝手言ってくれるじゃないか、ベネフィーラ嬢。俺の妹を侮辱する奴は、誰であろうと許さない!」



私たちの目の前に現れたのは、エイドリアンだ!





~あとがき~

漫画の筋書き通り?エイリーンの断罪が始まりました。


そして断罪をしているのは、友達だと思っていたマリア。それもエイリーンは全く身に覚えのない罪で断罪されようとしています。


ちなみに、エイリーンはかなりの魔力を使い、リリーに治癒魔法をかけています。本来であれば意識を失ってもおかしくない状況の中、何とか意識を留めている状態。そのため、思うように反論することが出来ないのです。

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