第39話 リリーは私が守ります
リリーの手を引き無我夢中で走った、とにかく走った!
でも…
ここ、どこ?
気が付いたら、みんなとはぐれてしまっていたのだ。
とにかくどこか休める場所をと辺りを見渡す。すると近くに大きな木の下を見つけた。
とりあえずあそこで休むか。
リリーの手を引っ張り、木の下に行くと2人で座り込む。
「ごめんね、リリー。考えなしに走ったから、みんなとはぐれちゃったね」
本当に私、何やってるんだろう…
「いいえ、エイリーン様のせいじゃないです。私こそ何にも出来なくて…エイリーン様がいなかったら私きっと、ドラゴンに丸焦げにされていたわ」
そう言うと、リリーは笑った。でもその顔はとても寂しそうで…
きっとフェルナンド殿下が心配でたまらないのだろう…
私だって、カルロ様が心配でたまらない!私たちの為にあの場に残ったエイドリアンたちのことも!
そう思ったら、涙が溢れてきた。
それを見ていたリリーも泣き出す。
お互い抱き合って、ワーワー泣いた。
しばらく泣いていたけれど、だんだん落ち着いてきた。
その時
「グゥ~~~」
リリーのお腹が鳴った。
そういえばお昼ご飯食べていないもんね。
私たちは顔を見合わせて笑った。
「そういえばお昼まだだからお腹空いたね。みんなを探して歩く?それともここでみんなを待つ?」
私の問いかけに、リリーは少し考え込む。
「ここがどこだかよくわからないし、むやみに歩くよりここで助けを待ちましょう!ドラゴンにまた会ったら嫌だし」
確かに!リリーの言うとおりね。
「じゃあここで待とうか。そうだわ!」
私は誰かに気づいてもらえるように、ポケットに入っていたハンカチを出来るだけ高い木の位置に繋ぐ。
こんなことをしても無駄かもしれないけれど、やらないよりはいいわよね。
「エイリーン様、ありがとう!私ドラゴンが現れて、フェルナンド様が崖から落ちてしまった時、本当に頭が真っ白になってしまって!エイリーン様がいなかったらと思うと…私自分が情けないわ」
「そんなことないわ、私だって頭が真っ白になったもん。あの時エイドリアンがいなかったら、きっとあそこから動けなかった。それに、きっとカルロ様もフェルナンド殿下も無事よ。私はそう信じてるわ」
そうよ。カルロ様もフェルナンド殿下も、物語の世界ではかなり重要な役なんだもの。こんなところで亡くなるなんてことないわ!
「エイリーン様は強いね…私普段はびっくりするほどポジティブなのに、こういう時は本当にダメで…」
リリーはまた泣きそうな顔をしている。
「リリー、大丈夫よ!きっと大丈夫」
私はリリーを抱きしめた。
その時、すごい風が私たちを襲う!
この風ってまさか…
私たちの目の前には、あのドラゴンが!
嘘…どうしよう!
落ち着け、落ち着くのよエイリーン!
リリーが聖女として目覚めるのはまだ3ヶ月くらい後。今のリリーの魔力量はそんなに高くないはず。
だとすると、戦えるのは私だけね。
でも私の力ではとてもドラゴンを倒せないわ!
ならやることは1つ。
ドラゴンの皮膚はとても固いから、狙うなら顔!それも目!
「リリー、私がドラゴンを攻撃するわ。ドラゴンの気がそれたその隙に逃げましょう」
リリーはうなずく。
ドラゴンが口から火を吹こうとしている。
今だわ!
私はありったけの魔力を込め、ドラゴンの目を狙って氷を噴射させた。
私が噴射させた氷はドラゴンの顔に命中し、ドラゴンの顔が凍り付く。
「今よ、リリー。走って」
私はリリーの手を取り、走り出す。
きっとあの氷もすぐにドラゴンに溶かされるだろう。
その前に出来るだけ遠くまで逃げないと…
確かドラゴンは臭覚はそこまで良くない。仲間同士の臭いはかぎ分けられるが、人間の臭いにはそこまで敏感ではないと本に書いてあった。
ならば、ドラゴンに見つかりにくい木が生い茂っている場所。できれば洞窟なんかが良いわね。
特にドラゴンは空を飛んで移動するから、上空からでは見つけられないような場所が理想だ。
私は走りながら周りを見渡す。
魔力をたくさん使ったうえ、全力で走り続けている。そろそろ体力も限界だわ。
すると小さいけれど、ちょっとした洞穴を見つけた。
周りは木々が生い茂っている。
ここなら大丈夫だろう!
「リリー、あそこの洞穴に隠れましょう」
リリーもうなずく。
2人で洞穴に入るがやはり狭く、何とか2人が入れる程度だ。
上がった息を整える。
リリーも疲れたのか、ハーハー言っている。
ドラゴンに見つかりにくいということは、みんなにも見つけられにくい。でも仕方ないわね。
「リリー大丈夫?とりあえずここで休みま…」
私がそう言いかけた時だった。
“バキバキバキバキ”
木が折れる音が聞こえ、目の前にはあのドラゴンが…
どうして?
結構な距離走ったよね?もしかして人間の臭いもある程度認識できるのかしら?
もう!本の情報なんて当てにならないものね!
とにかく、今はそんなこと考えている場合じゃない。
ドラゴンを何とかしなきゃ!
このまま何もしなければ、間違いなく2人ともやられる!
とにかくリリーだけでも逃がさないと。
「リリー、私がドラゴンを引き付けるわ。その間に逃げて!」
「でもそれじゃあエイリーン様が!」
「大丈夫よ、私これでも魔力量の訓練を受けているから、ある程度は戦えるわ。私が時間を稼ぐから、誰か呼んできて」
さっきの氷魔法で結構魔力を使ってしまった。後どれくらい戦えるかわからないけれど、やるしかないわね。
ドラゴンは私たち目掛けて、炎を吹き出した。
私はバリア魔法を作動させる。
本当は炎で戦いたいところだが、今の私の魔力量ではドラゴンに吸収されて終わりだろう。
そう思っての判断だ。
私のバリアにドラゴンの炎がぶつかる。
凄い威力だ!
吹き飛ばされそうになるのを必死にこらえる。
「リリー早く!今のうちよ」
私は必死に叫んだ!
でも、次の瞬間、ドラゴンはさらに炎の勢いを増したため、私は吹き飛ばされた!
「きゃあ」
思いっきり木に激突してしまった。
「エイリーン様!」
リリーの叫び声が聞こえる。
とにかく立ち上がって戦わなきゃ!そう思って立ち上がろうとしたのだが
「痛っ」
どうやら足をひねったようだ。
ヤバい、動けない!
目の前にはドラゴン、絶体絶命の大ピンチだ。
さらにドラゴンは私目掛けて炎を吹こうとしている。
もうダメだ!
その時だった!
「エイリーーーン様!!!!」
リリーの叫び声と共に、辺り一面ものすごい光に包まれる。
私はもちろん、ドラゴンも目を瞑っている。
一体何が起こったの?
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