第11話 王妃様からお茶会に招待されました

前世の記憶が戻って早2年、私ことエイリーンは9歳になった。この2年間、とにかく頑張った。勉強・家族や使用人との関係・魔力アップなどなど…それもこれも今日という日を無事に迎えるために!


実は今日、王妃様とのお茶会に参加するため、お父様と一緒に登城する。ということは…前世の私の推しでもある、王太子カルロ様と初対面を果たす日なのだ。



あっ、でも今はまだ王太子じゃないのよね。何が何でも自分の息子を王太子にしたい王妃様。超が付くほど優秀なフェルナンド派(フェルナンドを王太子にしたい派閥)を黙らせるため、白羽の矢が立ったのがこの私なのだ。



貴族会で絶大な権力をもつフィーサー公爵令嬢でもある私と婚約すれば、カルロ様は王太子になれると考えている王妃様。今日のお茶会を成功させようと意気込んでいるはずだ。



まあどんな理由であれ、カルロ様に会えるんだもの、テンション上がらない訳がない。この日の為に珍しく新しいドレスを新調した(もちろん1着だけよ)


マナーもしっかりマスターした。魔力量もアップさせた、ってこれはまだ必要ないか。


とにかくこの日を誰よりも心待ちにしていたのよ、私は!!そう鼻息荒く意気込んでいると


「コンコン、失礼します」


メイドのリラだ。


「お嬢様、そろそろ登城する準備をしましょうね」


「ねえリラ、今日はとびっきり可愛くしてね」


そんな私の要望に、リラが笑いながら


「かしこまりました、でもお嬢様はいつもお可愛らしいですよ」


と言い、湯あみの準備を始めた。



あらリラ、相変わらずお世辞が上手ね。そう思っていると、数名のメイドが入ってきて、湯あみスタート。これでもかと言うくらい磨かれ、良い香りがする香油を体全体に塗りたくられた。


湯あみの次はドレスだ。この日の為に準備したのは、自分の瞳の色に合わせたエメラルドクリーンを基調とした、シンプルなドレス。



昔のエイリーンならもっとゴチャゴチャ飾りがついているものを好んで着ていたが、今の私はシンプルなドレスが好きだ。




髪はハーフアップにしてもらい、バラの髪飾りを付けてもらった。


鏡に映る自分を入念にチェックする。うん、可愛いぞ。自分で言うのもなんだが、エイリーンはそれなりにかわいい。



「今日のお嬢様は本当にお可愛らしいですよ、この姿を見たら第一王子様もきっとメロメロですわ」


リラが嬉しいことを言ってくれる。


でもカルロ様はきっと私にはメロメロにはならない…だって私は悪役令嬢なんだもん。


自分で言っておきながら悲しくなってきた。少し落ち込んでいると、ドアをノックする音が。


「お嬢様、そろそろ時間です。旦那様もお待ちです」


いけない、もうそんな時間か。


「今行くわ」


そう声をかけると、急いで玄関へと降りて行った。玄関にはお父様と、見送りに来てくれたお母様が待っていた。


「エイリーン行ってらっしゃい、王妃様に失礼のないようにね」


「はい、お母様、いってきます」


お母様に挨拶を済ませ、馬車に乗り込んだ。いよいよカルロ様とのご対面だ。緊張する。


固まってあまり話さない私を心配したのか、お父様が優しく話しかけてきた。


「エイリーン、緊張しているのかい?大丈夫だよ、王妃様はお優しい方だからね、気楽に楽しめばいいんだよ」



お父様はそういうけれど、夢にまで見たカルロ様との初対面、緊張するなと言う方が無理な話だ。そもそも王妃様って優しかったっけ、漫画ではいつもカルロ様に冷たく当たっていて、良いイメージないのよね。



そうこうしているうちに王宮に着いた。さすが王宮、とにかく広くて美しい。大学の卒業旅行で行ったフランスのベルサイユ宮殿に似ている。


そんなことを考えながら王宮の中を進んでいくと、ある扉の前で止まった。


メイドが先に入り、何やら話している模様。


ここに王妃様とカルロ様がいらっしゃるのね…


緊張で倒れそうだ。そうこうしているうちに、中に案内された。



中には金髪を腰まで延ばした美しい女性、その横には同じく金髪の髪に、スカイブルーの瞳の少年が立っていた。間違いない、カルロ様だ!漫画より少し幼いが、カルロ様だ!!!!



尊い…尊すぎる…神様、ありがとう!ダメだ、美しすぎて鼻血が出そうだ。1人パニックになっていると


「今日はお招きいただきありがとうございます。王妃様、第一王子様、こちらが娘のエイリーンです。」


お父様があいさつをした。


私も挨拶しなきゃ…


「お初にお目にかかります。エイリーン・フィーサーと申します。本日はお招きいただき光栄にございます」


2年間培ってきた渾身のカーテシーを決める。


「こちらこそ、今日は来てくれてありがとう。あなたがエイリーンちゃんね、とっても可愛らしいお嬢さんだこと。今日は私と息子2人だけだから気楽に楽しんでね」



「初めまして、フィーサー公爵、エイリーン嬢、私は第一王子、カルロ・オブ・アレクサンドルです。どうぞよろしく」


王妃様に続いて、カルロ様も挨拶をする。カルロ様がしゃべった!!!なんて…なんて素敵な声なの。


「エイリーンちゃん、カルロはあなたと同じ9歳なのよ。仲良くしてあげてね」


ええ、知ってますとも。それにしても王妃様ってこんな柔らかい感じの人だったっけ、漫画ではもっと冷たいイメージだったんだけどな。



「さあ2人とも座って、お茶にしましょう」


王妃様の掛け声でお茶会スタートだ。お茶会と言っても、私とお父様、王妃様とカルロ様の4人だけだけどね。



お茶会は終始和やかな?ムードで進んでいった。と言ってもお父様と王妃様二人がメインでしゃべっているから、私たち子供はちょっと退屈。たまに王妃様が私にも質問してくれたり、カルロ様に話を振ったりしてくれてはいるけどね。



「あらごめんなさい、大人ばかり話して、エイリーンちゃんやカルロは退屈よね。そうだわ、せっかくだからエイリーンちゃんにお庭を案内してあげたら?王宮のお庭にはいっぱいお花が咲いているのよ。そうしなさい、カルロ」


王妃様の提案に、カルロ様が「はい」と答え、私の方に寄ってきた。


「良かったらお庭を案内するから行こう」


カルロ様が私に声をかけてくれている。これは夢かしら、夢なら覚めないで!そんな妄想をしていると


「コホン」


お父様が咳払いをした。いけない、私ったら。


「うれしいですわ。ぜひ案内してください」


そういって、カルロ様と2人っきり(護衛とメイドはついてきている)でお庭へと向かった。

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