最終章 第23話

拓哉の実家から車で出て間もなく。


「自宅へ帰るんだよな?」


「うん。

明日仕事だし。」


「そうだよな。」


ちょっと拓哉が寂しそう。

でも朝から仕事だから、自宅でゆっくり寝てから行きたい。


「あー、もう早く一緒に暮らしたいな。」


「え?」


「帰らせたく無い。」


「そうだね。

一緒の家に帰れたら……ね。」


「だよな。

あと一年しないとなぁ……。」


「二十歳になってからって?」


「まぁな。

俺は二十歳だからいいけど、お前は未成年だもんな。

何かあっても責任取るけど。」


「そうだよね。

未成年だね、社会人なのに。」


「十八以上は成人にすればいいのにな。」


「確かに。」


もし本当に高卒で成人って事になったら、私はもう結婚してたかもしれない。


「来年は本社だっけ?」


「うん。

轟さんと一緒に。」


「そうだよな。

姉ちゃんが先で……って、来年結婚出来ないのか?」


「え?

どういう事?」


「同じ年にしたら御祝儀出せないかもって、誰かが言ってた。」


「え?」


「御祝儀減らされたら辛いな。」


「確かに多い方が助かるけど。」


まさかの御祝儀問題で悩んでしまうとは。

でも本社勤務でドタバタしてたら、結婚どころじゃないかな?


「本当に来年、姉ちゃんは嫁に行けるのか?」


「轟さん、沢山貯金していそうだし、するんじゃない?」


「でも忙しくて無理って言いそうじゃない?」


「そこは暇な内に計画的に……。」


「そうか。」


結局、最短で再来年結婚とか言われるのかな?

私は一緒に住みたいけど、やっぱり仕事もしたいから、ちょっとホッとした。


「俺さぁ、今は夜勤専門だけど、交代勤務か日中だけにしようかな?」


「え?

どうして?」


「本社は夜勤無いでしょ?」


「無いはずだけど分からない。」


「雪夏と生活サイクル合わないと、中々一緒にいられないよね?」


「そうだね。」


私達の今後はどうなるか分からない。

でもちゃんと話し合わないと……ね。


「もうすぐ家に着くよ。」


「うん、分かってる。」


「ヤダな。

マジで帰したくない。」


「帰るけどね。」


「あっさりしてるな。」


「だって、お腹がまだ痛いもん。」


「そうだったな。

腹巻きしておけよ。」


「もってない!」


「買ってあげようか?」


「いらないよ。

お腹締め付けられたら辛いし。」


腹巻きの話をしていたら、私の自宅に着いてしまった。


「着いちゃったな。」


「うん。」


「潔く帰るかな。」


「うん。」


帰りたくなくなるから、さっさと車を降りなくちゃ。


「ありがとう。」


「こちらこそ。」


車から降りる。

本当はもう少し一緒に居たいと思った。

でもそうやってズルズル長居すると、帰れなくなる。


「またね。」


「うん。

またね!」


車を見送る。

寂しい……。

でもまた会える。

拓哉も寂しいかな?

きっと同じ気持ちだよね。




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