第1章 第2話

どうして別れるって決めたのか。

それは……これから話そうと思う。


ちょうど一ヶ月位前。


「ねぇ、大丈夫なの?」


友達の栗田苑香くりたそのかが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。


「え?

何が?」


「だから、佐藤先輩の事。」


佐藤先輩こと、佐藤拓哉さとうたくやは私の彼氏。


「佐藤先輩?

いつも通りだけど?」


「え?

そうなの?

軽部先輩が心配してたよ?」


軽部先輩こと、軽部正輝かるべまさきは苑香の片思いの相手。

軽部先輩は苑香の事は恋愛対象じゃなくて、妹分だと思っているみたいだけど。

軽部先輩は佐藤先輩の親友でもある。


「何で心配?」


「うーん、言っていいのかな?」


「何?」


「軽部先輩が、佐藤先輩が受験全滅だったと言ってたよ?」


「え?」


「その様子だと、知らなかった?」


「うん……。」


何も聞いていない。

大学受験するって聞いてたけど、全滅だなんて知らない。

佐藤先輩はちゃんと勉強してたのに……。

私の宿題を教えるのも勉強って、いっつも丁寧に教えてくれてたのに。

あんな丁寧に分かりやすく教えられる人が受験失敗するなんて、あり得ないんだ。


「知らなかった事にしていい?」


「うん……ごめんね、余計な事を聞かせちゃって。」


「ううん、いいの。」


本当は知りたくなかった。

本人の口から聞きたかった。

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