第九十話「眠気覚まし」
それにしてもルーを持ち込んだ事、ノアは気づいてなかったな……
もし気づいていたら俺の召喚獣とは思わずに即殺されている。
「ふぁ~あ」
眠いな……
出航してからまだ8時間か。
この任務のポイントはいかに眠気に耐えるかだ。
港に着くまで24時間以上、ずっと見張りを続けなければならない。
モンスターの処理はルーに任せて体力を温存しようと思っていたが、暇すぎて逆効果だ。
カチンッ
船上に設置されたライトが船の先頭から流れるように点灯する。
そろそろ日が暮れる時間だ。
「ふぁ~……、んッ」
まずいな。
このままだと確実に寝落ちする。
……日が落ちたなぁ。
……仕方ない、働くか。
「ルー、戻ってこい」
俺がそう呟くと、作業クレーンの上でくつろいでいたルーが膝の上に戻ってくる。
俺はルーに席を譲り、手元にあった軽食の残りをルーにあげた。
バチャンッ
水が弾ける音と同時に、大きな黒い影が飛び上がる。
「<弱点感知>」
俺がそう言うと、空中でモンスターの核が暗闇の中でぼんやりと光る。
やはりこの<特能>は汎用性が高い。
俺は短剣の柄に手をかざし、モンスターが最高到達点に達するのを待つ。
トビウオ型にしてもマンタ型にしても揚力は持っているが推力は持っていないので狙うならばここだ。
「<雲雀>」
俺がそう言うと同時に、身体が一瞬にしてモンスターの頭上に移動した。
そして、モンスターに気配を気づかれぬまま頭を斬りつける。
短剣の刃はモンスターの肉を切り裂き、核にも亀裂が入る。
そして<特能>によって生み出された二撃目が核を両断した。
「よしっ、<リンフォル>」
核を失ったモンスターは俺と同時に自由落下していく。
俺は防御力を上げてから甲板の上に着地した。
「ふぅ……、大丈夫だな」
「やっぱり<魔法武器1>を使うまでも無かったな」
そう呟きながら甲板に穴が空いていない事を確認すると、再び見張り台の上に戻った。
形を留めることのできないモンスターは落下の衝撃でバラバラになり、全て溶けてしまっている。
俺はあの亀猿との戦闘で手にしたスキルポイントを合計400ポイントになるまで<短剣>に振り、新たな<特能>をいくつか手に入れることが出来た。
その中でも、ずっと欲しかった敵と距離を縮めることのできる<雲雀>やそれと相性の良い<不意打ち>、また短剣で斬りつけた一撃が体内で反射し二撃になる<連撃>はかなり使いやすく強い。
しかし<雲雀>に関しては発動した際に身体が急激に重くなるという現象が起こるので、使用する場所には注意が必要だ。
家でケイに対して初めて使ったら畳を踏み抜いてしまい、ヒナコに相当怒られた。
俺はグローブをしっかりとはめ直し、頬を軽く叩く。
夜明けまであと12時間。
……うん、これなら眠らずに済みそうだ。
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