第三十話「ナイフ」

「10-0、現在、地点B82」


「……10-4」

「……地点B82で待機せよ」


 任務時間の半分を過ぎてようやく2体か……

 マジで暇だな。


「アクティベイト」


 俺はスキルボードを開く。

 今のでSPが10ポイント以上になったはず。


 残りSPは丁度10か。


 この10ポイントは<貧者>ではなく武器ポイントに振りたい。

 というのも、いちいちモンスターに走って近づくのが面倒なので距離を縮める<特能>が欲しい。


 距離を縮める<特能>の種類はいくつかあるが、やっぱり背後に移動する系が良い。

 昨日もさっきも正面からではなく背後からの不意打ちで倒している。


 さすがに正面からではあのクソ鳥と同じ破目になる。


 その条件で短剣系となると、<ナイフ>、<ダガー>、<ククリ>のどれかになってしまう。



「……」


 俺は<ナイフ>にSPを10ポイント使った。

 上がるステータスもそうだが、なんといっても<抜刀>があるので<短刀>の良さも兼ね備えている。

 これならば、昨日失敗に終わった居合もできるかもしれない。


 俺はとりあえず<ナイフ>に10ポイント振って得た<短剣の心得1>を試すために持っている短剣を振り回してみる。

 そもそもこの武器がこの世界に短剣と認められるのか心配だったが、大丈夫のようだ。


 <短剣の心得1>の説明は[短剣が手に馴染む]というざっくりした物だったが、その効果はかなり良い。

 想像の10倍は手に馴染む。

 あまりにも自然で巧な短剣さばきに自分でちょっと感動した。

 これならば無理に<STR>にSPを振らなくても、なんとかなりそうな気もする。



 ……今日もあそこで白い狼が寝てるな。


 触ってみたいけど襲われたら怖いしな。


「……地点A80へ移動せよ」


「10-4」


 こんど餌でも持ってくるか……




「10-7、10-7」

「アレンより指令室へ」

「時刻16:03、任務を終了します」


 俺は片づけを終えて認識票を戻しにレゼンタックに戻る。


 今日は2体だったか……

 それもニワトリが二匹。


 もっとSPがほしいな……



「明日は……9時から1時か」


 早起きいやだな……

 午後から始まってほしい。


 帰りたくないな……



「あ、アレンさん!」

「お久しぶりです」


 レゼンタックから出ようと思った時、後ろから男の人に話しかけられた。


「あ、どうも」


 この人の名前なんだっけ……

 ケイが嫌いって情報しか覚えていない。


「ケイちゃんは元気にしてますか?」

「よかったらアレンさんたちが住んでいる所に寄ってもいいですか?」


 ……やば。

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