第十四話「共作」
壁に寄りかかりながら座って待っていると、ノアは両手に色々な物を抱えて建物から出てきた。
「アレン!ちょっと鞘を貸してみろ!」
俺は短剣を抜き、鞘をノアに投げ渡す。
ノアは鞘を持って武器庫に入ったかと思えば、大小さまざまな三種類の武器を持って出てきた。
俺は短剣を左手で振る練習をしながらノアを観察する。
「うーーん……」
「アレン、ちょっと手を貸せ!」
「なに?」
俺がノアの近くに寄ると、ノアは俺の右手をグイっと引っ張った。
そして、ノアは俺の右手に三種類の武器を何度かあてがう。
ノアが持ってきた武器は、どれも持ち手にナックルガードが付いた物だった。
「よし、もういいぞ!」
ノアは俺の手を離すと、小型のサーベルのような武器を除いて遠くにはじいた。
バキンッ!!
何が起こるのか気になってノアの手元を見ていると、ノアが突然サーベルのナックルガードを捩じって分解した。
どうやら接着部分は二つの輪っかで固定されていたようだ。
というか、そこってそんな簡単に外れちゃダメだろ……
ノアは次に、鞘に輪ゴム?を何本か付けると、ナックルガードを鞘に当てながら、二つの輪っかが当たる部分に位置を調整する。
なんか、説明も無しに淡々と事が進んで少し怖い。
「おい、アレン!」
「鞘を構えてみろ!」
俺はノアに鞘を渡されると、弧の内側を腕にくっつけるように、逆手でそれっぽく構えてみる。
「違う!」
「逆だよ!逆!」
ノアは短剣の周りを人差し指で一周回した。
「う、うん……」
俺は戸惑いながらも弧の外側を腕にくっつけるように、鞘を回転させて構え直した。
「うん、大丈夫そうだな」
「返せ!」
ノアは俺から鞘を力ずくで奪い取った。
「今からここに新しい持ち手をつけるが良いか?」
ノアはそう言いながら、鞘にナックルガードのような曲線を指で描く。
ここまで来て、やっと説明が入った。
……どうなるか分からないが物は試しだ。
「うん、いいよ」
俺が返事をすると、ノアはナックルガードの二つの輪っかに鞘をぐりぐりと押し込み、ゴムをはめた位置まで動かす。
「ふんっ……」
ギュギュギュリギュチギュチチチ……ギュギュギュリギュチギュチチチ……
ノアは輪っかの部分を持って、圧をかけながら鞘を小刻みにねじり始めた。
それをある程度すると、同じことをもう一方の輪っかの部分でも行った。
摩擦で熱されたゴムの匂いが鼻に刺さる。
「ふぅー!ふぅー!ふぅー!」
ノアは小刻みに捩じる工程を終えると、輪っかの部分に息を吹きかけて冷まし始めた。
よく見ると接合部分からドロッとした液体が溢れている。
「うーん……」
ノアは首を傾けながらナックルガードに何度か力を加えて固定されたことを確認すると、輪っかの固定部分を脇に置いてあったテープで補強し始めた。
固定部分に五周ほどテープを巻くと、次に脇に置いてあった違うテープでナックルガード部分をまんべんなく二周、巻いた。
「よし、出来たぞ!」
「構えてみろ!」
ノアはそう言うと、俺に改造した鞘を渡した。
鞘には少し熱が籠っている。
俺はナックルガードに親指以外の指を通し、鞘の本体を握って構えた。
グローブを付けているとかなりギチギチだ。
「持つところが違う!」
「新しい持ち手って言っただろ?」
「……あ、そっち」
俺はナックルガードから指を抜き、四本の指を違う方向から入れ直すと、ナックルガード部分を握るように構えた。
「いいじゃないか!」
ノアはそう言うと、近くにバラまいた道具を遠くの方にどかして槍を持つ。
俺はとりあえずホルスターに鞘が収まるか確かめた。
カチンッ
うーん……
なんだか思ってたのと違うけど……まぁいいか。
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