第十一話「最強化計画」

「俺、この世界で無双できるんじゃね?」


 喜びのあまり、つい口からこぼれてしまった。


 俺のロマンを実現するには、最低7つのスキルを最大まで上げたい。


 スライム1体でスキルポイントが1貯まるなら……毎日20体倒すとして……一つのスキルのポイント上限が1000だから……


「50日で1つ……ということは一年か」


 時間はかかるがこの村で最強を目指してもいいかもしれないな。


 いや、最強になるまでこの村を出ないぞ!!


 俺は、昼だけでなく、朝にもここに来ることを心の中で決めた。



 そろそろ帰るか。

 オムさんに昨日の話の続きも聞きたいしな。


「ケーイ」

「休憩終わったから帰るぞー」


 俺はケイたちを呼び戻す。

 すると、びしょ濡れのケイたちが笑顔で川から出てきた。


 嫌な予感がする……


「おんぶ!」


 ケイが俺に向かってびちゃびちゃの手を差し伸べてくる。


 予感は的中した。


「噓でしょ?」


「約束でしょ!!」


 ケイが俺に詰め寄ってくる。


 ……約束した覚えはないんだけどな。


 しかし、拒否して泣かれても困るので、俺はケイをおんぶする。

 じわじわと染みてくる水の冷たさを感じながら、背中の上ではしゃいでいるケイを村まで運んだ。



 俺は村の入り口でケイを降ろすとオムさんの家へ直行で向かった。



 ガチャ


 中に入ったがオムさんの姿が見えない。


「オムさーん」「オムさーーん!」「オムさーん?」


 数回名前を呼ぶと、奥の部屋から埃まみれの小さなトロフィーのような形をした物を持ってオムさんが出てきた。


 自慢話でも始まるのかな?


「倉庫の奥からいいものを見つけたぞ」


 オムさんはニコニコしながらその小さなトロフィーを俺に渡す。


「名前は忘れてしまったが、これはレベルを測れるものだ」

「飲む人のレベルによって味が変わるから大体のレベルが分かるぞ」


 どこか得意げにそう言いながらオムさんはトロフィーにもう片方の手で持っていた水を注ぐ。


「……あの、埃まみれなんだけど」


 俺は渡されたトロフィーをオムさんに返そうとする。


「全て飲み干せと言っているのではない」

「一口ぐらい我慢して飲め」


 オムさんはニヤニヤしながらトロフィーを押し返す。


「……ふぅー」


 俺は息を吹きかけ、浮いている埃を端に寄せた後、水を丁寧にすすった。


「なんも味しないですけど……」


 俺は口に付いた埃を拭い、オムさんにトロフィーを返す。


「おかしいな」

「古くて使えないのか?」


 オムさんが首を傾げながらぼやいている。


「オムさんが飲めば分かるんじゃないですか?」


「嫌だ」

「汚いだろ」

 

 オムさんは窓から残った水を投げ捨てた。


「……このクソじじい」


 俺はうつむき、小声でつぶやく。


 イラつきが心の底からこみ上げてくる。

 しかし、力ずくで飲ませるのは今の俺の力では不可能に近いので諦めた。


「何か言ったか?」


 オムさんがとぼけた顔をしながら顔を覗いてくる。


「ケイとカイの職業の事について教えてくださいよ」


 俺は冷静を装い、話題を変える。


「うむ、何から話そうかのぉ」

「……」

「二人の母親の職業は<聖騎士>だった」

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