第八話「惨憺」
「うぅっ……」
息が出来ず、俺は床にうずくまる。
「おぉ、すまん」
「少し力が強すぎたようだな」
村長さんは俺に申し訳なさそうな顔をしながら手を差し伸べる。
「なんだよ」
俺は愚痴をこぼしながら涙目でオムさんの手を握った。
「アレンよ、その花を見なさい」
手に持っていた花を見ると10枚あった花びらが6枚になっている。
「この花は戦地に向かう者が携帯するものだ」
「戦地では多くの兵士が野戦病院に運ばれる」
「その際、治療の優先順位を決める指標となるものだ」
「そして、その花びらの数が所有者の残り<HP>の割合を表している」
……なにか嫌な予感がする。
「今、お前の<HP>は4割減った」
「それも<村人>の私が軽く小突いただけでだ」
話を聞くと、村長さんの<ATK(攻撃力)>は60程度だと言う。
その上でオムさんは半分くらいの力で俺を小突いた。
単純な物理攻撃の場合、<ATK>から<DEF(防御力)>の数値を引いた値が<HP>から減るらしい。
そのことから考えると俺の<HP>の値は40~50、<DEF>の値は20~30くらいが妥当であり、この値はレベル6の<村人>と同等の数値だと教えてくれた。
そして、レベル6の<村人>とは10歳に満たない子供でも簡単になれるらしい。
俺は視界から明度が落ち、立ち眩みした。
スライム10体でレベルアップしないということは、それなりのレベルで転移したのかと思ったのだが、その考えは甘かった。
「スライムを倒してレベルアップの声が聞こえないということはアレンは高レベル、もしくは上級職より上の職業かもしれない」
「しかし、この世界では<鑑定士>に鑑定してもらう以外に職業を知る方法は無い」
「その中でも<職業鑑定>を使える者は少なく大体が国や貴族のお抱えとなっている」
「……とりあえず、明日もケイたちと遊びに行くがよい」
村長さんは一通り話し終えるとこの場を立ち去ろうとする。
「……」
「この村の近くには強いモンスターはいるんですか?」
この質問だけはしておかなければならない。
命に係わる事だ。
「この地域には不思議とモンスターが少ない」
「いるのはスライムぐらいだ」
「洞窟に行けば違うやつもいるが殺されることはないだろう」
村長さんが笑顔で答えてくれたので、少し安心した。
気持ちの余裕ができたところで村長さんの足を止め、この世界の事についてさらに聞くことにした。
この世界はいくつかの大陸と国に分かれており、ここはセントエクリーガ国に属するウォロ村というらしい。
人口は40人ほどだ。
そして、まだこの国に文字が普及していなかった頃、甦人がセントエクリーガの国王になった時期があり、そこから英語が広まったという。
セントエクリーガはこの大陸の3分の1を国土としているため余程遠くへ行かない限りは英語が通じるらしい。
言語スキルにポイントを振らなくて済むのは正直とても助かる。
「それと、この村の住民はケイとカイを除いて<村人>だ」
そのオムさんの言葉に、俺は少し疑問を抱いた。
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