短編集

@mimiko68

君はヤモリが好きだった

「ねえ!ほら!ヤモリ!」

5月の夕方散歩に行けば、君はヤモリの話ばかりだ。

壁這うヤモリを眺めては、可愛い、飼いたい、でも捕まえるのは可哀想だね、と笑う。

僕はそんな姿をずっと見ていたいと思った。


5月の夕方散歩に出た僕は、壁這うヤモリを見つけた。

君が笑う姿を思い出す。

隣に立っているようだ。

幻でいいからもう少しだけ側にいてほしい。

今はもういない君を感じさせてほしい。

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