第四十話 お買い物

「さて、と・・・、ここがアティリア大通りなんだけど、

実を言うと私もあれこれ紹介できるほど詳しいわけじゃないのよね」


「えっ、そうなんですか? でも、いつもお買い物はここだって・・・」


「買うのは食べ物に服に雑貨くらいだから、決まったお店でばかりお買い物していたの、

だけど今日は折角マモルくんと来たことだし・・・、

いつもは行かないお店にも行ってみましょうか?♪ そっちの方が楽しそうね♪」


「じゃあ、今日はいっぱい楽しみましょうね♪」


「ええ♪」



 入口の手前でそこまで詳しくないと言われましたが、

むしろ知らない場所を探検する気持ちが強まったのか

守くんはますます楽しそうな笑みを浮かべます


 加えて、アミーお姉さんと一緒にそれができることを

無意識のうちに期待しているのかもしれません



「だけど、とりあえずは必要なものを買える場所くらいは知っておかないとね、

というわけで、まずはあそこに見えるお店へ行くわよ♪」


「はい、分かりました♪」



 そう言いながら歩き出すアミーお姉さんの隣を歩きながら、

守くんは少しあちこち見回してみます


 普段の道に比べて少し足元はしっかりしていて、

人通りもかなり多く感じられました


 はぐれないよう気を付けなければいけないと考えながら

ほどなくして目的の場所に到着します



「とりあえずはここね♪ 私がいつも必要なものを買っている場所よ♪

食べ物から雑貨まで一通り揃ってるから、どこに何があるか一通り見てみましょうか♪

それに、興味のあるものがあったら買ってみてもいいわよ♪」


「わぁ♪ 楽しみです♪」



 守くんはアミーお姉さんに連れられてそのまま中へ入ります


 お店の中は思ったより狭く、

所狭しと商品が並べられているみたいでした


 一番近い場所には、どうやらこの世界の食料品、

エネレーが売られています



「ほら、ここから向こうまでは全部食料売り場よ、

何か食べたいものがあったら買ってみましょうか♪」


「ありがとうございます♪ じゃあ、何にしようかな・・・♪」



 守くんは楽しそうに並べられた商品を眺めてみました


 ある程度は種類別にまとめられているらしく、

普段お家でもよく食べているハンバーグ味のやステーキ味のエネレーが見つかりました


 そこから少し視線をずらしてみると、焼き魚味や野菜炒め味なども置かれています



「あ、お魚や野菜の味もある・・・、お姉さん、これ買ってもいいですか?」


「どれどれ・・・? 魚・・・、野菜・・・、ま、マモルくん、本当にこれでいいの?」


「はい♪ お魚や野菜も久しぶりに食べたいです♪」


「そ、そう・・・、じゃあ、これとこれ、でいいかしら?」


「? 1個ずつだとお姉さんの分が・・・」


「あ、そうだったわね、じゃ、じゃあこれとこれを2つずつ・・・、

そうそう、向こうには果物なんかもあるわよ?」


「じゃあそっちも見てきます♪」



 守くんが普段は食べていなかった味のエネレーを買うと言い出したところ、

アミーお姉さんの顔に少し困ったような笑みが浮かんでいました


 どうやら、お姉さんはお肉に比べてお魚やお野菜の味は好きではないらしいのですが、

守くんは特に気付いていません


 そのまま果物味の方も覗き、そこでもまだ食べていないものを買うと

今度は別のコーナーへ進んでいきます



「それじゃ、今度は服や雑貨なんかを見てみましょうか♪

予算はまだまだあるから気に入ったものがあれば言ってごらん♪」


「はい、ありがとうございます♪ えっと、これで全部なのかな・・・」



 楽しそうに服などの売り場へ案内してくれたお姉さんですが、

壁にかけられたものや棚に置かれているものを見た守くんは

分かりやすく興奮が冷めてしまいます


 というのも、そこにあるのは色や大きさを除けば

ほとんど変わり映えのしないものばかりだったのです


 元の世界にあったような機能性やデザインの違いはおろか、

何かのキャラクターが描かれたものや模様が描かれたようなものすらありませんでした


 守くんはふと、防具の形状や道行く人たちの来ている服が

ほとんど同じだったことを思い出します



「マモルくんはどの色がいいかしら? サイズはまだ変える必要がなさそうだけど・・・、

折角だからいろいろ見ていいわよ♪」


「あ・・・、えっと、じゃあ、そこの黒い色の服、がいいです・・・」


「あれのこと? いいわ、このくらいなら買ってあげる♪

向こうに歯ブラシやスリッパなんかもあるし、見てみましょうか♪」


「は、はい、ありがとうございます」



 もちろん、どれを選んでも大した違いはないなどと

嬉しそうなお姉さんに言えるはずもなく、

守くんはひとまず無難そうな色の服を選んで買ってもらいます


 その後も日用品をいくつか購入し、

ひとまず買い物は充分にできました



「あの、自分のなんだし、荷物は僕が持ちます」


「いいのいいの♪ こんなの軽いんだから♪

それより、これで必要なもののある場所は分かったかしら?♪」


「あ、はい・・・♪ いろいろあって楽しかったです♪」


「良かった♪ それじゃあ目的のお買い物は済んだけど、、

まだ時間はあるし・・・、試しに別のお店も見てみようかしら?♪」


「はい♪ 他にはどんなお店があるんでしょう?♪」


「ここ以外はほとんど見たことがないんだけれど・・・、

確かここにはない高級品を売ってるようなお店もあったはずね、

・・・そこで何か買うかは別として、見るだけ見てみるかしら?♪」


「行ってみたいです♪ 何を売ってるんでしょうか・・・♪」


「それは見てからのお楽しみってことね、じゃあ行きましょう♪」



 なんだかんだ言いながらもそれなりに買い物を楽しめた守くんと、

ひとまず必要な物を買ったアミーお姉さんはお店を出て

通りを奥へ進んでいきます


 そこでもまた、守くんはこの世界の文化に

少しだけ触れることになるのでした・・・


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