旅人

 Side 狹山 ヒロト


 ここは色んな人がよく訪れる。


 ロボットとかも訪れる。


 今日は傭兵だ。

 

 ガスマスクにヘルメット。

 茶色い外陰。

 強そうなオーラが半端ない。

 

 移動手段のバイクの後ろには荷台が連結されていて重たそうに色んな物を乗せている。


『色々と取引できると聞いてここに来た』


「と言っても食料と水ぐらいですよ」


『こっちには武器と弾薬がある』


「じゃあそれで」


 シンプルなやり取りでぶつぶつ交換する。


 日本に居た頃ではまず考えられないことだ。


『ここで一泊できるか?』


「はい。空いている場所は沢山ありますので」


『わかった』


 どうやら一泊していくらしい。


 まあこれも珍しい事ではない。



 自分は旅人と会話していた。

 この世界において一番の娯楽だ。


「坊主は何時からここに?」


 ガスマスクとヘルメットを外すと外国の映画に出てきそうな整った顔立ちの金髪のオジサンの顔が現れた。

 名前はヴァンと言うらしい。


「大分前から」


「ここの設備は元からか?」


「あーそれは――」


「すまんな。言いたくなければそれでいい」


「いえ、こちらこそ」


 言おうか迷ったが深く聞くのを止めてくれた。

 親しき仲にも礼儀あり。

 この世界に生きていくための基本鉄則だ。


「ヴァンさんはどうしてここに?」


「こんな世の中だ。取引先は多い方がいい」


「なるほど」


 信頼出来る人間は多い方がいいのは当然だ。


「野盗連中は倒しても倒してもキリがなく現れるからな。そう言う奴に限って色々と溜め込んでるから商品の仕入れは困らん」


 つまり今日自分が仕入れた武器はそう言う奴なのだろう。

 この世界では別に珍しくはない。


「自分は基本、食料と水が主力商品ですから武器だらけです」


「人を雇った方がいいんじゃないのか?」


「ではアナタを雇えばいいんですね」


 と、言ってみるが。


「正直ここは静かすぎる。休暇で骨休めしたい時に雇ってほしい」


「じゃあそれで」


 あまり欲をかいてはいけない。

 これもこの世界で生きるため秘訣だ。


「話の分かる人間でよかったよ」


「無理強いはよくありませんから」 



 一夜明け、朝になる。


 あっと言う間にお見送りの日。


『じゃあな。生きてたら会おう』


「はい。生きてたら」


 生きてたら。


 この世界では死は隣合わせのような物である。


 荷台付きのバイクに乗ったヴァンは去って行った。


 自分は野良仕事に戻ることにする。

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