衝撃のクラス分け

 新学年。

 いよいよ、僕は高校2年生となる。

 朝、いつものように起床し、制服を着て学校に行く準備をすると、自分の部屋を出た。

 そして、朝食を食べにダイニングへ向かう。

 そこでは、妹の美咲が朝食を取っていた。

 妹も今日から中学3年生だ。


「あっ、お兄ちゃん。おはよう」


「おはよう」


「クラス分け、楽しみだなー」

 妹は嬉しそうに言いながら、パンを食べる。

「のぞみん、はるるん、りおっちが一緒だといいなー」


「この前のパジャマパーティーの4人だっけ?」


「そうだよ。お兄ちゃんは、一緒になりたい人いないの?」


「そうだな…、まあ、いるけど…」

 毛利さん、雪乃、悠斗あたりが一緒だといいのだが。


 2年生は文系理系別で、さらに成績順でのクラス分け。

 僕は文系を選択。他の3人も文系を選択したようだ。

 しかし、僕は中の上の成績。

 毛利さんは文系教科の成績は僕より上で、雪乃の成績は僕より下だ。

 悠斗はサッカー一筋で、勉強はさほど力を入れてないから成績はいまいち。

 なので、3人と一緒のクラスになるのは望み薄なのだ。

 そうなると、他に話をする友達もいないので、ぼっち確定かな…。


「どうせ、白雪姫と一緒になりたいと思ってるんでしょ?」

 妹が絡んできた。


「い、いや。そんなことはない」

 僕はごまかした。


 妹は話を切り上げて、家を出て中学に行ってしまった。

 僕も朝食を取って、徒歩5分の学校へ向かう。


 新学年といえば、桜の季節である。

 学校の敷地内に植えられている桜も咲いていて、そろそろ散り始めている。

 地面が桜の花びらでピンク色。


 校舎外の掲示板付近に、生徒たちが集まっていた。

 そこの掲示板に新しいクラス分けが掲示されているのだ。

 人だかりで近づけず、全然見えない。

 少し人が減るのを待って、少し前に進んだ。

 その時、よく知った声で名前を呼ばれた。


「純也!」

 振り向くと、近くで雪乃が手を振っていた。

 その隣には毛利さんもいた。


 2人のそばに近づいて、挨拶をする。

「おはよう」


「純也! 私たち、同じクラスだよ!」


「えっ?!」

 全くの想定外で、かなり驚いた。

「マジで?!」


「マジだよ」


「でも、雪乃の成績って…」


「純也。私のこと、バカだと思ってるでしょ?」

 雪乃はちょっと睨むようにした。


「いやいや…」

 雪乃の成績、以前見た時、150人中の100何十位だったよな?


「だって、2学期の期末から、理系の勉強は捨てて、文系の勉強をかなり頑張ったからね。歩美に教えてもらってたし」


 確かに、その頃から、『理系の勉強を捨てる』とか言ってたし、僕に数学とか物理とか教えてくれって言わなくなっていた。

「そ、そうだったんだ」


「で、毛利さんは…?」

 毛利さんなら、文系で一番上のクラスに入れそうなのだが。


 僕の質問に雪乃が答える。

「歩美はね、純也と一緒のクラスになりたいから、テストでは手を抜いてたんだよ」


「ええっ?!」

 そこまでする?

「本当に?」


「う、うん」

 毛利さんは恥ずかしそうにうなづいた。


「でも、将来の進学とかに影響が出ない?」


「大丈夫。成績別クラスでも、授業の内容はほとんど変わらないから」


「そ、そうなんだろうけど…」

 毛利さん、自分の人生をちゃんと考えたら…、って僕も何も考えてないけど。

 まあ、毛利さんがそれでいいなら、いいや。本人の事だしな。

 それ以上は、突っ込むことはしなかった。

 そこまでしてもらえて、うれしいというか、ちょっと複雑な気持ちになった。

 でも理由はともかく、雪乃と毛利さんとクラスが一緒で少し安心した。


 僕は、人が少なくなってきた掲示板にさらに近づいて、一応、クラスの確認をする。

 張り紙を見る。

 2年D組に僕の名前があった。

 念のため雪乃と毛利さんの名前も確認する。

 織田雪乃。

 毛利歩美。

 ちゃんとある。

 そして、最後に担任の名前を見て僕は衝撃を受ける。


『担任:島津綾香』


 まさかの歴史研究部兼卓球部顧問の島津先生が担任だと?

 ということは、ほぼ毎日顔を合わせるということだろうから、毎日のように卓球部に勧誘されたりするんだろうか?

 そうなるとすると、気が重いな。


 げんなりしている僕の様子を見て、雪乃が心配そうに声を掛けてきた。

「純也、どうしたの?」


「い、いや…。大丈夫、何でもない」


「じゃあ、体育館で始業式が始まるから、行こう!」


 雪乃は僕の腕を引っ張り、毛利さんも僕らに続いて体育館に向かう。

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