パジャマパーティー~その1
金曜日。
終業式。3学期もあっという間に終了。
3学期も色々あったな。
登校して終業式に参加。
校長の有難い長い話を聞き終えると、教室に戻り通知表をもらう。
通知表の内容は、2学期同様、中の上というか上の下。
2年生になったら、1年の時の成績別になるという。
ということは、真ん中あたりのクラスになるんだろう。
以前の想定だと、毛利さん、雪乃、悠斗は別のクラスになってしまいそうなのだ。
よく話をする友人たちが、すべて別クラスになりそうなので、あまり、明るい2年生にはならなさそうだな。
まあ、仕方ないので諦める。
通知表が配り終わると、午前中には放課となった。
歴史研の部室にはいくつもりはないので、毛利さんに別れの挨拶をすると、早々に帰宅した。
自室で部屋着に着替えると、昼ご飯でも食べようと台所に向かう。
ダイニングテーブルに手紙が置いてあるのが気が付いた。
母親からだ。
「食べ物が何もないから、これで適当に買って、美咲と食べて」
という内容の手紙とともに、千円札が2枚置いてあった。
妹と2人で2千円か。
ちょうど、その時、妹が帰宅した。
中学も今日は終業式だから、帰宅が早い。
妹だけでなく、セーラー服姿の何人かが、ぞろぞろダイニングルームに入って来た。
「お兄ちゃん、ただいまー!」
妹を先頭に、前田さんとその他2人。
その他の2人も見たことあるな…。
どこで会ったんだっけ?
そして、みんな、大きなカバンを持っている。
「お兄さん、こんにちはー」
前田さんが挨拶してきた。
「「こんにちはー!!」」
その他2人も挨拶をする。
「お、おう、こんにちは」
「「お久しぶりです!」」
その他2人が挨拶してきた。
1人は、背が高くて、ショートボブ。何故かがっしりした体格。
もう1人は、背はさほど高くないが、両サイドの2つ結びに赤い大きなリボン。
僕は尋ねた。
「えっと…、どこで会ったんだっけ?」
「学園祭ですよー!」
ああ、そうか。
思い出したぞ、去年の学園祭の時に妹と一緒に、歴史研の出し物“占いメイドカフェ”にやって来た友達たちだ。
あのときは、彼女らは僕を見て、嘲笑して、落胆して、ディスったんだっけ。
その時のことを思い出して、ちょっと不機嫌になった。
「あの時、君ら、僕に会った時、馬鹿にしてたでしょ?」
「そんなことないですよー」
前田さんが言う。
「お兄さんに会えたので、嬉しくて思わず笑っちゃったんですよー」
「本当かよ」
長身ショートボブは言う。
「メイドカフェっていうから、お兄さんもメイドの格好しているのかと思ったら、違ったので落胆したんですよ」
「僕は、女装しない」
赤いリボンは言う。
「“お兄さんに似なくてよかったね”、というのは本心です」
「ひでーな」
まあ、いつも言われているから良いけどな。
「お兄さんは、カッコいいですよー」
前田さんがフォローを入れてくれた。
いい娘だなあ。
「それより、名前、何て言うの?」
僕は尋ねた。
「ボクは、丹羽です」
と長身ショートボブ。
なんだ。ボクっ子か。
「私、溝口」
と赤いリボン。
「よろしく…。それで、今日はみんなで、うちに遊びに来たの?」
「今日は、お泊り会だよ!」
妹が言った。
「パジャマパーティーですー!」
前田さんが嬉しそうに付け加えた。
「え? そうなの?」
ということは、3人は明日までずっと家にいるのか。
大きなカバンを持っているのは、お泊りセットということだな。
「それより、お昼ご飯どうするつもりなんだ?」
僕は、さらに尋ねた。
「えっ?! 何も食べる物ないの?」
妹が尋ねた。
「何もないらしい」
僕は、母親の手紙を妹に見せた。
「2千円で、5人分はどうだろう?」
「近所のスーパーでカップ麺でも買ってくるか?」
「折角のパジャマパーティーなんだから、お兄ちゃん、なんか作ってよ」
妹が言った。
「いや、まだ昼間だし」
「パジャマパーティーはもう始まっているの!」
妹が意味不明なことを言い出した。
「「「作ってくださーい」」」
嫌がる僕を無視するように、あふれんばかりの笑顔で催促する、前田、丹羽、溝口。
「学園祭の時みたいにオムライスがいいです!」
丹羽がリクエストしてきた。
「「「いいねえ」」」
他の女子全員が同意する。
押し問答が面倒なので、僕は承諾する。
「しょうがないなあ…。じゃあ、美咲、お米はあるみたいだから、炊いといてくれよ」
僕は妹にそう依頼すると、2千円を手に近所のミニスーパーに向かう。
念のために、スマホでオムライスの材料の確認をする。
何とか2千円で収まるように材料をミニスーパーで買い帰宅、お米が炊きあがるのを待って久しぶりにオムライスを作り始める。
まず、チキンライス。
鶏肉を小さくカットする。玉ねぎをみじん切り。
フライパンに油を引いて火にかける。
フライパンが熱したら、先ほどみじん切りした玉ねぎと鶏肉を入れる。
ヘラで混ぜながら炒める。
鶏肉と玉ねぎに色が変わったら、塩コショウを少々振りかける。
そして、ご飯を投入。さらに混ぜながら炒める。
ヘラでご飯を崩しながら、かき混ぜて熱する。
ケチャップをかけて、ご飯をさらにかき混ぜる。
十分に炒めたら、一旦火を止め、フライパンからボウルに移しておく。
卵、別のボウルに卵2個を割って入れる牛乳と塩を少々、投入。
黄身と白身が十分に混ざるまでかき混ぜる。
フライパンに油を引いて火にかける。
フライパンが熱したら、卵をフライパンに流し込んで広げる。
そして、菜箸でかき混ぜる。
卵が少し固まったら火を止める。
チキンライスをフライパン手前半分に盛る。
そして、ヘラで卵を被せる。
フライパンを傾けて、オムライスを皿にのせる。
久しぶりのオムライス作りだったが、身体が覚えている。
僕と女子4人分のオムライスが完成。
ダイニングテーブルに皿に盛ったオムライスを並べて、女子たちに食べさせる。
僕もリビングルームのソファに座ってオムライスを食べる。
文句も言われず無事に食べ終わって、4人とも満足しくれたようだった。
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