わたし彼氏をシェアしてた

 引き続き、冬休み。

 残りの数日を、部屋でゴロゴロしてのんびりとしていた。

 たまに雪乃や毛利さんや細川さんから短いLINEが来る程度。

 僕は、ベッドに寝転がってマンガ読んだり、スマホいじったり、たまに妹が部屋にやって来て茶々を入れて来るので、その相手をしたりしている。


 そんな日々が続き、冬休み最終日=成人の日。

 成人ではない僕には全く関係がないので、やっぱり部屋でのんびりしようと思っていたが、毛利さんが僕の部屋に来る予定。

 なんでも、新しく書いた小説の感想を聞きたいとのことだ。


 そして、午後に毛利さんがやって来た。

 彼女を僕の部屋に招き入れる。

 そして、いつものようにローテーブルの横に座らせる。

 僕も座って早速、小説を見せてもらう。


 彼女はA4の紙を数枚取り出した。

 今度の作品は、なんでも、新聞部部長の片倉部長に頼まれて、学校新聞に掲載する小説の連載を2月号から、しばらく掲載することになったらしい。

 その2月号分だという。


 早速、読んでみる。

 内容は普通の恋愛小説。

 以前、読ませてもらった小難しい物とは打って変わって、読みやすい。そして、なかなかいい話だと思った。


 僕は正直に感想を言う。

「とても、いいと思うよ。前に読ませてもらった物に比べて格段に良いよ!」


「そう、よかった」

 毛利さんは、嬉しそうに笑った。


「片倉部長には、いつ連載を頼まれたの?」


「一番最初に相談されたのは、合コンの時」


 そうだった、以前やった歴史研究部の合コンのとき、毛利さんは片倉部長と隣り合った席だったな。そんなこと言ってたっけ。

 しかし、合コンで何の話をしてるんだ。


 そういえば、合コンで1回席替えした後は、毛利さんは悠斗と一緒になったんだっけ。


「合コンの時、悠斗とは何を話したの?」


「秘密」


 そうか、まあ、そうだよな。

 そもそも、毛利さんは秘密主義だしな。


「そういえば、3,4日前、悠斗が遊びに来てたよ」


「遊びに?」


「そう。悠斗がVRゴーグルを買ったのでそれを見せてくれたんだ」


「VRゴーグル?」


「えーと、まあ、ゲーム機の一種かな。こう、頭にかぶってバーチャル映像を見ながら遊ぶんだ。本当にゲームの世界の中に入ったみたいで、なかなかすごかったよ。僕も買おうと思ってる」


「ふーん」


 反応薄いな。

 まあ、毛利さんはゲームに興味ないだろうからな。

「まあ、機会があったら、体験してみてよ」


 その後も少し世間話をする。


 毛利さんが話題を変えた。

「ねえ。この前、雪乃ちゃんの家に泊まった時、雪乃ちゃんとキスしたでしょ?」


「え…、なんで知ってるの?」


「雪乃ちゃんに聞いた」


 雪乃と毛利さんは仲がいいからな、情報は筒抜けだ。

「まあ…、したけど…」


「私とは、したことないのに」


「えっ?! まあ、確かにそうだけど…」

 僕は、この機会に疑問をぶつける。

「あのさ…、毛利さんと雪乃って2人して僕のこと好きって言ってくれるけど、2人の間でケンカになったりしないの?」


「それは大丈夫」


「なんで?」


「協定を結んでいるから」


「協定?」


「武田君がどちらかを選んでも、恨みっこ無しって。それまでは2人で武田君をシェアしようって」


「はあ? シェアって、共有ってこと?」


「うん」


 なにそれ…。

 それで、2人して僕に迫って来るって事?

 2人はそれでいいのか…?

 しかし、最近は僕も彼女らと付き合ってもいないのに、H なことをしようと企んでいるからな、あまり人の事を言えない。

 よく考えると、毛利さんとも、雪乃ともイチャついても2人は文句言わないってことなんだろうからな。ということは、僕にとってメリットしかない。

 これまで、奴隷とか、散々だったから、今年は快楽を追求してやろう。


 それにしても、僕が2人のうち、どちらも選ばない可能性もあるだろうに。

 その時は、どうするんだろうか?

 すんなりと諦めるのかな?


「それで…」

 そう言って、毛利さんは僕に近づいてきた。

 これは、キスしたいんだな…。

 だが、しかし。


「ちょっと待って」

 僕は立ち上って、部屋の扉を開けた。

 案の定、妹が立っていた。手にはジュースの入ったコップが2つ乗ったトレイを持っている。


「おい」

 僕は妹を睨みつけた。


「あ…、あははは…、ジュース持ってきたよ」

 妹は笑って誤魔化す。


「おう、ありがとう」

 僕はトレイを奪い取るようにすると、扉をバタンと閉めた。

 そして、ローテーブルにコップを置く。


「ああやって、妹が盗み聞きしているから、あまり部屋でイチャつくのはやめとこう。また今度、別の場所で」


「う、うん」

 毛利さん、ちょっと不満そう。


 もうしばらく、毛利さんと世間話をして、しばらくして彼女は帰宅した。


 その後は、再びのんびりする。


 明日は始業式。

 今後は歴史研究部に行くのもそこそこにして、今度こそ、幽霊部員になってやろうと決意した。

 先日、松前先輩にお悩み相談をしたときに、上杉先輩と物理的に距離を置くのが良いというアドバイスをもらったからな。その通りにする。

 そう決意をして3学期に臨む。


 今後は快楽を追求するし、明るい展望が待ち構えているぞ。

 ざまーみろ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る