お泊り会

 雪乃の家のリビングルームのソファで就寝中。

 唇に違和感があったので目が覚めた。

 すると、目の前で、誰かが僕を覗き込むようにしていた。


「わっ!」


 部屋の蛍光灯は消されていたが、窓の外からの月明かりで、すぐに雪乃と判別出来た。


「びっくりした!」


「ゴメン。起きた?」


「うん…。今、何かした?」


「キスした」


「あ、そう…」

 雪乃ならキスしてくることぐらいは、想定の範囲内だな。


 雪乃は、僕が横になったままのソファの横に座り込んで、話を続ける。

「今日は残念だったね」


「え? 何が?」


「美咲ちゃんが来なかったら、いろんなことしようと思っていたんだけど」


「いろんなことって?」


「一緒にお風呂入ったり、一緒に寝たり」


「ええっ?! えええー…」

 それを聞いて滅茶苦茶、落胆した。

 もう、付き合ってるとか、付き合ってないとか関係なくHなことしようと思っていたのに。ちゃんとゴムも持ってきていた。箱で。

 あまりにも残念過ぎて、思わずため息が出た。

「あーあ…」


「そんなにがっかりしないでよ。また、機会があるよ」

 雪乃は笑った。そして、話を続ける。

「なんか、美咲ちゃん、私のこと嫌いみたいね」


「そうかな?」


「そうだよ。横浜でも、何回か睨まれたし」


「そうなんだ…。でも、なんでだろ?」


「そりゃ、純也を取られると思っているんじゃない?」


「いやいやいやいや。僕らは実の兄妹だよ、それは無いんじゃあ?」


「絶対そうだよ」


 そうなんだろうか?

 前に、妹に確認したことがあるが、激怒されたしな。

 でも、確かに最近の妹の行動は、良く分からない。


 などと、考えていると、雪乃はまた近づいてキスをしようとする。

 僕はそれを受け入れる。


 久しぶりに雪乃とキスする。

 舌を絡めて、濃厚なキス。

 そして、右手で雪乃の胸に触れてみる。

 おおー。ブラしてない。そして、柔らかい。

 パジャマの布一枚越しの感触は、なんとも表現が難しいが、ともかく柔らかい。

 軟式テニスのボールの感触が近いか? それより柔らかいか? 大きさは当然、雪乃のほうが大きい。

 そして、手のひらに胸の先端の感触が…。

 先日、上杉先輩の胸に触ったが、あの時は寝ぼけていたので、その感触ははっきりと覚えていなかったので、実質的に初乳揉みだ。


 僕らが、どんどん盛り上がってきたところで、リビングルームの扉が開く音が。

 僕と雪乃は慌てて離れた。

 そして、蛍光灯が点いた。

 見ると妹が立っていた。


「あ…、み、美咲。ど、どうした?」

 僕は動揺をなんとか隠しながら尋ねた。


 妹は、僕と雪乃をゆっくりと見てから答えた。

「喉が渇いたから、水をもらおうと思って」


「じゃあ、コップを出してあげる」

 雪乃は、平然を取り繕って立ち上がり、台所へ妹を案内した。

 妹はコップに流しの蛇口から水を注ぐと、それを飲む。

 雪乃はそれを見ると、先にリビングルームを出て自分の部屋に戻って行った。

 妹は水を飲み終えてコップを流しに置くと、僕のところへ、つかつかと歩み寄って来た。


「何してたの?」

 妹は僕を睨みつけた。


「え? な、なにもしてないよ」


「Hなことしてたんでしょ?」


「してないよ!」


「噓つき」

 妹はそう言い捨てるとリビングルームを出て行った。


 やれやれ。

 僕はため息をつくと、部屋の蛍光灯を消して、再びソファに横になった。


 引き続き、就寝中。

 リビングルームに入って来る足音で目が覚めた。

 僕は少し驚いて尋ねた。

「誰?」


「ゴメン、起こした?」

 毛利さんだった。


 僕は尋ねた。

「うん…。どうかした?」


「どうしてるかなって思って」


「どうしてるって…。寝てたよ」


 大晦日の夜も同じやり取りがあったような。

 月明かりの中、毛利さんはソファのところまで来て、床に座った。そして、僕を無言でじっと見つめる。

 無言のプレッシャーに耐え切れず、僕は再び尋ねた。

「ひょっとして、また僕と添い寝したいとか…?」


「うん」


「いいよ。じゃあ、今度は、毛利さんが上になってよ」


 毛利さんは、僕に覆いかぶさって来た。

 僕らは無言で数分間、抱き合っている。


 再び、リビングルームの扉が開く音が。

 毛利さんは慌てて離れて立ち上がった。僕も身を起こした。

 そして、蛍光灯が付いた。

 見ると妹が立っていた。


「美咲?! ど、どうした?!」

 僕は今回も動揺をなんとか隠しながら尋ねた。


 妹は、僕と毛利さんをゆっくりと見てから答えた。

「喉が渇いたから、水をもらおうと思って」


「またかよ」


「カレーを食べたから、喉が渇くの!」

 妹は、ちょっと怒ったように言うと台所へ向かう。

 原因は、さっきのレッドペッパーの入れすぎだろ。


 毛利さんは、「おやすみ」と言うと、そそくさとリビングルームを出て行った。


 水を飲み終えて、妹は僕の側にやっていた。

「何してたの?」

 妹はそう言って、僕を睨みつけた。


「な、なにもしてないって!」


「また、Hなことしてたんでしょ?」


「してないよ!」


「ヤリちん!」

 妹はそう言い捨てるとリビングルームを出て行った。


 ヤリちんって、ヤってないだろ。

 妹に捨て台詞を吐かれたので、不機嫌な状態で僕は再び眠りに就いた。


 翌朝。

 夜中に2度も起こされたので、少々寝不足のまま起きた。


 朝食を食べ、午前中は冬休みの宿題をやることになっていた。

 冬休みぐらい宿題無しにしてほしいのだが、仕方ない。

 まあ、量は少ないので、雪乃の部屋でさっさとかたずける。

 毛利さんは宿題の大半は、すでにやり終えていたのでようなので、僕と雪乃は彼女にわからないところを質問しながら宿題を進めていく。

 妹は、宿題をやらないので、雪乃の部屋にあったマンガを借りて、それを読んで暇をつぶしていた。


 午前中に宿題を終え、昼頃には、雪乃の家を後に、帰路についた。

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