エリア51

 織田さんが帰宅した後。僕の両親が自宅に帰って来た。

 夕食を取り、風呂に入った後、聞きたいことがあって妹の部屋に向かう。

 さっき雪乃が言っていたことの確認だ。

 妹の部屋の扉をノックすると、返事があったので入る。

 今夜も妹はパジャマでベッドに転がって、少女漫画を読みながら、くつろいでいた。


「なあ」

 僕は話しかけた。

「さっき、部屋、盗み聞きしてただろ?」


「へ? さっきって?」


「織田さんが居た時だよ」


「さー。どうだろ」


 やっぱり、盗み聞きしてたな…。


「なんで、盗み聞きするんだよ?」


「妹として、兄が何をやっているか監視しないと」


「なんで監視するんだよ?!」


「だって、お兄ちゃん、最近変だからだよ! ぬいぐるみとか、マンガとか、御守り買って来るし、ちょっと前まで女子なんか家に連れてこなかったのに、今じゃあハーレムだし」


「おいおい、どこがハーレムなんだよ」


「だって、織田さん、毛利さん、伊達さん、紗夜さんを連れ込んでるじゃん!」


「いや、織田さんはともかく、歴史研のメンバーはそう言う関係じゃないだろ? 勉強してるだけだろ!」


「毛利さんは? キスしようとしてたくせに」


「あの時は…、その、なんだ…。毛利さんとは、もう、そういう関係じゃないから」


 ん?


「おい、ひょっとして、毛利さんの時も盗み聞きしてないだろうな?」


「♪~」


「口笛吹いて誤魔化すな!」


「とにかく! 急にお兄ちゃんが、モノをくれたり、モテるようになったのは変だって! 本当は、エリア51から逃げて来た宇宙人じゃないの?」


「地球人だよ」


「証拠見せて」


「どうやって?」


「本物のお兄ちゃんなら、私にお小遣いをくれるはず」


「いい加減にしろ」

 僕はため息をついた。

「やっぱり、嫉妬してるんだな?」


「はあ?!」


「だから、僕が織田さんや毛利さんと、いちゃついてるのにヤキモチ焼いてるんだろ?」


「何言ってんの?! キモイ! キモイ! キモイ!」

 妹は叫びながら、持っていたマンガを投げつけて来た。

 僕は寸前のところでかわす。マンガは扉にぶつかって床に落ちた。

「もう! 出ってって!」


 妹に怒鳴られたので、そそくさと退散して、自分の部屋に戻った。


 やれやれ。

 今後は自室でいちゃつくのはやめておくのがいいのだろうか。

 雪乃は妹に聞かれてた方がゾクゾクする、とか言ってたからな。

 次は、構わず暴走するかもしれないが、僕にそれを止められる自信がない。

 妹が聞いててもヤってしまうかも…。


 さらに考える。

 今日は、キスが切っ掛けで雪乃の暴走が始まったわけだ。

 僕は、まだ雪乃のことがまだ、そんなに好きでもないのにキスしてしまっている。

 考えると、これは良くないな…。

 キスするのは、自粛した方が良いのだろうか?


 とりあえず、妹に事情聴取した内容を雪乃に報告するためスマホを手に取り、LINEを立ち上げた。

 そして、メッセージを送る。

『妹、盗み聞きしてたみたい』


 すぐに返事が来た。


『やっぱりね』


『嫉妬かどうかはわからなかった』


『嫉妬に決まってるじゃん!』


『そうかな?』


『そうだよ』

 すぐに続きのメッセージが来た。

『今度、盗み聞きなんかしてないで、一緒に混ざったらって、誘ってみようか?』


 えっ?! それって、僕と雪乃と妹でってこと?!

『それ、マジで言ってんの?!』


『マジで言ってる』


 3Pとか…? しかも妹だぞ。

 そんなシチュエーション、エロマンガでしかないだろ…。

 ダメだ…、雪乃とは恋愛の経験値と価値観が違いすぎて、付いていけん。


『ごめん、そろそろ寝るよ』

 僕は誤魔化すように、メッセージを送った。


 すぐに雪乃から“おやすみ”のスタンプが来た。


 僕はベッドに横になる。

 やはり、雪乃との付き合いは考え直した方がいいのだろうか?

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