魔法少女登場!

 次に僕と毛利さんは、漫研が出展している教室に向かった。

 教室の前には大きな紙に描かれた絵が展示されている。絵柄は少女漫画だ。

 

 中に入って同人誌が幾つも売ってたので、物色する。

 表紙を見たところ、どれも少女漫画ぽかった。

 BLっぽいものまである。学園祭だからさすがに過激なものはないだろうが。そして、BLはそもそも興味ないのでスルー。

 ちょっと、好みのものが無さそうだな、などと考えていたら、部員がオムニバス形式の新作ということで、ある同人誌を薦めてきた。折角なので、それを購入した。500円。

 家で読むことにしよう。好みに合わなければ妹にあげればいいか。


 そして、演劇部による舞台『ロミオとジュリエット』を見るために体育館へ向かう。

 その途中、体育館の側で何かフライヤー配りをしているコスプレ女子が3人いるのに気が付いた。

 近くまで進むと、そのうちの1人に声を掛けられた。


「おにいさん!」


 聞き覚えのあるこの声は…。

 以前、“占いメイドカフェ”のフライヤーを配りにここへ来た時に絡まれて、雑司が谷高校の学園祭の時には“占いメイドカフェ”まで来てくれた3人組。

 そのうちの赤いコスプレ衣装の女子が、長い髪をたなびかせながら、小走りでやって来た。


「おにいさん! ここで、また会えるとは、運命ですね!」


「あ、どうも」

 とりあえず挨拶する。

 "運命"とは大袈裟だな。


「後で、ライブやるので見てください!」

 そう言って、彼女はフライヤーを手渡してきた。


 僕はそれを受け取りながら尋ねた。

「ライブ?」


「そう、実は私たち3人でアイドル活動をしているんです!」


「そうなんだ。じゃあ、それは、アイドルの衣装なの?」


「そうです! これは、『たのまほ』のコスプレなんだけど、最近は、これでライブしてます」


「『たのまほ』って何?」


「『たのまほ』を知らないんですか? これは、アニメ『頼まれて魔法少女になったら、中央線で戦う羽目になりました』に出てくる魔法少女の衣装ですよ」


 そういえば、以前、妹がTVで見てたな。


「タイトルぐらいは知ってる」


「めっちゃ、流行ってるんですよ!」


 それは知らん。


「ともかく、ライブ見に来てください!」


「う、うん。わかったよ」

 ちょっと時間潰せそうだ。


 赤い魔法少女は僕の後ろに立っていた毛利さんを見て尋ねた。

「そちらは、彼女ですか?」


「ち、違うよ。クラスメートだよ」


「ふーん……。おにいさん、名前、教えてください」


「武田純也」


「私は、細川真帆。学年は?」


「1年だよ」


「なんだあ。タメじゃん!」

 そう言って細川さんは僕の腕を叩いた。

「じゃあ、ライブ、見に来てね!」


「お、おう…」


 そう言うと、魔法少女はフライヤー配りに戻った。

 僕と毛利さんは、舞台『ロミオとジュリエット』を鑑賞するために体育館へ向かう。


 毛利さんが尋ねて来た。

「さっきの女の子、どこで知り合ったの?」


「前、フライヤー配りにここへ来た時に知り合ったんだよ。あと、“占いメイドカフェ”にも来てくれたよ」


「そうなんだ」


 などと話をしながら歩くと、すぐに体育館に着いた。

 僕らは中に入り、適当に空いている椅子に座った。

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