東池学園祭~その1
今週の放課後はやはり、生徒会の手伝いですべて潰れてしまった。
金曜日には僕がやらされていた領収書の入力作業が、なんとか終わったので、とりあえず解放された。
そんなこんなで、待ちに待った土曜日。
今日は東池女子校の学園祭を訪問する。
午前10時に東池女子校の校門前で他のメンバーと待ち合わせ。
参加は、雑司が谷高校の歴史研4名全員と占い研、手芸部の有志十数名。
女子校に行く上に、こちら側も僕以外は全員女子という恐ろしい人員構成となっている。
「女子校だよ、女子校」
と、上杉先輩が絡んできた。
「わかってますよ」
僕は、少々あきれた感じで答えた。
今日は学園祭なので、男子も堂々と入れる。
見ると、僕以外にも男性の訪問者がそれなりにいる。まあ、父兄か、ナンパ目的かの2択だろうけど。
そして、僕には密かに目的があった。
東池女子校の生徒会長の宇喜多さんに会うことだ。あの上品な感じがとても良い。あわよくば、もっとお近づきになりたい。
伊達先輩たちが挨拶に行くらしいから、僕もついて行こうと企んでいた。
これ、ナンパではないぞ。正当な生徒会としての任務の一環である。僕は生徒会役員ではないけど。
そんな訳で、僕らは早速、校門の学園祭のために作られた派手なアーチをくぐり中へ。
入ってすぐのところで学園祭パンフレットを配布していたので1部受け取る。
その後は、雑司が谷高校の一行はそれぞれ自由に散って行く。
一方、伊達先輩、松前先輩は宇喜多会長に早速、会いに行くという。
「僕も挨拶に行ってもいいですか?」
念のため尋ねて、2人に着いて行こうとする。
すると、誰かが僕のシャツの裾をつかんで引き留めた。
振り返ると、毛利さんが不安げにしていた。
「どこ行くの?」
毛利さんは尋ねてきた。
「東池の生徒会長に挨拶に行くんだよ」
「そうなんだ…。私、見て回ってるから、終わったら連絡して」
そう言うと一人で静々と人ごみの中に消えて行った。
毛利さんは、僕と学園祭を回るつもりなのか? 事前に話してなかったけど……。まあ、いいけどね。
一方、僕と伊達先輩、松前先輩は生徒会室へと向かう。
部屋の前に着くと、伊達先輩がノックをして中に入る。
「失礼します」
中では、宇喜多さんと他2名が待ち構えていた。
そして、なんと、宇喜多さんは振袖を着ていた。和服も似合うなあ。相変わらず上品な雰囲気。
でも、なんで和服?
「いらっしゃい」
宇喜多さんは挨拶する。
僕らも挨拶を返す。そして、他の生徒会のメンバーは初めてなので自己紹介もした。
僕らは椅子に座って、出された冷たい麦茶をすする。
初めての人が居たので、ちょっと緊張するなあ。
伊達先輩、松前先輩、宇喜多さんたちは生徒会の苦労話とか、世間話とかする。
僕は横で聞いているだけだった。
何とか、会話に参加したいのだが、生徒会の話ばかりなので割り込めない…。
これでは宇喜多さんとお近づきになれないではないか。
うーん、どうしよう。
などと考えていると、宇喜多さんが話しかけてきた。
「ところで、武田さんは、パソコンが得意なんでしたよね?」
「あっ! はい!」
宇喜多さんに声をかけられて、ちょっと嬉しい。
そして、パソコンは本当は、それほど得意じゃない。
「今度、生徒会のツイッターの運用で、いい案があったら教えてください」
以前、SNSは得意ではないと言ったような気がするが、ここはお近づきになるために適当に答える。
「ええ、いつでもどうぞ」
結局、僕が話をしたのは、これだけだった…。
あまりお近づきになれなかった。
ツイッターの運用の件で無理やり用事を作って会ったりできないものだろうか。
話も終わって、最後に宇喜多会長が言う。
「私は茶道部で、中庭で
そうか、宇喜多会長は茶道部か。だから、振袖を着ているのだな。
茶道部も上品な宇喜多会長にぴったりだ。本物のお嬢様だな。
そして、ノダテってなんだ?
僕らは生徒会を後にした。
廊下を歩きながら伊達先輩が提案する。
「後で、中庭に行ってみましょう」
僕と松前先輩は同意した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます