雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

 翌日、期末試験が始まった。

 期末試験の期間は部室が使えないので、昨日、毛利さんに教えてもらっていない教科は、図書室で引き続き教えてもらった。

 しかし、勉強は教えてくれるものの、毛利さんは昨日の帰り以来、ちょっと、よそよそしい感じだ。どうすれば機嫌が治るのだろう? そもそもなぜ怒っているのかがわからないので、対処のしようがないが。

 もう、諦めた。


 そして、数日が経ち期末試験が無事終了した。

 試験は今回は手ごたえありで、それなりに良い成績になりそうだ。

 いろいろあったが、伊達先輩と毛利さんのおかげだな。改めて礼を言っておこう。


 後、1週間、通学すれば、もう夏休みだ。

 夏休みも歴史研としてはお城巡りをたくさんやる予定だが、僕は参加するかどうかまだ考えている途中だ。


 僕が歴史研究部に入ってから1カ月と少しだけだが、突然に濃い日々が始まった。

 それまでが何もない日々だったので、そのギャップには戸惑いしかない。

 女子との絡みもかなり増えたな。まあ、女子といっても伊達先輩、上杉先輩、毛利さんの3人だけだけど。


 今日は毛利さんと一緒に歴史研究部の部室に行く。校舎の4階、端の端、理科準備室。


 部室の扉を開けると、伊達先輩と上杉先輩がいた。

「来たね!」

「いらっしゃい」

「「こんにちは」」

 いつもの挨拶だ。


 少し世間話をして、話題は夏休みの城めぐりの話へ。


 伊達先輩は言う。

「夏休みのお城めぐりは、以前言った通りにやるわよ。みんな大丈夫?」


「大丈夫だよ」

 と、上杉先輩。


「大丈夫です」

 と、毛利さん。


 僕はどうするか、まだ決めかねていた。

 無言のまま僕を見て、上杉先輩が絡んでくる。


「えー、行かないの?」

 そして、ニヤリと笑って言った。

「こんな美女3人と一緒に旅行できるなんて、もう一生ないかもよ。それに、温泉合宿は混浴かも」


 混浴なわけないだろう。もう少しましな誘い方はないのか。

 それに、この3人が美女かどうかは保留する。皆、個性が強烈だから一緒に旅行して僕の精神が持つかどうか。


「行こうよー」


 毛利さんがちょっと甘えたような声で言ってきた。

 最近、よそよそしくしていたのに、急に何だ?


 伊達先輩がフラリと立ち上がって、僕に近づいてきた。

 ちょっと待て、これは…。

 先日、お城巡りについて僕が逡巡していると、伊達先輩が壁ドンして脅してきたのだ。それと同じことが行われると予想した僕は、椅子ごと移動して逃げた。


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!」

 急遽、言い訳を思いついたので口にする。

「夏休みの宿題が大量に出されたので、お城巡りに行くと全部できないかもしれないんですよ」


「手伝ってあげるわよ」

 と、伊達さん。


「一緒にやりましょう」

 と、毛利さん。


 二人の言葉を聞いて上杉先輩がニヤリと笑う。

「逃げ道、無くなったねー」


 しまった。ほかに言い訳は…。


「夏休み中は体調が悪くなる予定で…」


「もっと良い言い訳を言いなよ」

 上杉先輩に突っ込まれた。


 その通り。


 僕は軽くため息をついてから言った。


「わかりました、行きます。でも、夏休みの宿題はよろしくお願いします」


 僕の言葉を聞いて、女子3人は満足そうに微笑んでいる。


 ああ、また、強引に押し切られた。夏休みは波乱の予感だ。

 夏の目標は『NOと言えるようになる』ことかな。


 伊達先輩はおもむろにポテチを取り出してその袋を開けた。

「よかった食べて」


 僕は、久しぶりに伊達先輩のポテチをつまんだ。


 僕は、ふと窓の外を見た。

 青い空に、夏らしい白い入道雲が遠くにあるのが目に入った。




 ≪雑司ヶ谷高校 歴史研究部 生徒会長選挙編 完≫

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