想い出のタコ焼き

幼い頃、祖母とよく行った

地元の小さなデパート

地下の食品売り場の隅っこに

そのタコ焼きコーナーはあった


長く繋がったテーブル

背の高い椅子に座って

足をブラブラさせながら

タコ焼きが焼き上がるのを待つ


白いお皿に乗せられて

目の前に出されたタコ焼きには

たっぷりのソースの上に

青海苔とヒラヒラ踊るカツオ節


二つある爪楊枝は祖母とわたしの分

ふーふーしながら半分こして食べる

焼きたてのタコ焼きは

外がカリカリで中はフンワリ


熱つっ!  と言っては

顔を見合わせてニッコリする

ああ、なんて幸せな時間だったことか

あの懐かしいセピア色の日々



小さなデパートは

もう二十数年も前に閉店して

今では立体駐車場になっている

街はすっかり姿を変えてしまった


祖母が亡くなってから

もう随分と時は過ぎて

父も母も、もういない

わたしも歳を重ねた


あれからもタコ焼きは

何度も食べたけど


不思議に

祖母と食べたあのタコ焼きほど

美味しいと思えるタコ焼きを

食べたことがない


けれどきっと

これからもそうなんだろうと思う


あれは遠い日の想い出の味


あれは祖母とわたしだけの

特別なタコ焼きだったのだから

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