まやかし

ふと、疲れてしまったのです

気づかぬ振りをしてきたのに

自分を騙し続けてきたのに

今になって立ち止まり


いいえ


それで何が変わるわけでもないでしょう

大抵の人はそうではありますまいか

すっきり解決も割り切りも

できるほど人生は簡単なものでもなし


喉に詰まったものを何とか飲みこんで

それからまた歩き出す

忘れられなかった傷口いたみでも

また忘れたふりをして


はい


瞑りそうな目を見開いて

引き摺りながらでも足を前に出し

疲れてしまいました、と

心で呟きながら


誰にも気づかれないのは承知です


そういうものだと

遠くでカラスがないています

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る