【詩集】満月音匣

モーニングルーティーン

朝起きて

顔洗って

歯を磨いて

それから

インシュリンの注射をお腹に打つ

朝食、野菜を先に食べるようにする

食後に薬を飲む

糖尿内科と心療内科と整形外科と皮膚科

片手にこんもり

湿布はかぶれたのでお休み中

血糖値を測る

自分の小さな手帳に記録する

忘れたり、飲み間違えのないように

これがわたしのモーニングルーティーン（朝の習慣）

もう随分長くになる

あとは

定期的に婦人科と眼科の検診もあるけど

三十半ばで糖尿病と診断された時は

ものすごくショックだった

夫が亡くなって

嵐の中に突然投げ込まれたみたいで

子どもたちと必死であっぷあっぷしていて

糖尿病って「貧乏病」なんだそうだ

朝食抜き、遅くに摂る夕食

子どもたちにとにかく食べさせて

自分が食べるのは菓子パンで済ませたり

山の子で健康が取り柄だったわたしなのに

気がつけば病気のデパートになっていた

失明の不安や

透析にならないようにとか

足に出ている痺れは

完全には治らないだろうとか

考え出せばキリがない

わたしはヘナチョコなので

怖くないといえば嘘になる

まだ子どもたちがこうして

成人するまで身体がもってくれて

良かったとは思うけれど

弱音は出る、出まくっている

あっちやこっちが悪くなる度に

泣き出しそうな気持ちになる

当たり前のはずの健康が

どれだけ有難かったかと身にしみて

今日も

朝起きて

顔洗って

歯を磨いて

それから

インシュリンの注射を打つ

これでも昔に比べて

針は細くなったから

痛いのダメ、注射が苦手のわたしでも

何とか自己注射できている

有難いことだと思う

医学は確実に進歩している

病と二人連れだけど

往けるところまで往きたいと思う

生きたいと、思う