幕間 形代(みがわり人形)
とある日―――ホホヅキの下をローリエが訪れ、何やらを話し込んでいるようです。
「(……)また修繕ですか。」
「ええ……ちょっと―――手荒に扱ったつもりもないのだけれど…あなたにしかできないから、あなたにしか頼めないのよ。」
「……判りました、ではお代金はこちらになります。」
何やらローリエは、何かの修繕をホホヅキに頼んだようでしたが―――ホホヅキがローリエから一時的に預かったのは少しばかり
それにしてもローリエからは気になる一言が。 単なる人形の
すると―――ローリエ所有の人形(ぬいぐるみ)を一時的に預かったホホヅキからはこんな言葉が……
「あら……」
・ ・ ・ 首が取れかけているわね―――
* * * * * * * * * * *
一方その頃のリリアとノエルの会話では。
「お前、なんか最近調子が悪いんだってな。」
「まあ…『調子が悪い』と言うほどのものじゃないんですけど―――私の役割とは隠密行動じゃないですか、そんな時にですね、ちょっと…“キュッ!”と、身体のどこか一部が締め付けられるように感じる事があるんですよ。」
「はは―――そりゃお前、持病の“癪”なんじやないの?(笑)」
「いえいえ何を言っているのです。 そんな持病があろうものなら私は忍として失格ですよ。」
「ふう~ん……原因は何か判ってるのか?」
「判れば……苦労はしませんよ。 そんな原因に頭を悩ませるようものなら、この先任務を遂行しづらくなります。」
どうやらここ最近、ノエルは
そしてまた更には……
「そう言えば、あの時は本当に往生しましたよ。」 「“あの時”?」
「ほら―――ニルヴァーナ殿が魔王軍の拠点を失陥させる際に、先立って私が拠点の状況を探っていた時の事なのですが……なぜか急に何の前触れもなく、首筋の辺りに激痛が奔り、危うく私は彼ら(魔王軍)に見つかりそうになってしまったのです。」 「(……)は~~~そ、そりゃ災難だったな。」
「一体何だったのでしょうねえ~? 今思い返すだけでも奇妙な体験です。」
それこそは奇妙な体験―――急に何の前触れもなく襲う身の不調、しかもその時は身体の重要部分である“首”辺りに異和を覚えた事を明かしたのです。
その事を聞いたリリアの反応は―――
「(あれえ?なんかこの症状―――あいつが作成するのに似てるなあ…)」
リリアとホホヅキは同じ地域―――ヒト族の国である『サライ』出身、そしてホホヅキは『鬼道術』と呼ばれる、魔界で主流とされている『魔法』とは別の術式形態を修得していました。 そのホホヅキが習得した術の中にリリアが知るものがあったのです。
それが―――“
その辺りが気になり、事情を詳しく調べる為ホホヅキを尋ねた処―――
「―――はい…あら、リリア!」 「よっ、最近ちょっと疎遠なっちゃってたからね、ご機嫌伺いに来たよ。」
“ご機嫌伺い”とはよく言ったもので、本来の目的はホホヅキの個人的空間にあるモノを確認する為……とは言え、自分が訪ねてきた事をこんなにも“キラキラ”とした表情(笑顔)で出迎えられ、おもてなしをしてくれる幼馴染に、ちょっとココロが“チクチク”と痛むのですが……
「(あっ!あった……しかも随分とまた
自分をもてなしてくれる用意をしている間に確認をしておきたかった事。 それこそまさにノエルを
{*ローリエから依頼を受けた際には、まだ『取れかけた』状態なのではありましたが、リリア発見時に『取れていた』と言うのは、どうやら修繕の最中だったようである。}
これで一応の“現場”確保とはなったのでしたが、不思議な事には何故ホホヅキはノエルの形代を……?
「(ワケ判らん―――別にホホヅキはノエルの事を嫌っているわけじゃないし、まあ……私がちょいちょいノエルにちょっかいかけてる時にはすんごい目つきで睨んでる時はあるけれども……だとしてもだよ?どうして仲間を呪い殺せるようなモノを作成しなくちゃなんないワケぇ??)」
リリアの疑問とはまさにその一点につきました。 ホホヅキも(最近では)ノエルに対して柔和な感じとなっていたのに、なぜこのタイミングで“呪殺”等と言う重い行動に踏み切れたのか……
こうしてリリアが思い悩んでいる間に、そもそもの原因を作ったお方が―――
「ホホヅキ先生ぇ~~そろそろ
「(ん?)王女さんこそなんで―――って…今何て言ったあ?
「ノエルさんの“ぬいぐるみ”♡ ホホヅキ先生に作ってもらったのですが、ちょっと破損しちゃいまして~~~それでまた先生に
「“破損”??て、なんでそりゃまた。」
「聞いてくれますかあ~?」 「えっ、あっ、はい……」
事の成り行き上、何やらのトラブルの相談―――と言うよりも、王族の愚痴を聞かされる羽目になってしまったリリア。 ですがしかし、
「実はですね、わたくしここ最近王国へと帰っていましたでしょう? そして本来なら2・3日で戻って来る予定だったんですけれども~~」
「ああそう言えば、今回は割と長かった(約2カ月余り)よな?」
「どおーしてだと思います!?」 「(顔が近い…)いや、どおーしてって言われても……」
「あんのクソ官僚共が、てめえ~らの案件総てわたくしに回してくれやがったのですわ! しかもわたくしのイヤシ・タァ~イムであるノエルさんの“ぬいぐるみ”を
「(え?ナニコノヒトーーー王族ってこんなにも業が深かったっけ?? 私が知ってる王侯貴族とかは、どこか『
これはまた、後世に於いてはローリエの子孫にあたる“ある王女”がやらかしてしまった事でもあるのですが、一般的に我々が知っている王族とは、まるで『白鳥』の如し―――つまり目に見える部分は優美に見えても、その実水面下では激しく足を動かせている……そう言ったものなのです。
―――と、まあ今回の一件は、真相が判ったところで、『
「ヲイ、これは一体どう言う事なのですか。」
「あ……あるぇ~?ノ、ノエルさん―――どしてここに?」(滝汗)
「昨日あなたの仕草に少しばかり引っ掛かりを感じましてねえ……今日“もしや”と思い
「どうしたのです、騒々しい―――あら、ノエル。」
「これで容疑者全員ですね。」
「お、おいちょっと待てって、私にまで嫌疑を掛けようってか?私はな、お前の為を思って……」
「“ある疑い”を知った上で偽証する等立派な犯罪行為ですよっ!!」
なんと?一体いつからそこにいたのか、渦中の一人でもあるノエルがそこにいたのです。
しかもしっかりと今までの事(現行犯)を抑えられてしまっていたみたいで、その場にいた一同は一様にして容疑に掛けられたみたいなのです。 しかも自分の家が少々騒がしくなったと覚えたホホヅキが、リリアをもてなす為の手料理を持って来た処で、改めてのノエルのお説教の開始―――
「ホホヅキ、これは一体何でありましょうか?」
「それは―――ローリエ様から依頼された“人形”(ぬいぐるみ)ですが。」
「ほほう―――それだけですか?」 「それだけ―――ですけれど。」
「ではローリエ、あなたは私のぬいぐるみを作成させる際、ナニカを手渡しませんでしたか?」
「えっ?!さ、さあ~~~わたくしなぁーんのことやら…」(フスーフスー)
「(ふむ……誤魔化す為の口笛が吹けていない―――“クロ”ですね。)」
「(う゛え゛っ!こいつ……アレがなんなのか判ってやがる!)」
ノエルは、ここ最近で自分の身の回りに起こっている“不調”の原因を探るために色々調べ回っていた処、“
しかも、王女サマの往生際の悪さにとうとう―――…
「では、修繕中の形代の中身を改めさせてもらいますよ…(ごそごそ)…これ―――私(黒豹)の髪の毛のようにも見えるのですが?」
「ああ~ン私もっとノエルちゃんの事を身近に感じていたいのよほほほぉ~~~」
「何を言っているんですかこのエルフは!私の存在性の一部が入った形代をこんなにしてしまって―――私はあなたに恨まれるような事は何一つだってしてやしませんよ!?」
「(……)だったら全員分のを作って差し上げましょうか?」
ノエルが自分を模した形代を改めた処、やはり出てきた……出てきてしまったノエルの髪の毛(物的証拠/動かぬ証拠とも)。 その事に本音駄々洩れのエルフの王女サマについにキレてしまったのですが。
なんとここで今までの成り行きをどう解釈してしまったのか、ホホヅキが仲間全員分の形代を作成してくれるようで……
「お前―――なんでホホヅキのを?」
「別に他意はありませんよ。」(←実は自分にとって一番無害そうに思えたから)
「それよりあなたは何故ローリエと同じ私のを?」(じとぉ)
「は?べっ、別にいいじゃんかあ。」(←実は密かにモフりたい)
「(はぁ…)リリアが私のを所望してくれなかったのは少々不服ですけど―――逆も然り、私がリリアのを所有していればいいのですぅ~♡」
「ムフフフフ~~♡ わーたくしめのは、新たなるノエルちゃん人形MK-2を作成して頂き、気分は上々なーのでえーすわああ~♪」
お互いに“通じ”あっている者同士の形代を作成してもらい、
{*余談ではありますが、ニルヴァーナはカルブンクリスのモノを作成してもらったようである。}
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