新プロジェクトとニューチューバー

第28話 心愛とお出掛け

 土曜日ーー。


 俺はいつものように、暇な休日を過ごしていた。

 特に何かをする訳でもなく、家の中でゴロゴロとスマホをいじっている。


 こんなだらけた休日で良いのかとも思うのだが、誰からも遊びの誘いがこないから仕方がない。

 そんな風に思いながら、スマホゲームのガチャを引く。


 当たれ、当たれ、当たれ。


 そう念じている時だった。

 スマホ画面の上に、新着メッセージが届いたと報告が入った。


 「……珍しいな」


 俺はすぐさま、アプリゲームの画面を閉じLimeのアプリを起動させる。

 そしてトーク画面を開いた。


 すると、ココアとカタカナで書かれた名前が表示されていた。


 心愛か。確か、お出かけについての詳しい事をLimeで送るって言ってたっけな。

 その事を思い出し、心愛のメッセージを開く。


 『おはようです!突然なのですが、今日の11時に私とお出かけして下さい!何か予定とか入っていましたら、断って頂いても構いません。お返事、待ってます♪』


 そんなメッセージを目にした俺は、一旦目を閉じた。

 あまりにも予想外過ぎる内容だったので、少し考える時間が欲しかったのだ。


 自分の中で、暇だから行くと言う選択肢とまだ心の準備が出来ていないのでやめとくと言う選択肢がぶつかり合っていた。


 そして10分ほど悩んだ。

 答えが出た俺は心愛に返事を返す為、机の上に置かれていたスマホを手に取った。

 慣れない手つきで、スマホの文字を打っていく。


 『おはよ。待ち合わせはどこだ?』


 短くシンプルにまとめた文章を送り、心愛からの返事を待つ。

 その間に俺は、着替えなどを済ます事にした。


 だが待てよ。

 そもそも女子高生とお出掛けって、どんな服装をするのが正解なんだ?

 クローゼットに吊るされた服を眺めながら、真剣な表情で考える。


 シンプル系か?それとも派手目な感じの方が良いか?

 色々と合わせては見たが、全く決まらない。


 そんな時、机の上に置いてあったスマホが音を鳴らす。

 心愛からの返事が返ってきたのだろうと思い、急いでスマホを確認しに行く。

 そのせいで、上半身は裸のままだった。


 俺はスマホを手に取り、心愛とのトーク画面を開いた。


 『神谷さんの文章って、ウケますね。まあそれは置いといて、待ち合わせの場所は駅にしましょう!それと私の服装の好みはシンプルなのが好きです!多分悩んでいるだろうと思い、送らせて頂きました❤️』


 そのメッセージを見た俺は、少し微笑えむようにして呟く。


 「……今日も元気そうだな」


 スマホの中でも、いつもと変わらない心愛だったので今日も元気なんだなと安心した。

 しかし、一つだけ疑問が浮かぶ箇所もあった。


 それは心愛の文に書かれていた、俺の文章がウケると言う箇所だ。

 だが時間も迫っていたので、俺は一旦心愛の好みで今日の服装を組み立てていく事にした。



 「こんな感じか?」


 全身鏡で自分の服装を確認する。

 心愛の好みに合わせて、柄物は一切取り入れなかった。


 白のパンツに水色のシャツと言うとても爽やかで夏らしいコーデにして見たのだが……。

 似合っているかどうかは、俺では判断が出来なかった。


 そしてその後、洗面台へと向かって色々と準備をする。

 髭を剃ったり歯磨きをしたりと、心愛の隣を歩いていても笑われないようにいつもより念入りに身形を整えた。


 そんなこんなで全ての準備が整った俺は、駅へと向かう事にした。

 待ち合わせ時間まで残り30分くらいなので少し急ぐ。



 駅に着いた俺は、腕時計を確認する。

 時間は、10時55分と表示されていた。


 よし、何とか間に合ったようだ。


 そう安堵していると、最近よく耳にするようになったお決まりの挨拶が聞こえてくる。


 「おはようです!神谷さん」

 「おはよ。心愛」


 白のワンピースを着た心愛が笑顔で手を振りながら挨拶をしてきたので、俺も軽く手を上げ挨拶を返した。

 そして心愛が早速俺の服装に触れてくる。


 「神谷さん、今日の服装バッチリですよ!」

 「そ……そうか?」

 「はい!無難と言うか、安全な道を好む神谷さんの性格がよく服装に出ています!」

 「お前それ、絶対褒めてないだろ」

 「すごく褒めてますよ!最上級の褒め言葉です♪」

 「俺には、最上級の貶し言葉にしか聞こえないんだが……」


 そんなやり取りを終えた後、心愛が目的地まで案内すると言っていたので俺は着いていった。

 電車に乗り、3駅ほど乗ったところで降りる。


 「着きました!」


 心愛が満面の笑みを浮かべながら、嬉しそうにそう言った。

 どんな所なのかと確認すると、そこはよくニュースとかでも話題になっている若者の聖地と呼ばれている場所だった。


 何でよりにもよってここなんだよ……。


 俺のテンションはガタ落ちだった。

 だが、心愛の嬉しそうな表情を見てしまうと行きたくないとも言えずに俺はその聖地に入ってしまった。


 そして痛感する。

 自分はもう、若くないんだなと。


 




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