第23話 神谷の告白

 早見ちゃんがショッピングをし始めて、はや3時間が経つ。

 モール内にある服屋を5軒、化粧品屋を4軒、その他にも靴屋に本屋、雑貨屋などなどありとあらゆる店で買い物をしていた。


 荷物持ちをしている俺は、既に両手が購入品でいっぱいになっている。

 これ以上はもう持てないと言うレベルにだ。


 だが早見ちゃんは、そんな事には全く気にも留めず次の店を探していた。


 「早見ちゃん……、ちょっと買いすぎじゃないか?」

 「え?全然ですよー」

 「いやいや、ちょっと待ってくれ。俺はもう持てないぞ」

 「大丈夫です♪せんぱいなら何とかなりますよ♪」

 「物理的な問題だからな?何ともならないぞ」


 何とかこれ以上の買い物はやめてもらおうと説得は試みたのだが、全く聞く耳を持ってもらえなかった。


 そして早見ちゃんは、次の店に向かって進んで行く。

 その後ろを俺は、少し距離を開けて仕方なく着いて行った。


 「ここが最後の店です♪」

 「この店って……」

 「はい♪私が可愛くなる為に一番重要なお店、エステです♪」

 「まあ見れば分かるんだが……、因みに時間ってどれくらいなんだ?」

 「えっと……2時間コースですね♪」

 「2時間だと!?その間、俺は一体何をすれば……」

 「荷物番をしっかりしておいて下さいね♪」


 だよな……。

 絶対そうなると思ったよ。


 絶望しきった表情をしている俺とは違って、幸せいっぱいと言う顔をしてエステの店に入って行く早見ちゃん。

 その姿を見ながら心の中で思う。


 何故彼女の事を好きになってしまったのかと……。



 2時間後ーー。



 「せんぱい♪お待たせしました♪」

 「おお。終わったのか」

 「よだれ出てますよ」

 「まじで?」

 「荷物番が寝るとかありえませんから」

 「すまん」


 早見ちゃんがエステから帰って来るなり、不機嫌になる。

 原因は俺が寝ていた事だ。


 はぁ、やっちまったな。

 どうにかして、機嫌を直してもらわないと。


 頭の中をフル回転させる。

 今ある情報をかき集め、女性の機嫌を直すのに最適な方法を瞬時に見つけるのだ。


 これだ!


 何とか一つだけ見つける事に成功した。

 その方法は、サプライズでのプレゼント渡しだ。


 あの記事に書いてあった通りなら、女性はサプライズが好きなはず。

 それに、俺が買ったあのプレゼントは絶対に渡せば恋が成就する最強のパワーストーン。


 この二つの力を借りて、一気に早見ちゃんの機嫌を直し彼女にして見せるぜ!


 そう意気込んで、まず俺がやった事はこのショッピングモールの近くにある公園に早見ちゃんを誘う事だ。

 そこでこのプレゼントをサプライズで渡そうと考えていた。


 「は……早見ちゃん。少し、公園に行かないか?」

 「公園ですか?」

 「ああ、何となくだが行きたくなってな」

 「まあ、別にいいですけど」


 何とか早見ちゃんを公園に誘う事が出来た。

 本人はあまり乗り気ではないみたいだが……。


 しかし、そこは一旦置いとこうじゃないか。

 今大事なのは、早見ちゃんと俺が二人で公園にいると言う事。


 まさしく絶好のチャンスだ。

 言うなら今しかない。

 男神谷悟、人生二回目の告白だ!


 「どう?ここの公園、結構雰囲気が良いって人気なんだよ」

 「そうなんですね。悪くはないと思います」


 早見ちゃんは大分冷めた感じで、返事をしてくる。

 まだ機嫌が直っていないのだろう。


 そして俺はゆっくりと大きく深呼吸をして、真剣な表情で早見ちゃんの方を見た。


 「早見ちゃん、真剣な話があるのだが」

 「何ですか?」

 「ええと……それはだな……」

 「ん?」

 「俺は……その、何と言うか……」

 「何が言いたいんですか?」


 全然はっきりとしない俺に、若干の苛立ちを見せ始める早見ちゃん。


 確かに逆の立場なら、俺だってイライラするだろう。

 しかし、告白とはなかなか言い出しづらいのもこれまた事実。


 特に恋愛に慣れていない俺がするんだから、余計に時間がかかると思う。


 そんな時、痺れを切らした早見ちゃんがとんでもない誤解をしてくる。


 「トイレですか?それだったら私に言わなくてもいいので勝手に行ってください」

 「と……トイレ?」

 「違うんですか?」

 「ち……違わない違わない!そうだ、トイレだ!ちょっと行ってくるわハハハ」


 俺は思わずその場から逃げてしまった。

 気まずさと恥ずかしさ、それに自分の情けなさに耐えられなくなったからだ。


 そして数分後、早見ちゃんがいる場所へと戻る事にした。

 気持ちも落ち着いたので、次こそはと気合を入れていたのだが……。


 そんな状況でもなさそうだ。

 俺が戻るとそこには、早見ちゃんの事を取り囲む若い三人の男達がいた。


 「ねえねえ、俺たちと遊ぼうよ」

 「どうせ一人なんでしょ?」

 「だったらいいじゃん!さあ行こうよ」


 そう言うと、一人の男が早見ちゃんの腕を掴んだ。


 「やめてください!」

 「大人しくしろよ!」

 「優しくするからさ」


 早見ちゃんは激しく抵抗するが、男性三人の力の前ではほぼほぼ無力だ。

 男性三人は早見ちゃんの事を取り押さえ、その場で襲おうとした。


 「おい!お前ら、俺の部下に何やってんだ!」


 そのギリギリで、何とか駆けつける事が出来た。

 駆けつけた時の俺は、本気でキレていた。






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