第15話 辿り着いた真実?


 「ちょちょちょちょっと待った!!」


 半裸の園田を前に俺は自分の貞操の危機に直面し、どもりまくってしまう。


「待てと言われてもねぇ、ここまでしてしまった以上僕も使命を果たしてしまいたいんだよね」


「だから何なんだよその使命って!! さっきは我々の悲願とも言っていたけど……!!」


 今現在はまさに最悪の事態である、しかしこの事が原因で真紀ははが身籠り俺を産んだというなら仕方がない事だと諦めるしかないが、そうじゃない可能性だってまだあるはずだ。

 それならこの状況を逆に利用して園田から少しでも情報を引き出してやる。


「う~~~ん、まあ別に良いかな話してしまっても……どうせ事後に及んだ後は君の記憶を操作してこの事を忘れてもらう予定だからね……そしてしっかり僕の遺伝子は君に中に刻まれるんだから」


 園田の言葉に俺の背筋に悪寒が走る。

 言い回しが違うだけで俺を襲う気満々なのだから。

 だがこれで以前真紀ははが言っていた事の辻褄が合ってきた。

 俺を孕んだ相手が分からないというのはその行為の後、記憶を操作されてその部分の記憶を消されたからだ。

 だが園田に、普通の人間にそんな事が可能なのだろうか?

 しかもこうまでして子供を真紀ははとの間に儲ける理由が分からない。

 

「お前は一体何者だ? 記憶の操作なんて事が普通の人間に出来るとは思えない……それに何が目的で真紀ははと交わろうとする?」


 こうなったら駄目で元々、直接園田に問い質してやる。

 素直に答えてくれるかどうかは分からないが。


「普通の人間か……確かに君の観点から見れば僕は大いに普通ではないよね、信じられないのも無理はない、でもね君が信じなくても僕には、僕らにはその技術があるんだよ、なにせ僕は地球人でも人間でもないからね」


「何!?」


 俺が想像していたよりも斜め上の回答が園田から返ってきた。

 地球人でも人間でもないだと? 一体どういう事だ?


「急にこんなこと言われても戸惑うっちゃうよね? 君に分かり安く言うなら僕は宇宙人だ、それも地球人に容姿を似せて作られた宇宙人の遺伝子を持った人造人間といった所かな?」


「……はっ?」


 ますます訳が分からなくなってきた。

 宇宙人だと? そんな事がにわかに信じられるか。


「ああゴメンね、君にも分かる様にもう少し補足をさせてもらうよ」


 今の俺はかなりの間抜け面を晒している筈で、それを見てか園田が見かねて語り始めた。


「君の質問の二つ目に関わる事だよ、我ら■■はこの地球の大気下で活動することが出来ない……そこで■■は考えたんだ、自分たちの遺伝子を地球人と掛け合わせて地球上に順応した新世代の■■を創造することをね……そこで僕ら人造人間の登場さ、■■の遺伝子を操作して地球人と交われるように改良したんだよ、だから僕は地球の高校生に偽装して地球の人間社会に溶け込み遺伝子を交わらせるパートナーを探していたんだ」


「何だ? 所々聞き取れないんだけど」


 園田の語りの中に聞き取れないノイズのよな単語が出て来る。


「ああ、これは地球の言語に該当する言葉が無いんだ、ゴメンね……しいて言えばこちらの人間の事だと思ってもらって問題ないよ」


「そうか、それでそのパートナーに母が選ばれた訳だ……で、その基準は?」


 混乱していた脳細胞を何とか捻って再び質問をする。

 すると園田は俺を指さしてこう言った。


「君の持っている『クリムゾンレッド』……それが君の母、早乙女真紀さんが僕らに選ばれた要因だよ」


「この玉が? でもこれは一体何なんだ?」


 こうなった以上園田に隠しても仕方がない、俺はポケットからクリムゾンレッドを取り出し掌の上に転がした。


「えっ? 持ち主である君が知らないのかい?」


「残念ながらね、母さんはこれを俺に託した直後に亡くなったからな……て、お前らも知らないのかよ? よくそんなんで母さんをパートナーに選ぼうと思ったな」


「僕は地球に降り立ち■■の遺伝子を受け入れられそうなパートナーの女性を探していた時、たまたま潜り込んだ高校で強い生命力の反応を検知したんだ、それが君の母親から発せられた物だとすぐに調べは付いたんだけどその生命力が物凄く小さく丸い物体から出ているのが分かったんでね、それを我々はクリムゾンレッドと呼んでいたんだよ」


「でもさ、生命力がこのクリムゾンレッドから出ているって言うのなら母さんはお前たちの遺伝子を受け入れられるか分からないんじゃないのか?」


「だからそれを調べる為に僕は君と付き合う事にしたんだよ、クリムゾレッドの持ち主が僕らの眼鏡にかなう存在かどうかをね……そしたらどうだろう、実際に君という子孫が未来に生まれていると言うじゃないか、これは間違いないと僕は確信したね」


 呆れたな、よくもまあそんな不確定な要素で一族の存亡をかけたプロジェクトを動かしたものだ。

 だが不可解な事が多すぎる。


「ちょっと待て、何故そんな結論になるんだ? 俺の精神が未来から来たのはお前も察しがついているだろうが、俺がお前の子供である証拠はあるのか?」


「あるよ、いま改めてクリムゾンレッドをスキャンしたら■■特有の精神パルスが検知された、これは地球人からには発せられないものだからね、それに君の精神がその身体に入る前には検知されなかったものだよ……僕らの調べによればクリムゾンレッドは持ち主の生命力を吸収する機能があるらしいから、これがどういう事か分かるよね?」


「………!!」


 それはこういう事か? 俺の精神が何らかの理由で真紀ははの身体に入ったことで俺が生まれながらに持っていた宇宙人の精神パルスとやらが真紀ははの身体に移ったって解釈でいいのか?

 何てこった……じゃあ俺は宇宙人と母さんの間にできた存在だって言うのか?

 衝撃の事実により脱力感に襲われ俺は足から力が抜け、膝から地面に崩れ落ちた。


「そんなにショックかい? いいじゃないか別に、生命は全て誰かと誰が交わった遺伝子を受け継いで生まれて来るんだ、それが他の人と少し違うってだけじゃないか……それに僕ら■■と地球人との間に子孫が出来る事が証明されたんだ、こんなに素晴らしい事は無いだろう?」


 この一言からでも彼ら宇宙人はやはり俺たち地球人とは価値観そのものが違うんだと実感する。


「最後にもう一つだけいいか?」


「何だい?」


 そう、これだけは最後に知っておきたい。


「……お前たちは地球人との交配実験の先に何を計画している?」


「交配実験とは人聞きが悪い……」


「答えろよ!!」


「分かったよ、そう怒鳴らないでくれるかな?」


 俺の剣幕に折れ、園田の口から衝撃的な事実が語られた。


「僕ら■■は地球を侵略するために調査にやって来たんだよ、こんな回りくどいやり方をするのは水面下で地球の人間社会に■■の血を引く存在を浸透させて根底から地球を乗っ取る作戦なんだ」


 と……。

 それを聞いた途端、絶望のあまり眩暈を起こし身体も地面に倒れ込む。

 真紀ははの遺言を叶える為に始めた俺の父親捜しであったが、いざ真相に辿り着くと俺にはとても手に負えるものでは無かったのだ。

 こんな事なら知りたくなかった。


「じゃあすぐに終わるからね……」


 俺の身体は仰向けに地面に横たえられ、園田が覆いかぶさって来た。

 そして俺の唇を奪う。

 もう好きにしてくれ……俺は悔し涙を流した。

 そこから俺の意識は遠のいてしまいどうなったかは分からない。




「……紀……真紀」


「うっ……んっ……」


 誰? 私を呼ぶのは?

 ゆっくりと瞼を開ける。


「ちょっと真紀!! 大丈夫!?」


「あれ……? 美沙……どうしたの……?」


「何を寝ぼけているのよこんな所で!! 誰かに襲われたらどうするの!?」


「はぇ……?」


 私の目の前に親友の美沙が仁王立ちして私を見下ろしている。

 横にはもう一人の親友、暦もいる。

 一体どういう状況なのと辺りを確認するとここは街の通りにある飲料自販機がならぶスポットだった。

 どういう訳かそこにあるベンチに座ったまま私は眠ってしまった様だ。

 

「大丈夫真紀っち? どうしてあんなところに一人で寝てたの?」


「う~~~ん……どうしてだろう? 全く思い出せないのよね……」


 暦の問いかけに少し前の記憶を思い出そうにも頭の中に靄が掛かったように何も思い出せない。

 でも何かあったはずだ、何かとても重要な事が。


「私たちが偶然通りかかってよかったわよ、変な男にいたずらされたら大変でしょうが」


「えへへ、ゴメンね」


 まあその内思い出すでしょう。

 そう思っていたがそれ以降その事を気にも留めなくなり月日が流れて行った。


 そして3ヶ月程経ったある日……私の妊娠が発覚したのだった。

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