光王冒険記
大水 洸
序章 王国編
プロローグ
2人とも黒いフード付きのマントを
先行している男は体格も背丈も成人男性と変わらないが、
もう片方の男は、背丈こそ仮面の男とほぼ同じだが、
野盗顔の男は小脇に抱えている白い布で包まれた塊に目を落とす。その眼差しには若干の疑いが混じっていた。
「こいつが将来やばいやつになるってぇのは、ほんとなのかね?ただの人間だろ?」
彼らが所属する軍の最高機密事項に該当するその塊は、とある人間の赤ん坊である。手首から上腕に少しかかるほどの大きさで、
眠っているのか、
「あの方の
仮面の男は少し
「…あいっかわらず
目と鼻の先に洞窟が見え、任務完了を目前にした事で男は少し気が
急に、背筋が凍るほどの殺気が襲う。慌てて先行する男にむかって声を張り上げる。
「待て!誰かいるぞ!」
だが、その声はすでに遅かった。
「『
どこからか発せられた魔法の詠唱と共に、先行していた男が止まる間もなく巨大な土の槍で貫かれる。かなり高位の対魔法・対物理防御術式が
加えて、男は潜入や暗殺など武力は最低限しかない。あまりにも開きすぎている
いるのは分かっている。しかし一切その場所が分からない。その不安は男をさらに締め付けていった。
「くそっ……誰だ!!隠れてないで出てきやがれ!」
すると、目の前の木の上から1人の青年が降りてきた。後ろで結った長い髪は真珠のように
顔つきは非常に整った美男子といった感じで、体格はいい方ではなくむしろ
恐怖を振り払うために、男は少しばかり声を張り上げた。
「誰だおまえは!!」
「声でかいって、魔族クン」
「なんでわかったのって感じの顔だね!その程度の魔法で隠してると思っていたのかな」
「こ、これでも国で一番の使い手なんだぞ!見破れるわけが……まさか、看破の【魔眼】持ちか!」
「確かに【魔眼】持ちではあるけどそんな能力は無いさ。単に実力差だよ」
今までの苦労と努力があっさりと崩れ落ちていく。自分より一回り下に見える目の前の青年への感情は相棒を殺されたことへの怒りとそのオーラへの恐怖だったが、今ではただひたすらに絶望が渦巻いていた。
こいつは……正真正銘のバケモンだ……
「そんなことは一旦おいといてー……ここでなにしてんの?」
笑顔が消え、瞳に殺気が宿る。仮面の仲間が刺される直前に感じたあの異様な殺気だった。下唇を噛んでなんとか意識を保っているが、気を抜けば気絶してしまいそうになる。
「あれ?聞こえなかった?ここで何してるの、って聞いてるんだけど……そこの仲間みたいに串刺しになりたいのかな?」
青年は、空中に6本の小さな槍を生成した。槍は男の周囲を旋回し、常に先端は首や心臓などの急所を狙っている。結果は分かっているが、なんとか取り繕うしかない。
「ま、まて!俺は別にお前らとやりあうつもりはない!」
「そんな答え聞いてないよ」
信じられないほどの威力に男の足の力は抜け、その場にへたり込む。その両脇にさらに2本の槍が刺さり、ついには失禁してしまった。
これ以上の
「ここで俺と死ね!!」
直後、男の体が光始める。体内の
それを発動しようとした瞬間、青年は男の
「ふぅ……危ない危ない、まさか自爆しようとするなんて。あ、もう出てきて大丈夫だよー」
先程の殺気は嘘のように消え、また清々しい笑顔が戻る。すると、周囲の
「とりあえず、2人の身ぐるみ剥いで何かないか調べる!それが済んだら死体は燃やしておいてね。あ、あといかついおっさんが抱えてた何かがその辺りの茂みにあるから持ってきて」
青年の指示で、2人は魔族の男、3人はその魔族が出て来たあたりを探り始める。布にくるまれていた子供はすぐに発見された。
「ルーフ様、見つけました!!」
1人が白い布に包まれていた子供を青年に差し出す。布は上質な綿で、それをめくると、そこにはすやすやと眠っている赤ん坊がいた。
「これはこれは……こっちの方向は何か村があったっけ?」
「はっ!イリア王国
「イリアの……返そうにも返せないなぁ」
さすがに敵国の領土で
「一度屋敷で保護するしかないね。君たちのはこの先の洞窟を調査してきて。ボクはこの子を屋敷に預けてから合流するから」
そう一言告げ、青年は赤ん坊を抱えて
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます