第122話刷り込み

戻ってきたターニャは満足そうにしており、元気にパン作りを再開した。


リナは少し気になり外で警備をすると言ってたシモンさんのところに向かった。



「シモンさん…大丈夫でしたか?」


「リナちゃん…まぁどうにかなりそうかな」


「え!?じゃあもしかしてターニャと?」


「いやいや!護衛対象とはそういう関係にはならないって決めてるからね。仕事に影響が出るから」


「そうなんですか…」


「それに、ターニャはきっとまだ自分の気持ちをよくわかってないんじゃないかな?ずっと虐げられていて、最初に優しくしてくれた男が俺だっただけで…一種の刷り込みみたいなもんだろ」


シモンさんの言葉に寂しいが頷く。

リナ自身もそんな気がしていた。


「そうかも…しれませんね。でもそこから本当の恋になるかもしれませんよ」


「ターニャがそのままの気持ちでいてくれて、いつかまた告白してくれたなら…その時は真剣な気持ちで返事をするよ」


「それって…」


「俺だってその時に他に相手がいるかもしれないからな、その時になってみないとわからないよ」


「そ、そうですか…ターニャは可愛いしお料理上手だし…きっといいお嫁さんになりそうですけど…」


なんだか少し残念になってアピールしてしまう。


「確かにパンは美味かったなぁ」


シモンさんは思い出したのか頷いている。


「とりあえずは彼女達の気持ちの整理が一番だな、でもここに居ればすぐに良くなる気がするよ」


シモンさんは楽しそうに遊んでいる子供達の顔をみて微笑む。


「そうですね、いえ!そうなるように頑張ります」


「まぁほどほどに、リナちゃんが無理して何かあったら怖いのが数名…いや結構居るからね」


「ふふっ、そうですね」


リナは幸せそうに微笑んで頷いた。


「誰の顔を思い浮かべてるんだか…」


リナの表情にシモンが呆れていると


「リナ…シモン?」


するとそこにルーカスがリナ達を迎えに現れた、リナの幸せそうな顔がシモンを見つめている。


ルーカスはリナとシモンの顔を交互に見ると…何も言わずに考え込んだ。


「なんか勘違いしてるけどな!この顔はお前のせいだからな!説明はリナちゃんに聞きな」


シモンはやってられるかと修道院にさっさと逃げ込んだ!


「俺のせい?どういう事だ?」


ルーカスはわけがわからずにリナに近づくと説明を求めた。


「ふふ、実は…」


リナはターニャの思いからルーカスにきっちりと一から説明した。






「はぁ…あの泣き叫んで怖がっていた彼女が…」


ルーカスさんは信じられないと首を傾げる。


「シモンさんとラキさんが優しく接してくれたおかげです。それに素敵な女装でしたから」


クスクスとその様子を思い出して笑う。


「彼女達の幸せの為にも頑張らないと…と思っていたらシモンさんに心配する人達がいるから無理しずぎないようにと言われたんです…その時に真っ先にルーカスさんの顔が浮かんできて…」


「なるほど…」


それであんな顔をしくれたのか…


ルーカスはその時のリナの顔を思い出して嬉しさにニヤける顔を手で隠した。


「ルーカスさん?」


顔を隠すルーカスにリナがどうしたのかと声をかけると


「なんでもない、シモンの言う通り無理しすぎないでくれ」


「わかってます。自分が倒れていては仕事になりませんからね!」


「本当にリナはすごいな…」


「これもルーカスさんが私を雇ってくれたおかげですね」


リナは始めてルーカスさんに会った時の事を思い出した。


「いや、リナを見つけてきてくれたアリスのおかげかもしれないな」


「本当にそうですね!アリスちゃんは私達に取って本当に天使のようです」


アリスちゃんの話をしているとシモンさんが呼んできてくれたのかちょうど修道院からアリスちゃんが飛び出してきた!


「リナー!ルーカス!」


可愛い笑顔で駆け寄る恋のキューピッドに私達は笑いながら手を広げてその小さな体を受け止めた。

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