第68話逃げ場
凄い速さで家に戻ってくると…そっと気遣うように優しく降ろされた。
ずっと感じてた温もりが無くなり少し腕の中が寂しくなる。
三人で部屋に入ると…帰って来たのだといつもの風景にホッと息を吐く。
「やっぱりこの家が落ち着きます」
「アリスも!」
「俺もだ…でもリナとアリスが居てこそのこの家なんだって二人がいない家に帰ってきて改めて思ったよ」
ルーカスさんがそう言いながら腰を掴んで引き寄せる。
何だか今日はずっと近くにいる気がする…
真っ直ぐに見られて恥ずかしくなると顔を逸らして部屋の様子を伺う。
するとルーカスさんを迎える為に作っていた料理がもうすっかりと冷めてしまっていた。
「あーあ…」
アリスちゃんはパサパサになってしまった、下ごしらえしてあった食材を寂しそうに見つめていた。
ぐぅ~
ぐうううー!
すると可愛い音と大きなお腹の音が同時に聞こえた。
音の主を見つめると二人そろってお腹を押さえていた。
「ふふ、色々あったからお腹空いちゃいましたよね。この余った食材はもったいないから…」
私は食材を全部鍋にぶち込んだ。
「リ、リナ何するんだ?」
「こういうのは一緒に煮込んでスープにしちゃえば意外と美味しいんですよ」
「そんなもんなのか?」
「そんなもんなんです」
笑って鍋をかき混ぜる私をルーカスさんが隣に立って覗き込んだ。
その近さに一瞬固まると…
「リナ?どうした?」
ルーカスさんが笑ってさらに近づいてきた。
私の気持ちがわかっているのかニコニコと笑いながらさらに体をくっ付けてくる。
「アリスもー」
するとアリスちゃんも反対側から同じように抱きついてきた。
「ふ、二人とも!お鍋が!こぼれちゃうから大人しくしてなさい!」
「「はーい」」
二人は怒られたのに何故か嬉しそうに仲良く離れて行った。
二人が居なくなると…何だか急に寂しくなる。
チラッと二人を見ると…
「す、少しだけなら近くにいても…いいですよ」
恥ずかしくて、小さい声でそう言うと二人は顔を見合わせて急いで近づいてきた。
「アリス、おてつだい!」
「お!アリスは偉いなぁ!じゃあ俺は味見を手伝おう!」
アリスちゃんは鍋を回してみたいと言うので椅子を用意して一緒にゆっくりとかき混ぜる。
「じゃあルーカスさんお味見よろしくお願いします」
スプーンでひとさじすくってフゥーっと冷ますとあーんとルーカスさんの口に近づける。
「あ、あーん…」
ルーカスさんは一瞬驚いたがフッと微笑むと口を開いた。
私はその口にスプーンを入れると…
「んっ…美味い…」
手を掴まれてまるで自分を食べたかのように見つめられる。
「アリスもー!」
「はっ!ア、アリスちゃんもね~」
私は熱くなる顔を隠して慌ててアリスちゃんの為に屈んで同じように食べさせる。
「おいしー」
アリスちゃんはほっぺが落ちないように押さえている。
「ん?リナ…あかい?」
同じように頬を押さえているとアリスちゃんに顔の赤さを指摘される。
「だいじょぶ?」
「うん…大丈夫だよ」
アリスちゃんの可愛さに少し落ち着くとギュッと抱きしめた。
「アリスちゃん…今日は一緒に寝ようね」
「うん!」
アリスちゃんとの約束を取り付けてホッとすると…
「今夜は三人で…だよな」
「そうだ!三人!」
ルーカスさんの言葉にアリスちゃんが顔を輝かせた…
ルーカスさんに赤くなった頬を撫でられると…まるで逃がさないと言われている気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます