第24話他の男の服
先生に傷の手当てをしてもらい包帯で巻き付け終わると…
「しまった！服がないな…」
先生は私の服を破いた事にどうしようかと周りを探る、そして自分の白衣を掴んだ。
「すまない、私の白衣がひとつあるからそれを羽織っていてくれるかな？」
「いいのですか…先生の服なのに」
私は申し訳なく眉を下げた。
「問題ないよ」
先生が優しく笑いかけて白衣をそっと羽織らせてくれる。
「今、ルーカスさんを呼んで来るから少し待ってなさい」
先生がそう言って部屋を出ていくとブカブカの白衣を前を隠すように重ねて、着ていた服に付いていた紐を抜くとそれを軽くお腹に巻き付けた。
そしてそっと背中の傷を触る。
まだ少しヒリヒリとしていたがだいぶ痛みは引いていた。
「ん…」
するとアリスちゃんが泣きそうな顔で私の前に立った。
「ん？どうしたの？」
アリスちゃんは悔しそうな悲しいそうな顔で突然ポロポロと涙を流し出した。
「アリスちゃん！ど、どうしたの！？まさか…アリスちゃんもどっか痛いの！？」
私は再度アリスちゃんの体を確認するがアリスちゃんは違うと言うようにブンブンと首を振った。
「ん！ん！」
私の怪我を指して自分を指さす…
「もしかしてこの傷は自分のせい…なんて思ってるの？」
コクッ…
アリスちゃんがシュンと頷いた。
「アリスちゃん！この傷はアリスちゃんのせいなんかじゃ決してないよ！あの人はきっと文句を言わないと気がすまなかったんだよ。だからこれはあの人とそれを軽んじてた私のせい！」
そう言うがアリスちゃんは納得しないようで悲しい顔を続ける。
「大丈夫だよ、こんな傷すぐに治るからね。ほらアリスちゃんが私と会った時に膝を怪我したでしょ？」
アリスちゃんは思い出したのか自分の膝をみた。
そこには綺麗に傷が無くなった可愛いひざ小僧が見える。
「ね！アリスちゃんだって綺麗に治ってるから私も同じ、すぐに治るよ」
自分の膝を擦りながらアリスちゃんはやっと頷いてくれた。
すると先生が呼びにいったルーカスさんがトントンと扉をノックした。
「アリスちゃん…この怪我の痕の事はルーカスさんには内緒ね」
アリスちゃんは驚いた顔をしたがわかったと頷いてくれた。
それを見て私はありがとうと頭を撫でるとルーカスさんに入っても大丈夫だと声をかけた。
「リナさん…大丈夫か？」
伺うようにルーカスさんがそっと部屋に入ってくると…私の姿をみて目を見開く。
「その服は…」
白衣をまとった格好にルーカスさんが驚いたようだ。
「服が駄目になってしまったから僕の白衣を貸したんだ。ああ腰を縛ると一応服みたいになるね」
後ろから付いてきた先生が私の姿をみて感心したように見つめる。
「ちょっと…待ってて欲しい…」
ルーカスさんはそういうとまた部屋を飛び出してしまった。
「「「？？」」」
私達はルーカスさんの様子に顔を見合わせ首を傾げた。
その間に先生に薬の塗り方や傷の手当ての仕方など教えて貰っていると…
「待たせた！」
ルーカスさんが慌てた様子で戻ってきた。
そしてその手には騎士団の練習着を抱えていた。
「それはなんですか？今日の洗濯の分でしょうか？」
私が聞くとルーカスさんが慌てて首を振る。
「いや！その…先生の服を汚してしまうと申し訳ないから…俺のをと…こっちに着替えてくれないか？リナさんが洗濯してくれた物だから汚くないし…」
ルーカスさんは目を逸らしながら服を差し出してきた。
「えっと…」
私は困って先生を見る。
「そうだな、また返して貰うのも大変だからそうしなさい。そこの衝立を使って着替えるといいよ」
先生はニコニコと笑ってそうするといいと言い出した…私は戸惑いながらもルーカスさんの服をそっと受け取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます