第7話
『うーん…。よく寝た。久しぶりのベッドは格別だな…。二度寝しようかな?ダメか…』
昨日は初ダンジョンからのレベルアップ。そしてギルドでのあの騒動で、疲れて宿屋に入って飯も食わずに寝てしまった。アリアさんは同じ部屋で隣のベッドで寝ていたが、今は姿はない。
一応今日はギルドに行って、ギルド証を発行してもらう。今まで身分証明も持ってなかったが、よくここまで来れたものだと思う。
今からは日が真上あたりにあるから、昼頃だろう。
アリアさんはどこに行ったことやら…。
パタン!
『おはよう!スキーム!昨日は迷惑かけっぱなしでごめんね。それでなんだけど、あんなに報酬貰って良かったの?』
昨日貰った報酬の半分はアリアさんに渡した。今後何かとお金はかかるだろうし、こっちはまぁ一応保護者してもらってる身だ。なんだかんだあったけど、アリアさんには感謝してるので、感謝の印。
変に俺が貰いすぎも良くないと思ったからだ。
『良いんですよ。ここまでというか、短い期間ですけど、お世話になったので…。お礼も兼ねてます。気にしないでください』
『うん。なんか悪いわね。こんなにもらっちゃったら、私が貰いすぎだと思うの。こんな大金まずお目にかかることなんてないし…。それに私が面倒見るつもりだったのに…。こんなに貰ったら、スキームに面倒見てもらってるのと同じじゃない…』
『気にしすぎですよ。僕だってこんな大金持っても使い道なんてほとんどないですし、アリアさんのおかげでこのシーサイドの町にも来れたわけですから!今後はまぁお金もありますし、面倒を見てもらわなくてもなんとかなりそうなんで、餞別も兼ねてます。今までありがとうございました』
『やっぱりそういうことよね。私といても私はなんの役にも立たないものね。ギルド証も手に入るわけだし、戦闘もスキルもスキームに何一つ…。
あっ!じゃあこういうのはどう?私今回の報酬で私に雇われてくれない?流石に全額だと私も生活出来ないから、金貨1枚残してあと全部だから、白金貨4枚と金貨99枚でどう?私を鍛えてもらえないかな?』
こっちが別れを選んで、別々の道と思った矢先にこれか。まぁ俺はどの道訓練に明け暮れる予定だから、困らない…のか?
この人なりの優しさなんだろうな…。
『はぁ…。えっとですね。雇われるのは構わないですけど、俺以外にも適任はあると思いますよ?子供に教わるとか嫌じゃないんですか?それに報酬がほぼ全額返されるのは俺としても良い気はしないですよ』
『うんうん。じゃあ決まりね。私はスキームに教わることを嫌と思わないし、スキームに教わるのが一番良い気がしてるの。それに…弟が出来たみたいで嬉しかったのにもうお別れなんて嫌だわ』
なんか最後の方は聞き取れなかったが、アリアさんは良い人だしほっとけないよな。
『分かりました。でも報酬がそれだと高すぎるので、白金貨3枚で良いですよ。それでも貰いすぎですけど…。どうですか?』
『うん。それで良いのね。良かった。じゃあこれからも宜しくね。スキーム先生』
なんだかむず痒いが、先生か…。
まさか転生して先生になるなんてな。
『じゃあとりあえず、ギルド証を貰いに行きます。一緒に行きますか?』
『うん。行くよ!こんな子供でギルド証貰えるのなんて、滅多にないだろうし、楽しみ』
俺がギルド証もらうだけなのに何が楽しいのか。
まぁ良いか。
ギルドに到着して受付に向かう。もう昼過ぎということもあり、ギルド内は閑散としていて、俺とアリアさんくらいしかギルド内にはいなさそうだ。まぁ昼から飲んだくれてる連中は少しいるようだが…
マールさんが受付にいるのが目に入った。
『マールさん。昨日お願いしたものを受け取りに来ました。出来ていますか?』
『これはこれはスキーム君。約束のものは出来てますよ。はい。ギルド証です。多分この町で7才の少年にギルド証を渡すのは初ですね。これであなたもギルド組合員となり、冒険者という扱いを受けることになります。ギルドには一応ルールが設けられているので説明を聞いて行きますか?』
ギルド証が手に入ったが、ギルド組合員として説明を受ける必要があるようだ。まぁそうか。会社に就職したのに、就業規則を知らないでは社会人としてはまずいだろう。
『はい。聞いていきます。アリアさん。お待たせしてしまうので、どこかで時間をつぶしていてもらって良いですよ』
『そうですね。アリアちゃんはそこのソファにでも座って待ってるか、買い物にでも行ってもらってたら良いわ』
『はい。じゃあ武器屋とか見てまわります。スキーム先生また後でね』
『はい。また後で。それとその呼び方はやめて下さい。恥ずかしいですよ』
『コホン。それでしたら是非私も…』
マールさんが何か言いかけていたがスルーしとこう。これ以上面倒事はごめんだ。
『マールさん説明をお願いします』
『あっ、はいそうですね。それでは……』
そして説明を受けたが、要は組合員同士で諍いはご法度、悪質な場合は組合員証剥奪の下、犯罪奴隷落ちとのこと。
組合員は基本的に仕事を2週間に一回は受けなければならない。長期の仕事についてる場合や、怪我や病気が原因で働けない場合は免除。
依頼を受けると基本的に期限内に依頼を達成すること。期限が過ぎるとそれに合わせて報酬の減額か未達成により報酬なし、又は依頼内容により期限延長などその時々に合わせてギルドと、依頼主により判断となる。
冒険者ギルド組合員には一応ランクがあり、FからSランクまであるそうだ。Sランクの組合員は世界でも3人しかおらず、現在7レベルに至ったものがそのランクについているそうだ。もちろんレベルが高くてもギルドに貢献できていないものは、それなりのランクだそうだ。
8レベル以上は今のところ存在したと報告がないため、これが最大値と考えられていたようだが、今回の神託でレベルは10まで上がることを告げているはず。
あとはステさんの言っていた昇華については、話が出てこなかった…
俺の予想ではその昇華とやらは10レベルの上の段階なのではないかと思っている。
まぁ話は逸れたが、とりあえずそんな感じだ。
俺の場合は他の組合員に絡まれないように注意ということだろうな。
『以上になりますが、質問はありますか?』
『いえ、とても分かりやすかったです。ありがとうございました。依頼はあそこの壁に貼ってあるものを受付に持ってきて、受注という形でいいんですよね』
『はい。そうですね。気になる依頼などあると思いますが、まずはFランクスタートになりますので、その前後一ランク上と下の依頼を受けられます。またランクアップはこちらにて査定し、ランクアップに相応しいとギルドが判断した場合。ランクアップとなります。ちなみにCランク以上は昇格試験がありますので、ご注意下さい』
『分かりました。ありがとうございました。また近いうちに来ますね』
それじゃあアリアさん連れて訓練でもしようかな。
それじゃあ索敵…
うん?町にいない?
sideアリア
はぁー。スキームと一時はどうなるかと思ったけど、良かった。これでスキームとまた過ごせるわね。
だってあんなに可愛い男の子なかなか会えないわよ。はぁー可愛い寝顔だった。
そりゃ私にだって善意くらいあるわよ。
でもでもスキームは可愛いし、賢いし、そして強い。こんなことってある?
私はなんてラッキーなのかしら、一時はアカリメの刺客に誘拐されかかって、家に連れて帰られるとこだったけど、あんな窮屈で退屈な生活はコリゴリなのよね…
帰らないつもりはないけど、今は外の生活を満喫したいし、それにしてもスキームはとんでもない子よね。スキルも神託の件も…
やっぱり御使様って呼んだ方が良いかしら…
でもスキームは良いって言ってたし、やっぱり良いわよね?不敬かしら?
でもでもなんでもいいの。またスキームと過ごせるんだから、あっ!そうだわ。今度宿屋じゃなくて私たちの家を買って、そこで生活する方がお金もかからないし、二人の時間も増えるわね…
ふふふ…
じゃあ武器屋と雑貨屋さんによって、後は何見て回れば良いかしらね?
とりあえずスキームは旅装束しか持ってなかったし、新しい服とかも必要よね?
あぁー、ワクワクが止まらない…
夢が膨らんで行くわ。
『姫!やっと見つけ出しましたぞ!』
『え?セバス!もう来たの?』
そこには白髪でダンディな執事服を着込んだ壮年の男が現れた。彼はセバス。私の執事をしていた男だ。周りには10人くらいの兵士を従えて、やってきた。
『今度こそ大人しくアカリメに戻って貰いますぞ!戻ってもらわなくては、陛下に私が怒られてしまいますからな』
『そんなこと私には関係ないわ。お父様もお父様よ。どこぞの国に嫁がせようとか、私はまだ成人したばかりなのよ。それまでだって、城から出るのは危険だからって貴族学校に行く以外は、城から出してもらえないし…。戻るなんて絶対嫌!』
そう。アリアはアカリメ王国、第二王女で一年前に成人を迎え、国王からの扱いや、周囲の環境に嫌気がさして逃げ出し、この半年程前からアセアン大陸ポンジャ帝国に逃げてきていた。
そんなおりポンジャ帝国にて発見され、一度アカリメ王国に戻されそうになり大陸を渡ったが、港国にてなんとか逃げだし、スキームが侵入した船に居合わせたのであった。
『そんなことをおっしゃいますな。どこぞの国などと、隣国の王子で、育ちもしっかりとしたものではないですか…。陛下も姫のことを思っての行動でございますぞ』
『私は私の人生があるのよ。そんなことは自分で決めて、なりたい自分になりたいの!ほっといてよ!』
『姫様…。姫様の思いはこのセバスが、一緒に陛下にお話ししましょう』
『あなたが話してなんになるのよ。お父様は私の気持ちを汲んでくれるって言うの?』
『難しいと思いますが、伝えぬ事より良いのではないかと愚行します。さっさ!まずは国へ帰りましょう』
説得を試みるセバス、しかし思うようには話は進まず、陽動の兵士以外を動かす事を決める。
『嫌!貴方達だけで帰りなさい』
『仕方ない。余り無理矢理連れて行くのは避けたかったのですが…。やりなさい』
『え?なっ…離して!離し…』
気配を断ち、後ろから迫っていた暗部のものに捕まえさせ、眠らされたアリアはシーサイドから連れ去られてしまった。
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