第16話 お疲れ、DT
パン!
パン!
「おわっ!」
耳元から破裂音がする!
イヤホンの向こう、つまり、鞘師たちがいるロッジの中……?
「大・成・功!」
焦ってTシャツを着直そうとするが、先輩が抱きついていて戻せない。
「え、どういう……ことですか?」
僕が問うと、イヤホンの向こうから笑い声が聞こえてくる。
「鞘師? どういうことだよ!」
『まだ気付かねぇの?』
「何が?」
『逆ドッキリだよ』
「逆って……?」
鞘師はまるでミステリーの探偵のように、演技がかった調子で説明を始めた。
『今回のドッキリのことは、先輩には事前に知らせてあったんだ。お前をその気にさせて、鼻息荒くガッついたところでネタばらし!』
「じゃあ、作戦が途中でコロコロ変わったのも……」
『全部こっちのプラン通り! お前キョドリすぎ!』
「……」
何も言えない。一瞬だけ、今までの違和感が解消され、妙なすっきりとした気持ちになったが(鞘師たちの態度も、先輩が僕の不自然な言動をスル―していたことも)、すぐさま憤りと羞恥が混ざり、何から喋ればよいのやらわからなくなった。
『撮影終了!』
「お疲れ、樹くん!」
先輩が僕の肩をポンポンと叩く。
撮影終了?
いよいよ何を言っているんだろう?
『名付けて、リアル童貞喪失(未遂)ドキュメントだ!』
「おい、まさか」
「レコーダーで録画してたんだよ。ぜーんぶ」と先輩。
「ふざけんなぁぁ! おい、絶対流すなよ?」
『どうかなぁ』
「先輩、消して下さいよ!」
「どうかなぁ」
先輩は僕のTシャツを元に戻しながら笑っている。
その余裕な表情に、たまらなく悔しくなり。
「僕は未遂ですます気はないです」
あれ、僕何言ってんだろ?
そういうのって、なんか違うじゃんか。僕らしくないっていうか、なんかさ、ほら。
真剣になれないゆとりの僕には、なんのことだかさっぱり。
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