おっさんの冬休み
プロローグ『学園ダンジョン』
(1)冬休み、ダンジョンにて
そこは寒々しい雪山である、寒すぎて死ねる。
そんな雪山を歩くのは中年野郎とベーネちゃんである、ベーネちゃんはピン底メガネ装備は変わらずだがメイド服の上に厚手のマントを着ていた。
ちなみに私はイオちゃんお手製のローブを着ている。テンションは常にスーパーハイテンション級ですよ。
「寒いですか?ベーネさん」
「いえっこのメイド服もマントも寒さを退ける魔法が掛かっていますね?実はそこまで寒くないんです」
ベーネさんも流石は魔法学園都市の生徒さんですな、苦学生だけど。
私は魔法でガードしてるから平気だけど、この雪山ダンジョンは普通は防寒対策をモコモコして繰り出すダンジョンなのである。
ダンジョン、そうっ私は今ダンジョンにいた。その理由は…………。
「アッアオノさん!敵モンスター接近してきます!まっ魔法で援護お願いします!」
「分かりました、行きましょうベーネさん」
ダンジョンと言えばローグライクとかってジャンルのゲームよろしくお金をガッポリ稼ぐ為の場所だ。
このリアル異世界ではどうか知らないが私はそう思っている、そしてベーネちゃんは只今絶賛金欠中にて、このダンジョンでガッポリ稼ぐ為のお手伝いをしているのが現在の中年野郎である。
現れたのは白い体毛で周囲の銀世界な景色と溶け込んで近づいてきたホワイトウルフ達である。
赤い目とギラつく牙、接近を見破られた後の対応も早く直ぐにこちらを囲んできた。
グルルグルルと唸るホワイトウルフ、そしてビビるベーネちゃん。
「さっ寒いし怖いですね……!」
「落ち着いて行きましょう、勝てない相手ではありませんから」
ぶっちゃけ私もオオカミとか怖い、しかも1匹や2匹じゃないからね。少なくとも10匹以上はいるし。
先ずは数を減らそう。
仕掛けて来たのは向こうから、先ずは距離があるうちにこちらは魔法で遠距離先制攻撃。
「ハァッ!」
本来ならこの魔法だけで殲滅出来るけどこれはベーネちゃんの戦いだ、やり過ぎには注意する。
不可視の刃はホワイトウルフを首を一撃で断ち切り、その数を半数にまで減らす。
すると私の相手は不利と判断したのかベーネちゃんの方に駆け出したホワイトウルフ、やっぱりオオカミ系のモンスターって頭良いよな。
「…………ッ!じっ準備は出来てますよ!?」
「では頑張って下さいベーネさん」
しかし甘いよオオカミ君達、ベーネちゃんは常にオロオロしてるがやるときはやる子なのだ。
金欠美少女の実力を見せてやって頂戴な。
「ゴーレムクリエイト!
ベーネちゃんの発する魔力にホワイトウルフ達がビビった、彼女は結構強いのだ。
しかもゴーレム魔法の使い手だったのには私も驚いた。
ゴーレム魔法とは魔石や魔力結晶を核に周囲の物体でゴーレムを生み出し、使役する魔法だ。条件次第ではとても強いゴーレムを操れる魔法である。
「いっけぇぇえーーーーーーー!」
ベーネちゃんの気合いの入った声に応える様に白い雪の巨人がホワイトウルフ共にパンチを繰り出した。
結構な轟音と雪が白い煙の様に広がる。
「勝利ですね」
「ハッハイ!やったぁ~~!」
…………まあ倒したホワイトウルフ、雪の下にあるからこれから探すんだけどね。
そして10分程かけて私達はホワイトウルフの死骸を発見した。
「う~~~~、すみませんアオノさん」
「構いませんよ気にしないで下さい」
元からベーネちゃんが大きなゴーレムを召喚した時点でこうなるって分かってた。その上で放置したのは私だからね。
ちなみに発見したホワイトウルフ、特に私が倒したヤツなのだが血が一滴も流れていない。
それは何故か、実は私達がいるダンジョンは本物のダンジョンではない。魔法学園都市の地下の異空間に創られたパチもんのダンジョンなのだ。
パチもんだからそこに存在するモンスターも偽物で、身体の中に内蔵とかはないのである。とてもリアルで動く粘土細工に近い存在だ。
ベーネちゃんがホワイトウルフ達の死骸に近づき何やらブツブツと。
「………ハント完了、ドロップ!」
ベーネちゃんの言葉に応じてホワイトウルフ達が光になっています消滅した。
その後には丸くて白い球が転がっていた、ピンポン球サイズ。
これはホワイトウルフを形成していた魔力結晶だ、当然倒した者の物になり売るとそれなりのお金になる。私達の目的はベーネちゃんの金欠からの脱出。
つまりこの魔力結晶が目的でこのパチもんダンジョンを進んでいるのだ。
まあパチもんでも雪山を丸々ダンジョンとして用意するとか流石にすげぇとしか言えないけどな。
こんな広大なパチもんダンジョンが魔法学園都市の地下には他にも幾つも用意されているんだとか。
「それでは魔力結晶もある程度集まりましたし、ベースキャンプまで引き上げますかベーネさん」
「はいっそうしましょう!」
再び雪山を移動開始である。
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投稿を再開します、諸事情で投稿はスローペースになります、週に1、2話投稿するかんじです。
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