(7)いい夢
「ギュオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
青野の頭上に現れたのは巨大なウツボカズラの様な植物型のモンスターだった。
モンスターは咆哮を上げながら青野に襲いかかる。
「……
青野は魔法を発動する、植物のモンスターは一瞬でバラバラにされその体液が青野の頭上にまき散らされる。
しかしその大量の体液が紫の霧状に変化した。
「!?」
「掛かったな馬鹿め!」
エーグルが歪んだ笑みを浮かべる。
青野にその紫の霧が降り注いだ。
「くっ!これはまさか!?………ッ!」
「そうっあの死のウツボカズラはやられると同時に猛毒の体液を霧状に変化させて自らを倒したヤツを道連れにするモンスター、抗体を持つ私以外はこの閉ざされた空間では皆死ぬんだよ!」
エーグルの言葉を聞いた青野は片膝をついてしまう。
「エーグルさん、貴方は……どうしてこんな真似を……」
「言った筈だ、そもそも貴様の様なヤツがこの魔法学園都市に来た事が間違いだったのだ!」
「………数日前の貴方にはこんな真似をする魔力はなかった」
「外の魔法使い如きがこの私の実力を見切ったつもりか?……まぁいい死にゆく貴様には真実を教えてやろうか…」
するとエーグルは自身がしている腕輪をみせた、金色の金属で出来た腕輪で赤い宝石が埋め込まれている。
「まさか、それは……魔力吸収の腕輪?」
「ほう?一目でこれの正体を理解したか、その通りこれはな緑色の宝石をはめた腕輪をしている物達からこの赤色の宝石をはめた腕輪をしている私に魔力を絶えず供給してくれる魔道具なのだよ」
エーグルの異常な魔力の理由はこれだった、エーグルは自らの授業を受けに来た生徒達にその緑色の宝石が埋め込まれた腕輪を与え、この戦いの時の魔力タンクとしたのだ。
今頃学園では魔力を急激に消費した生徒達が何人も倒れている。
しかしそれを理解していてもエーグルは笑っていた。
「まさか………生徒達から!?」
「ククククッ!ああっその通りだよ!この私の役に立てるとはあの未熟者達にとっても光栄な事だろう!?」
「自らの弱さと愚かさを棚に上げた外道な貴方に誰かを未熟だなんて言う資格はありませんね…」
「ハハハハハハハハハハハハッ!ほざけほざけ!どのみち毒ガスで死ぬだろうが、最早自慢の飛行魔法も転移も出来まい?この私自らの手でトドメをさしてやる!」
「………私を殺せばイオさん達が黙ってませんよ?」
「黙れ!あのイオリアをイオと呼ぶだと?貴様風情がそこまで心を許されているとでも言うのか?ふざけるな!」
「こっ…今度は嫉妬ですか?魅了薬を使ったり、姑息でプライドだけの貴方に何かを言われる言われはありませんね」
「黙れ黙れ黙れ黙れ!あれ程美しく魔法の才に溢れる女はな、この私の物になることこそが相応しいのだ!貴様を殺したらこの絶大な魔力であのエルフも手に入れてやる!」
エーグルは天を仰ぐ様な大仰なポーズを取った。
「そしてその後はこの学園都市だ!最早この私に敵はいない、即ちこの私こそがここの王に相応しいと言う事だ!ハーーハッハッハッ!」
「………何というか………そこまでいくとある意味凄いと思いますよ?尊敬は欠片もしませんけど」
エーグルのバカな発言に冷静に答えた青野、エーグルが青野を見たとき、そこにさっきまで生きも絶え絶えに言葉を発していたおっさんはいなかった。
普通に立って顔色も健康そのもの、何よりそのふてぶてしい態度からはさっきまで死にかけていたと言う感じは一切しなかった。
そんな青野に冷静さを失ったのはエーグルだ。
「なっ何故だ!?アレだけの毒ガス浴びて無事なら筈がない!」
「ああっそれなら理由は簡単ですよ……」
「そもそも私は毒ガスなんて浴びていない、全ては貴方が見てる幻なんですよ」
「!?」
青野の言葉と同時に世界が歪んだ。
エーグルが見ていた物、聞いていた物、その全てが彼に都合の良い代物であった。しかし夢は醒めるもの、その魔法が解けた時エーグルは自らが見覚えのない魔法の鎖で縛られている事に気が付いた。
その魔法の鎖は捕らえた者の身動きを封じ、魔法や他の特殊能力の発動も無効化する。
「なっ!?バカないつの間に、こんな物を!?」
「貴方がこの巨大な植物の球体を生み出した後直ぐにですね」
青野は歩くような速さでエーグルに近付いていく。
エーグルはこの時になってようやく僅かに青野の実力を理解したのだ。自分と同等の魔法使いがどれだけ束になっても敵わないと。
それを理解した時、エーグルは小さく悲鳴をあげた。
そして青野はエーグルの前に立つ。
「エーグルさん……いい夢は見れましたか?」
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