年の瀬のふかし芋

 世間ではもう冬休みというかお正月休みというかに入っている方もいらっしゃるようですが、私はまだ仕事です。


 といっても、本当に暇です。今はほぼ一人でのたのたやってるので、今年のカレンダーならもう勝手に休んでやろうかしらと思ったりもしましたが、やっぱりさすがにそれはちょっとできなかったので、ひまひま言いながらもう少しがんばって働きます。


 今回を更新したらこのエッセイの残り枠ももう残りは3回、3つ寝たら1000話でお正月~です。過ぎてしまえば早かったですね。そして、まだ年末とお盆が「許してくれー!」と思うぐらい忙しかった頃のある出来事を、毎年この時期になると思い出します。


 多分大学の時か、もしかしたらもう社会人になった頃かな、何にしろまだ私が二十歳前後のことだったと思います。うちは私が中学を卒業する年に父親がいわゆる脱サラをして自分で仕事を始めました。その仕事を私もその頃から手伝ってたんですが、一番忙しかった時は大みそかの夜9時頃にまだ仕事してたなんて年もありました。


 そんな中、妹がお昼ご飯を作ることになったんですが、


「今日のお昼はお芋さんよ~」


 と、うれしそうに言ってきたんです。


 私は父親と一緒に仕事してて、やってもやっても終わらないし頭も体もふらふらで、多分冗談だなと思ってました。その頃、年末になると冷凍の「豚まん」を買ってたことが多かったので、蒸し器にもなる深めの鍋を持った妹を見て、多分それだろうなと思ってたんです。ところが、いざお昼になってテーブルにつき、お鍋のフタを開けたら中は、


「ほっかほかのふかし芋~」


 が湯気を立てていて、くたくたで空腹だった私はめちゃくちゃ頭にきて、


「昼ご飯がふかし芋って、うちは戦時中かあ!!!!!」


 と、妹に怒ってしまいました。


 だってそうでしょ、おやつならともかくお昼ご飯にふかし芋、それも倒れそうなほど働いてきてこの仕打ちと本気で怒りまくりました。


 結局その後ふかし芋を食べたのか、何か他のを用意してもらったのかは覚えてないんですが、とにかくめちゃくちゃ怒ったのだけは覚えてます。


 そしてその後、何年もしてから、


「妹はさつまいもが大好き」


 という事実を知りました。


 私はそれほどさつまいもが好物ではありません。どちらかというと好きだし、焼き芋もたまに作りますが、大好物というほどのものではない。なのであの時、自分がおいも大好きな妹は、お昼ご飯に作ったら一生懸命働いている父親と私が喜んでくれると思っていたらしいとはとっても思わなかったんです。妹は妹なりに喜んでもらえると思っていたところを怒鳴られてショックだったらしい。


 いや、私的にはなしなんですが、今でも「戦時中か」と言った気持ちに嘘はないものの、「そうか、かわいそうなことをしたな」と少しだけ思いました。だって、そこまで「芋が好き」だなんて知らなかったから。


 でもね、やっぱりくたくたのへろへろで疲労しまくった体に芋はないわ~と思うんですが、皆さんはいかがでしょう?


 と、年末のちょうどこの時期になると毎年思い出してちょっと笑います。すっかり暇で一人でほそぼそやりながら、そんな時期もあったなと、家族4人だった頃も思い出してちょっとさびしくもなりながら。 

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