夏なので怖い話などを……

※ 前もって一言だけ。もしかしたら怖いのが苦手な方には嫌な話になるかも知れませんので、個人の判断でお読み下さるか回れ右するかをご判断ください。


――――――――――――――――――――――――――――――――


 夏です、暑いです、稲川淳二の季節です。

 ということで、怖い話の一つぐらいしておこうかなと思いました。


 他の方の怖い経験を読ませていただいて、ふと、


「そういや、はっきりおばけだどうだってのじゃなくても、いくつかそういう話あるな」


 と、思い出したからです。

 

 長かったり、諸事情で話せないこともありますが、短くて話せるのを思い出したので書いてみようかな。


 それは確か大学の時だったと思います。季節は夏じゃなくて秋だったかなあ、割と過ごしやすい季節のお天気のいい午後でした。


 その日私はちょっと風邪気味で部屋で寝ていました。そんなに高い熱が出たりはしてなかったんですが、自分の部屋でそんな午後にお布団の上で寝てたぐらいにはしんどかった、みたいな感じですか。


 横を向いて寝てて、外を通る子どもたちの声なんかも聞こえてたのは、小学生が学校から帰るぐらいの時間だったからだと思います。


 いきなり、誰かが背中にぴったりとくっつきました!


(え、誰?)


 ビクッとして目を開けたんですが自分の部屋で、特に金縛りとかじゃなく動こうと思えば動けたんですが、いきなり知らない誰かに背中にしがみつかれたら動けるもんじゃありません。


 見えないのに、その人は真っ黒で、そして私より小さい、子どもぐらいの大きさだということが分かりました。こういうの不思議ですよね。


 その後ろの人は私と同じように横向きに背中にぴったりくっついてるんですが、同じように右を下に向けて寝てるのでそちらは敷布団の上のはずなのに、布団も畳も通り抜けたようにして、右側から手を伸ばしてその手に持ってる何か、なんだかセミか何かのように思えたそれを、ぐにゅ~んと文字通り「ゴムゴムの右手」みたいな感じで伸ばして、私の首筋か背中に入れようとしていると感じました。


 説明が難しいんですが、背中にくっついて背中に何か入れるのがむずかしく、なんだかそんな変な形になってそのセミみたいな何かを入れようとしてるのはなぜだか理解できました。普通に肩や肘、手首の関節を曲げるだけではとても入れられる形にはならない、それで右手が変な形に伸びてるような感じですね。


 その黒い人が怖いというより、


「何こいつ人の背中に虫入れようとしとんねん!!!!!」


 という怒りの気持ちがいきなり湧いてきて、実際に口には出せてなかったと思うんですが、全身で思いっきり、


「何してくれとんじゃあ!! もしもそんなもん背中に入れたら承知せんからなあ!! わ~れ~!!!!!」


 という感じで、まるでよしもと新喜劇の山田スミ子さんか未知やすえさんか室谷信雄さんのように怒りを露わにして、本気で、


「やられたらやりかえす!!!!!」


 の意思表示をしたら、いきなり、


「すっ」


 と、その黒い人は消えてしまいました。


 その途端、それまで緊張して全身強張らせてたのをホッとして力を抜いて、冷や汗のようなのをびっしょりかいてたのを覚えています。


 まだおひさまも高くて、そして多分寝てなかったと思うんですが、寝てないと思ってても寝てる時もありますから、


「夢でしょ」


 と言われたらそれまでなんですが、その黒い人よりセミっぽいのの方が怖くて怒鳴りつけた、というところが自分らしくて、思い出すとちょっと笑えます。


 あ、そういえば、他にも妹が怖がってたそういうのを怒鳴りつけて追い出したこともありましたっけ。そちらの話は長くなるし、色々あるのでお話することがあるかどうか分かりませんが、また機会があれば……


 なんとなくですが、気合いの勝負かも知れませんね、そういうのとの対決も。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る