極楽極楽

 いよいよお盆ですね。今日は朝から買い物に行ったらどえらい人で、ああお盆休みなんだなと実感できました。お盆の買い足しと、台風が来た時用に少し買っただけなので比較的早く帰ってきましたが、みなさんご家族で大変そうだったなあ。


 今日の迎え火は大丈夫そうですが、15日の送り火ができそうにないなと妹と話していたら、妹が、


「仏さんがあっち帰りたくないんとちゃうかな」


 と言ったんですが、私としては、


「みんなこっちに帰ってこないのは、あちらが快適だから」

 

 説を取っています。


 あっちに不満があったら何人かは帰ってきそうなもんですが、帰ってこないというのは、あちらはいいところなんですよ、きっと。


 そういうことをお仏壇にぶつぶつと言ってました。


「ほんまは帰ってくるんしんどいんちゃうん、あっち暑いのになあとか言うてるんでしょ」

「極楽はほんまに極楽って思ってるのに、お盆の間は極楽も閉鎖されて、エアコンも切られてるから、そんで仕方なくちゃうの」

「それでお盆が終わって帰ったら、はあ、やっぱり家が一番やなあ、とか言うてるんちゃうん」


 とか言って、仏さん達にからんでました。


 桂米朝師匠の「地獄八景亡者戯じごくばっけいもうじゃのたわむれ」という落語の中で、


「名人はみんなこっち来てるからこっちの寄席の方が面白い」


 という一文がありますが、多分それもあるでしょうね。


 上方落語の四天王も枝雀師匠も圓生、志ん生、みんなあちらです。


 名優だってあちらの舞台ですごい出し物してそう。


 そうそう、手塚治虫先生もきっとあっちでどんどん新作書いてますよ、というか「ネオ・ファウスト」の続きが気になる! 


 グイン・サーガだって栗本薫御本人が続編や外伝書いてるだろうなあ。


 そうそう、つい先日桑原和男師匠がそちらに「ごめんくさい」って行ったばっかり、また賑やかになってそう。


 こりゃあっちから帰ってこないのも無理はないな、と思いました。


 それを分かった上でかなり早く、まだ日が高いうちに迎え火を炊いてみなさんをこちらに召喚しておきました。


「あっちがえらくええのは分かったけど、ちょっとこっちの暑いのも経験しとき、修行や。おかえり」


 そう言って、今、両親と伯父さんがお仏壇でやれやれと一休みしているようです。


 短い休暇を楽しんで帰ってね。 

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